第39話 働き方について聞いてみた
「守護神様。『この世の行』って何ですかね?」
『ん? 今さらなことを聞いてきたな』
「確認のためにお伺いしますけど、仕事は『この世の行』になりますか?」
『それは厄介な質問だな。理想で答えるなら、そうであるべきだ。だが、今の時代はそうなってないから問題が大きい』
「そこなんですよ。守護神様は第三三話でも、似たようなことを言われてるんです。今の時代は『仕事が「この世の行」にならない人が増えている』って……」
『それは言った覚えがあるな。今の時代は働くことで、かえって霊格を落とす人が増えてる時代だからな』
「それで、ふと働くってなんだろうなって思って……」
『今の世の中で考えたら哲学だな』
ホント、意外と難問である。
『なら、今回は「この世の行」について語ってみるか』
ということで、今回は『この世の行──働き方』についての話題である。
『まず「この世の行」を語る前に、天界にいる神にとっての善悪について語っておこうか』
「お願いします。もちろん、人間の価値観で考える善悪とは別物なんですよね?」
『当然だ。そして、とてもシンプルだ』
「人間の頭にも、わかりやすいものですか?」
『理屈だけなら理解しやすいと思うぞ。天界からは「おかげ」が流れてきている』
「その『おかげ』というのは、神様の恵みですか?」
『ざっくりした言い方だが、間違ってるとまでは言えんな。本来は、その流れは地上に住むすべての者に、多かれ少なかれ届くようになっている。そこで天界の神の言う善とは、その流れを止めないこと、役目を与えられた者は世の中の隅々にまで流れが届くように調整すること、渦や澱みがあれば解消すること。そして人生とはその流れに乗るか、流されないように泳ぎ続けるか、常に流れに合わせて変わり続けることだ』
「天界からの『おかげ』の流れというのは、雨や川でイメージすればいいんでしょうか?」
『天から降り注ぐ「おかげ」を雨と同じように考えると、思考のワナにハマるぞ。「おかげ」はまず各地にいる最上位の土地神のところへ流れる。その土地神と縁のある名士が、「おかげ」を土地の隅々にまで流れるように世の中を仕切る。これが第一の段階で、きみが「雨」で喩えようとした部分だ』
「たしかに雨とはまったく違いますね」
『ただし、「おかげ」が隅々まで行き渡ったあとは川と同じだ。今度は下流に向かって再び集まり、大きな流れとなって海へ流れ出るように天へ戻っていく』
「この『おかげ』は、今の時代では『経済』や『資本』になるんですかね?」
『そこに「物流」と「情報」を加えれば、かなり近いんじゃないか? 天界の神にとっての善は、この「おかげ」が滞りなく流れ続けることだ』
「その流れは、ちゃんと流れてますか?」
『人間社会の中では、勝手に流れを変えられてるな。中でも日本とアメリカは異常だ』
「それは、よく言われる搾取ですか?」
『それもざっくりしてるが、どちらも経済搾取が激しい国であるところは事実だ。ただし、少人数が搾取してるアメリカと違って、日本は国そのものが搾取してるのと、多くの人が自分も搾取してるとは思わずに搾取し合ってる違いはあるぞ』
「日本は国が搾取?」
『今の日本は高負担低福祉のダメ国家だ。日月神示にも「貪る政治」と予言されてるだろ』
「つまり国は国民から搾取してるってことですか?」
『そう言ってる』
「それでネットで非難されてるように、上級国民は自分たちだけ良い思いをしてるんですか?」
『それは違う。日月神示には、こうも書いてある。「善い政治をしようと思って精を出してる」。だが、「善と思ってることが皆悪だから国民が困る」と……』
日月の巻第三六帖にある一節だ。
『それに自分たちの思い違いで、官僚たち自身も自縄自縛で身動きできなくなってるんだ』
「財務官僚の話ですか?」
『厚労省も経産省も農水省も文科省も……。どこもかしこもだ』
「ということは、今の日本の行政はボロボロですか?」
『その通り、ボロボロだ。しかも若い役人が問題を指摘すると、どこも事実を認めたくなくて、指摘した人を左遷するぐらいに腐ってる』
「救いようがありませんね」
『このまま行ったら日本は破綻だ。日月神示にはその前に大グレンが起きて日本は立ち直ると語ってるが、俺のような下っ端の神には、本当に起こるのかさっぱりわからん』
「それは困りものですねぇ。どうして、こうなってしまったのでしょうか?」
『世の中がおかしくなった……としか言えないよな。そこを掘ると話は長くなるからやらんが、そのせいで多くの人の働き方もおかしくなってる』
「ここで最初の話題に戻るんですね」
