第40話 リーディングについて聞いてみた
事件は二〇二二年五月のとある夜に起きた。
「守護神様。チャネリングとリーディングは別物なんですか?」
著者がそんな事実を知ったからだ。
『そうだぞ。知らなかったのか?』
「知りませんよ。どっちも寝て、幽体離脱して、半覚醒というか、夢の中で高次元とつながるんですよね?」
『すでに、その時点で話がゴッチャになってるのか。言っておくが二つは似て非なるものだ。そのあたり、ちゃんと知っておいた方が良さそうだな』
「はい。ご教授ください」
ということで、今回は第三七話のチャネリングに続き、似て非なるもの──リーディングの話題である。
著者は第三七話の時点ではチャネリングもリーディングも同じだと思っていた。だが、守護神様はちゃんとチャネリングのみに言及していたので、今回は改めてリーディングの話題を扱うことにする。
『まず最初に言っておくことがある。チャネリングは神霊の世界というか宇宙の法律では、高次元の神から許可を受けてないものは違法だ』
「違法? 神様の世界にも法律はあるんですか?」
『あるに決まってるだろ。何事にも最低限の決まりは必要だ。でなければ無法地帯になってしまうからな』
「それはまあ、そうですね。許可が要るってことは禁止ではないのですか?」
『俺としては許可制ではなく、基本的に禁止にした方が安全でいいと思う。その上で十分に訓練された神だけが、ガイドラインに従ってチャネリングをするのが一番だと考えている』
「そんなに危険なのですか?」
『チャネリングの話題の時にも話しただろ。失敗したら人間の精神が壊れて廃人だ。下手すりゃ、死ぬこともある』
「……ありましたね。そんな話……」
怖い話である……。
「あ、でも守護神様ではなく、守護霊様のいる人の場合はチャネリングしていいって……」
『それはお目溢しだ。あの時にも話したが、守護霊なら人間と魂の波動が近い。そのおかげでチャネリングしても、守護霊が霊的な盾になるからな。よほど、危ないチャネリングをしない限りは問題はない』
「法律はあっても、お目溢し?」
『神の世界にも法律はあるが、人間と同じように考えるなよ。神の世界は何をしようと自由と言ってあるだろ。失敗したら自己責任だ。自分で責任の取れる範囲なら、わざわざ取り締まったりはせん。責任の取れない失敗を起こしそうなこと、利益を独り占めして被害や負担を相手に押しつけてやり逃げすること、そういうものを許さないのが神の世界の法律だ。人間の法律は理屈や杓子定規で、市民よりも国や権力者に有利とも言ってあるだろ』
「はあ、それはまあ……」
人間の常識で考えると、ここを掘るともっと話が脱線しそうだ。
「ところで、今回はリーディングの話ですよね?」
『そうだ』
「チャネリングとは、どのように違うんですか?」
『ハッキリ言って、原理そのものが違う。リーディングはインターネットに繋がったPCのブラウザを想像すればいいだろう。閲覧できる情報には多少の制限はあるが、多くのことは見る側に主導権がある』
「見る側って、主導権は人間の側に……ですか?」
『基本的にはダウジングと同じだ。人間が質問してこないと、神霊の側からは何も教えられないんだ』
「つまり、質問に答えることしかできないと……」
『質問に答えるだけというと語弊があるが、ダウジングに関してはそこは絶対だな。水晶や鏡、水面を使ったスクライングなら、ぼんやりとした幻覚映像を見せて少し多めの情報を与えられる。それがリーディングともなれば、はっきりした映像に音声を加えることもできるんだ』
「スクライングって、水晶占いですか?」
『ボヤーッとした幻覚を見せるやつだな。それならこちらから教えたい情報を映像に乗せて見せることができる。人間の側は見たくなかったら、途中で見るのをやめるのは自由だ』
「なるほど。たしかにブラウザでインターネットを見てるようなものですね」