『働き方について語る前に、同じ仕事でも「働く」と「稼ぐ」を分けて考えた方がいいだろう。今の時代の働き方は「稼ぐ」ことが中心だ。そのせいで人生の修業としての「働く」をしてる人は少ない』
「守護神様。働き方というと、それぞれの人にとっての『天職』ってあるんですかね?」
『それは良い質問だな。仕事は人生の中で、もっとも長い時間関わるものだ』
「ということは、『天職』はあるんですか?」
『あるぞ。ただし生まれる前から運命が用意された者に限った話だ』
「運命かどうかというのは、わかるものですか?」
『そこは簡単だ。他に選択肢がない』
「手に職がないから、選択肢がないってことですか?」
『違う。敢えて別の仕事に就いても、運命の方が決められた仕事に就くように動くという意味だ』
「政治家になるのがイヤで家を出たのに、本人の預かり知らぬところで後援会が立候補手続きを済ませてたとか?」
『あはは、そんな政治家もいたな』
「それでは私がトラブルを喰らっても、作家をぐだぐだ続けてるのは……」
『その質問には答えんぞ。ただし、過去の事件については運命かどうかは答えてやる。課長昇進の一か月前に、いきなり理不尽なリストラを喰らって作家専業になった流れは運命だ。そして、いくつものトラブルに遭ったのも運命だ。普通では有り得ない理由で、アニメ化が二度も先送りされたとかな』
「あれはまあ、たしかに……」
一回目の有り得ない理由は、大手書籍取次店の出している週間ランキングだ。この小説部門で拙著の最新刊がランキング上位──具体的には売り上げ一〇位内に名前が入ることがアニメ化にGOサインが出る条件だったが、あろうことか拙著は小説ではなくコミックとして集計されていた。そのためコミックの五位に名前が載ったのに、そのままアニメ化の話は立ち消えになってしまう。
二回目もイラスト担当編集の些細な連絡ミスと有り得ない取り繕いで、どんどん話がおかしくなって……。しかもその編集は今ではメディア展開部門の実質トップ──しかも他社作品のテロップにも名前が載るほど業界に影響を与えられる地位に上り詰めてるため、彼が担当時代の被害者たちは他社のからも圧力を受けて、著者の知る限り一人を除いて全員が業界から干されるという異常事態になっている。
まあ、これらが生まれる前から決められていた運命だったというのなら甘んじて受け入れるが、いったいどんな意味で用意された運命だったのやら……。
それはともかく……。
「守護神様。『天職』が運命によるものなら、その仕事に就けば『この世の行』になるのですか?」
『それは当然だ。天界の指導神が「この世の行」にならないことを運命にするなんて、酔狂なことをすると思うか?』
「それもそう……ですね。じゃあ、運命とは別の仕事に就いた場合、それが『この世の行』にならないことはありますか?」
『そりゃあ、あるぞ。金を稼ぐことだけが目的の仕事だったら、どんなに大変でも霊格は落ちていくぞ』
「日月神示には『金を拝んでも良い』という言葉がありますけど」
『それは金を大切に扱う人の話だ。金や経済の流れを考えている人の話だ。ただ稼ぐだけ、儲けるだけの働き方とは話が違う』
「違うんですか?」
『最初に「おかげ」の流れの話をしただろ。流れに乗るのは善だ。そういう人は霊格が上がる。溜め込んだり堰き止めたりして流れを乱すのは悪だ。そういう人は霊格が落ちる。まさにそこが働き方の違いだ』
「う〜ん。抽象的すぎて、話がうまく想像できません。具体的な例を挙げて、働き方や『この世の行』について教えてもらえないでしょうか」
『それなら、わかりやすく「この世の行」になる仕事と、ならない仕事を語っていこうか』
「お願いします」
『まず「この世の行」になる仕事については、日月神示にも書かれてるぞ。百姓、大工、絵描きだ』
「農家、建設業、画家やイラストレーターですか?」
『違う。三つとも「ものづくり」を代表する仕事だ。自然を相手に食べ物を作ったり、資源を採掘したりする仕事の代表が百姓だ。文明の発展や生活に必要な日用品やインフラを作ったり、工場から物を運んだりする仕事の代表が大工だ。そして文化を生み出して心を豊かにするクリエーターや芸能人、アーティストの代表が絵描きだ。どれも天界からの「おかげ」を受け取って、世に流れる形に変える役目だぞ。そして、それが世の中の隅々にまで流れるようにするのが、政治家や役人などの為政者の役目だ』
「すると政治家や役人、公務員になるのも『この世の行』ですか?」
『そこは運命で定められた人以外は、まったくの逆だ。それどころか天界の神から見たら政治家や事務系の公務員は、もっとも嫌われる最底辺の働き方だぞ』
「最底辺って……。それは言い過ぎでは?」
『いや、そもそも霊格の低い人ほど、権力や安定を求めて大企業や公務員という大きな組織や、教師を目指す傾向があるんだ』