ダウジングは質問に答えるしかできない。だけど、スクライングとリーディングなら答えの映像に乗せて、神霊の側から教えたい情報を加えることができる。だから「答えるだけ」には語弊……か。
「リーディングはそれで、アカシックレコードを読むんですかね?」
『そんなもの、読めないぞ』
「え? 読めないんですか?」
『リーディングで見せられるのは、あくまで神霊の側が用意した映像だ。だから直接、アカシックレコードに触れることはできない』
「つまり私がリーディングした場合、その時にアカシックレコードを見ることがあれば、それは『守護神様が必要なところを切り取って、編集してくださった映像を見る』ということですか?」
『だいたいはその解釈の通りだ』
「ところで用意した映像って、わざわざ映画のような動画を作るんですか?」
『スクライングならそうなるが、リーディングの場合は仮想現実──VRが近いな。寝てる時に夢を見るだろ。その仕組みを使って質問に答えたり、教えたい情報を見せたりするんだ』
「ということはリーディングで見るのは、すべて夢……ですか?」
『目覚めた時にすぐに忘れないこと以外は同じ原理だ。それに日常的に使ってる機能を使ったやり取りだから、ダウジングよりも体への負担はないぞ』
「それを使えば守護神様と直接対話できる……と?」
『できると言えばできるとも言えるが……、厳密には対話なんかできないぞ』
「できないんですか?」
『見せられるのは用意した映像だけだと言っただろ。俺があらかじめ想定してたやり取りとか、すぐに対応できる範囲でのやり取り以外は無理だ』
「つまり私が対話できるのは、疑似的な守護神様?」
『そうだ。俺が直接きみに会うのではなく、アバターのようなものを作って現れるだけだ』
「守護神様のアバターですか……」
『……ちょっと待て。なんだ、そのイメージは?』
いきなり守護神様が文句を言ってきた。ふと夢に現れるだろう守護神様の姿を想像してしまったのだ。
『きみの中で俺は、そういうイメージなのか?』
「守護神様は元戦国武将ですけど、今は太ってて、ジーンズを穿いてて、上は半袖……」
『ピチピチの白Tに豪快な毛筆の「守護神様」って何だよ? しかも腹が突き出て、ヘソが見えてるじゃねーか!』
「でも、守護神様は一五〇kgって……」
『俺にきみぐらいの身長があったらの話だ! っていうか、その太り方は三〇〇kgオーバーだ! 力士でもそんなに太ってるヤツはいねーぞ。それじゃあ貫禄を通り越して、ただのダルマじゃねーか!』
守護神様とは脳内イメージでやり取りしてるだけに、想像した姿は筒抜けだった。他のインパクトが強すぎて、無精ヒゲのところは何も言ってこないというか、実はそのイメージは正しかったのか……。
「確認しますが、リーディングでは幽体離脱はしてないんですよね?」
気を取り直して、質問の続きである。
『それっぽい映像を見てるだけだ』
守護神様も気を取り戻して、いつも通りに答えてくれる。
「過去に幽体離脱したような体験を、何度かしてますが……」
『そうだな。実際に抜け出たことはあったが、その時はいつも思うように動けなくてジタバタしてたな』
「一応は幽体離脱してたこと、あったんだ……」
ジタバタしてた幽体離脱、これは何度か経験がある。天井近くに浮いてジタバタもがいてたり、地面や床に転がって立てなかったりするものばかりであるが……。
「じゃあ、一回だけ。知らないはずの街を見てきたのは……」
『それはきみが社会人になって、しばらくした頃に見せた夢だな。きみは配属先に近いところへ越したあと、仕事が忙しくて家と会社の往復しかしてなかっただろ。買い物も駅前のスーパーと近所のコンビニですべて済ませて、他の店を探す余裕もなかった』
「駅とアパートの通り道からは、駅前スーパーとコンビニしか見えませんでしたもんね」