「そうもの……なのですか?」
『最初に天界の神にとっての善悪を話しただろ。天界の神にとっての善は、この「おかげ」が滞りなく流れ続けることだと』
「はい。そのように伺いました」
『そこでは深く触れなかったが、天界の神から見て善となる生き方は、この流れの中でどうすることかわかるか? 川の流れで考えてもいいぞ』
「そりゃあ、流れを乱さないことですよね。流れに乗って下っていくとか、流されたくなかったら上流に向かって泳ぎ続けるとか」
『その通り。その例は及第点の生き方でしかないが、魂が成長する意味では間違ってない』
「もっと上の生き方があるんですか?」
『もちろんある。それがさっき言った絵描きだ。身勝手から他人に迷惑をかけないことが前提だが、周りとは違う生き方をするのは、魂を大きく成長させる「この世の行」だぞ。まして天界の神が喜ぶような波や新しい流れを作って見せるのが、魂にとっては最高の生き方だ。さすがに、この生き方をする人は少ないがな』
「周りとは違う生き方ですか。それを言われると、大企業や公務員はまったく逆ですね」
『その通りだ。しかも組織が大きくなるほど変化を嫌う。彼らの言う「安定」は本当の安定ではなく「停滞」だ。本人は「安定」を求めているようだが、静かに「衰退」していく最悪の働き方になりやすい』
「安定を求めて衰退……。日月神示が何度も言ってる『取り違い』ですか」
『反対に常に変化が求められる仕事として、百姓、大工、絵描きの次とされるのが起業家や自営業者だ。うまく変化しなければ、その世界で生き残れないからな。フリーランスや有事に対応する軍人、少し劣るが消防士もここに含まれる生き方だ。それと世間的には不安定な身分とされるが、フリーターや臨時職員も仕事が変わり続けるので、魂の成長という意味では良い働き方だ。今は不景気だからこそ稼ぎは小さいが、好景気が続くようなら神様が求める働き方の一つだぞ』
「バブル経済時代は花形でしたもんね」
バブル景気のあった一九八〇年代後半、アルバイトの最低時給は四五〇円だったが、都市部では時給二〇〇〇円以上が当たり前という今から思うと異常な時代だった。そのため多くの学生が大卒初任給一五万円で就職するか、月三、四〇万円は稼げるフリーターを続けるかという選択に迫られることになる。
それがバブル経済の崩壊で、多くのアルバイトの時給が改定された五〇〇円まで減らされていったのだから、あの時にフリーターを選んだ人たちには地獄へ突き落とされたような大事件だった。
『大きな組織はいろいろ弊害はあるが、同じ会社勤めでも、小さな会社で働くほど「この世の行」になりやすい。そのせいもあってか霊格の高い人ほど「鶏口牛後」と言って、より小さい会社に就職する傾向がある』
「魂が『この世の行』になる場所を選んでるんですかね?」
『その通りだ。ただし、物事には何にでも例外はあるぞ』
「『この世の行』にならない仕事があるんですか?」
『そうだ。その代表が医者や弁護士だ』
「医者や弁護士? どうしてですか? どれも必要な仕事ですし、資格を取るための勉強も大変なのに……」
『それは仕事が、他人の不幸を前提に成り立っているからだ。そのため因縁ミタマとして天界の神から運命を与えられた人以外は、その仕事に就くと霊格が落ちていく働き方となるんだ。たとえ個人病院や個人事務所を構えて自営業という働き方をしても……だ』
「なんか理不尽ですね」
『人間の価値観では、そうなるだろうな。それでも多くの医者は多趣味という形で私生活の方で変化を増やしてる人が多いから、意外と魂が劣化しない傾向はあるぞ』
「そこはうまくできてるんですね」
『それと、もう一つ因果な商売が警察だ。これも事件や事故という他人の不幸で始まる仕事な上に、他人を疑う仕事でもあるからな。安易に収入の安定とか社会的な信用というだけで飛び込んでいい仕事じゃない』
「悲惨な現場を見て心を病む人もいるって言いますしね」
『あと天界の神が嫌うというより、悪の手先と見てる働き方もある。出世欲でのし上がったサラリーマン経営者。他社を買収するだけで、自分では何一つ起業しない実業家。それと一九九〇年代から増えてきたコンサルタントを名乗る人たちだ』
「悪の手先とは重い言葉ですね。まともな人も多いでしょうに……」
『まともなのは使命でその地位や仕事を与えられた因縁ミタマだ。それ以外は魂が汚れまくった仕事だ』
「なんだかんだで世間から嫌われてるイメージがありますね」
中でも何とかコンサルタントを自称する人たちは、もう何と言うか……。
『それと今の日本では多くの人がサラリーマンという生き方をしているが、これも魂を劣化させる悪い働き方だ』
「第三三話でも語ってましたね。今は悪い上司が多いから、その下で働くと霊格が落ちると……」
『それもあるが、今の時代はサラリーマンという働き方自体が搾取構造になってると気づいてない人が多い。もちろん安定した収入は大切だが、三割以上の人は自分の働きに見合った収入ではないんだ。まあ、そのほとんどが悪い上司なんだがな……』
「それは困りものですね。搾取といえば親のすねをかじるニートは……」
『働きに出た経験のないニートは、すべて魂が劣化している。だが、少なくとも三年以上働きに出た経験のあるニートや引きこもりは、霊格で見るとサラリーマンよりもマシな生き方であることが多い』
「これも第三三話で『霊格が落ちないように守護神が働かせない場合もある』って言ってましたもんね」
それでも仕事を辞めない場合は、過労死させて強制終了させるという怖い話もあった。
『他にも人間……というか日本人の常識では好ましいと思われてないが、食客という生き方もあるぞ。資産家にパトロンになってもらい、好きなことをやって暮らす生き方だ。天界の神様からすれば資産家が溜め込んだ金を世に流すのだから、これは良い働き方だ。ただし、パトロンになってもらうための努力は大変そうだがな』
「あはは、それができるのも一種の才能ですね」
ということで今回の話。だらだらと語るとわかりづらいので、最後に他にもダウジングで出たものも併せてまとめてみた。
・魂が大きく成長する働き方
農家、漁師、職人、自営業者
作家、クリエーター、アーティスト、芸能人
軍人、フリーランス、起業家
・魂の成長にとって良い生き方
フリーター、臨時職員、消防士
・無難な働き方
鉱山労働者、運送業者、中小企業勤め
・本人が怠けたり悪いことをしなければ良い生き方
食客、社会経験のあるニートや引きこもり、無職、ホームレス
趣味で続ける作家、クリエーター、アーティスト等
・魂が劣化する働き方
警官、社会経験のないニートや引きこもり
世間がプロとは認めない作家、クリエーター、アーティスト気取りの人
・魂の成長が期待できない働き方
医者、弁護士、教師、大企業勤め、起業経験のない実業家
・最悪の働き方
政治家、公務員、サラリーマン経営者、コンサルタント
・魂の劣化の防ぎ方
たくさんの趣味を作る、新しいことに挑戦する、新しいものに飛びつく
とまあ、こんな感じだろうか。運命で選択の余地なくその仕事に就いた人は、たとえどんな仕事どころか犯罪者であっても『この世の行』なので魂は成長していくのだが……。
で、最後に……。
「守護神様。戦前の日本では七割の人が自営業者で、会社に雇われる人は一割もいなかったじゃないですか。それが今では九割以上の人が何らかの形で雇われる生き方をして低賃金に苦しまされるようになったのは、レプティリアンの陰謀なんでしょうかね?」
『陰謀でも何でもないぞ。多くの日本人が安定した仕事として、サラリーマン的な生き方を望んだ結果だ。さっきも安定を求めて衰退を招いてると言っただろう。すべては自分たちの取り違いだ』
「でも、多くの人が搾取されてますよね?」
『それは安定した構造を作れば、間に入って搾取しやすくなるのは当たり前だろ』
「それはまあ、言われてみればたしかに……」
『今の時代、地位だけで何も生み出してない働き方、天界の神から見て最悪の連中ほど高給取りになってる。そいつらのデタラメなやり方のせいで、モノを生み出す農家、漁師、職人、芸術家、クリエーターなどは、トップの一部を除くと原価割れの搾取を受けて低収入に追い込まれているほどだ』
「スーパーの『一円もやし』とか、ネット上にあるゼロ円経済なんて異常ですもんね」
『アニメ制作の世界も無茶苦茶だぞ。日本では三〇分あたり一〇〇〇万円以下で作らさせられてるが、日本アニメの人気から、海外から三〇分あたり一〇億円から一三億円出してきた企業があるんだ。それが直接、アニメ制作会社と結びついてみろ、間に入って制作費の七割から九割を中抜きしてる連中は、すべて路頭に迷う大グレンだ』
「ん? 一〇億円から九割中抜きしても。アニメ制作会社には一億円行くのでは?」
『なぜ金が一社だけに行くと思った? 間に入った連中が、海外企業がどの会社に出したかわからないように、一〇社以上にばら撒いてるんだ。おかげで今の日本はとんでもない数のアニメが量産されてるだろ』
「なんか、聞いてはいけない話を聞いたような……」
『さて、やがて来る大グレンが起きて霊的な学びに見合った収入が得られるようになったら、きみにはどのぐらいの収入が入ってくるだろうな?』
「裏を返したら、どのくらい搾取されたかわかりますもんね。でも、実は変わらない……なんて結果だったらイヤだなあ……」