今、グーグルマップで見ると駅前は再開発されてるが、あの頃は駅の北口にスーパーがあって、その横に狭く薄暗い居酒屋通りがあるという街の作りだった。著者の住んだアパートは南口から出て西の方にあり、駅とアパートの間は住宅街の中を通り抜けていた。そのため北口のにある駅前スーパーとアパート近くにあったコンビニしか目に入らなかったのだ。
ところがその街の大きな商店街は、居酒屋通りと思っていた道を一〇〇mほど進んだところから、大きな国道との間に作られていた。というより駅前には昔ながらの個人商店が並び、その多くが飲食店だったというだけだ。その先には大きな建物が増えて銀行やら映画館やら、そして大きな書店やらの並ぶ立派な商店街となっていた。
またアパートまでの帰り道も、住宅街の中を通らずに外を通る道を使えば、そこにも商店が並んでいた。
「あの夢ではホントにリアルな朝の商店街を見ましたけど、目覚めて外を見たら大雨だったと……」
で、幽体離脱して見てきたような夢の話に戻るが、そこで見たのは居酒屋通りと思っていた道の先にある商店街だった。
すでに始発電車が動き始めた時間。夜明け前の商店街では、まだほとんどのお店はシャッターを下ろしてる。だが、すでに何軒かが開店の準備をしていたり、すでに商売を始めていた。駅から来た通勤客の中には、そこで朝食用なのか、お弁当を買ってる人もいた。
その夢の中で、著者はある時計店に目を留めた。店に入ると、そこで年配の店主と思しき人が、歯車を削って古い時計を直してる。著者はその光景をしばらく見ていた。
やがて外が明るくなってきたので、著者は「そろそろ家に帰らなきゃ」と思った。すると体は空を飛んで、一気に肉体のあるアパートへ戻っている。
この夢で現実と違ってたのは、戻ってきた時の空は晴れてたのに、目覚めた時は大雨だった。ただし、後日その商店街へ行くと、夢で見たままの街並みがそこにあった。早朝の店に入った時計店も、奥にいる店主も夢で見た通りの人だった。
著者にとって数少ない幽体離脱体験のような夢だが、言われてみると天気が違っていた。だから、「仮想現実を見せられたにすぎない」と考えれば辻褄は合いそうだ。だが、それ以外の部分はあまりにも現実通りと思われるだけに、これを幽体離脱と勘違いするのは無理からぬことだろう。
「もしかして世にいるチャネラーの中には、本当はリーディングしてる人の方が多いんでしょうかね?」
『さあな。そこのところはわからないが、きみが二つを混同してたことを考えると、世の中にも同じように考えてる人は大勢いると考えられるな』
「じゃあ、眠れる予言者──エドガー・ケイシーも?」
『彼は最初からリーディングしてると語られてるだろ? 勝手にチャネリングと混同した人が、間違った情報を盛り込んだだけだ』
「とするとエドガー・ケイシーが見た過去や未来は……?」
『実はレプティリアンによって見せられた、まったくデタラメな歴史や未来だ』
「レプティリアン?」
『彼は捕囚された魂だ。だから彼にとって守護神のように振る舞っていた存在は、看守役のレプティリアンだ』
「じゃあ、リーディングで映像を見せてたのもレプティリアンなんですか?」
『そういうことになるな』
「ということは、リーディングでウソを教えられてたんですか?」
『早とちりをするな。そもそも、すぐバレるようなウソを教えてたら、彼はリーディングをやめてしまうだろう?』
「言われてみれば、そう……ですね」
『レプティリアンの看守だってバカじゃない。むしろ正確な医療診断をしてみせたり、的確な人生相談に応じてみせたり、近い未来の予言も高い確度で的中させてみたりしている。そのおかげで大勢の人たちから信頼を得て、たくさんの依頼を受けるようになってたじゃないか』
「その結果、マトモな生活が送れなくなったみたいですけどね」
このあたりは捕囚された魂の宿命だろうか。
『そうやって信用させておいて、当面、確認できそうもないことにはデタラメを吹き込むのが詐欺師の常套手段だ。実際に存在しないアトランティス文明について、かなりたくさんのリーディングが行われてるじゃないか』
「そこは、どうなんでしょうね?」
超古代文明については過去の話題では触れてなかったが、著者のダウジングによると大西洋にはアトランティス文明はなかったようだ。このあたりは『竹内文書』やマチルダ・エルマックロイ著の『エイリアンインタビュー』では古代の太平洋に未知の大陸があったことは語っているが、大西洋やインド洋には未知の大陸は出てこない。またスウェーデンボルグ著の『霊界日記』でも超古代に科学文明があったことには触れられているが、それがあった場所については何一つ言及されてない。
「ケイシー予言としては、日本が海に沈む未来の話もありますけど……」
『それもレプティリアンから、どのような映像を見せられたかによって話は変わってくるな。東日本大震災の津波映像を見て「日本が海に沈んでいく」と思ったのかもしれんし、本当に日本が沈む映像を見せられた可能性もある』
「実際に日本が海に沈む可能性は?」
『ゼロだ。日本の周りではプレートが沈み込んでるおかげで、地下にはスラブという重しがぶら下がってる。そのせいで日本の海岸線は、本来の高さよりも三〇mから四〇mも低くなってるんだ。そのスラブが取れてマントルに沈んでいく様子を考えてみろ。重しの取れた日本は、ググッと浮上するのがわかるだろ。浮上する未来なら、いくらでも考えられる。だが、沈む未来なんて、どういう理屈で出てくるんだよって話だ』
「経済的に沈む暗示なんて言ってる人たちもいますよね」
『下手なこじつけだな。そもそもレプティリアンは、日本という存在を嫌っているからな。日本には滅びて欲しいという願望で、そういう映像をケイシーに見せたのかもしれんぞ』
これも過去の話題では触れてないけど、日本は地球の古い神々によって今も守られている国である。そのために最後まで白人──レプティリアンの傀儡政府に支配されずに抵抗してる国であるため、心底毛嫌いしてるようだ。
「チャネリングとは違ってリーディングは霊的には安全そうですね。私もできるようになった方がいいのでしょうか?」
『そりゃあ、できるようになってもらいたいね。きみにとっては体への負担も減るし、俺からしても擬似的な会話にしかならんという制約はあっても、多くのことが伝えられるからな。ただ問題もある』
「問題ですか?」
『映像は「百聞は一見に如かず」というほど、一度に多くの情報を与えられる。だけど、そのせいで思考停止されて早とちりや思い込みを生じやすいんだ。それを考えると今のままでも十分かもしれん』
「そこは悩ましいですね」
世の中には思い込みのワナというのがある。理解できないものは現物を見せられても、まったく違うものと解釈してしまう現象だ。
有名なところでは、古代ギリシャ人の見たゾウの頭蓋骨だ。ゾウは知ってても頭蓋骨までは見たことのない古代ギリシャ人たちは、それを一つ目の巨人の骨だと思ってしまった。
同じことは日本でもあった。それも平賀源内ほどの知識人がやらかし、浮世絵にまで残された失敗だ。源内はイルカは見たことはあっても、頭蓋骨までは知らなかった。だから町人からその骨を持ち込まれて「これは何の骨だろうか?」と問われた時、カラス天狗のものだと勘違いしてしまった。
どんなに聡明な人でも、残念ながら人間である以上はそういう間違いを犯す。
著者の場合は、どれほど愉快な勘違いをやらかすだろうか。(汗)
「やはりリーディングを覚えた方が、守護神様も助かりますか?」
『それはきみ次第だ。うまく伝わらなくて、ストレスを感じることが減るといいな』
「あ、やっぱり、そう思ってたんですね……」
『でも、リーディングをやったらやったで、睡眠時間は削られるよなあ……』
「え? ……それはダメじゃん……」




