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第33話 高学歴ニートについて聞いてみた

 今回は予告した通り、高学歴ニートや中高年の引きこもりの話題である。

 高学歴ニートと中高年の引きこもりは国が勝手に三五歳に線を引いて呼び分けているだけで、本質的には同じものだと(あらかじ)(ことわ)っておく。

「これは海外からも言われてますけど、今の日本の労働環境はメチャクチャみたいですね」

『今は()(ごく)の最底辺だからな。とにかく勘違(かんちが)(かん)(りょう)が考えを改めないとか、無能な人ほど経営陣に収まりやすいとか、海外の企業が法律の不備を突いて日本で(ぼう)()(むさぼ)ってるとか、いろいろな……』

「無能な人が、なんで経営陣になれるんですか?」

簡単(かんたん)な話だ。有能だったら、重要な仕事を(まか)されるだろ。それで失敗したら(しゅっ)()レースから脱落(だつらく)だ。出世レースで最後に残るのは、一度も失敗しなかった超有能か、大きな仕事を任されなかった無能か、あとは失敗しても責任を他人に押しつけてやり過ごしてきた人間のクズだ』

()(ふた)もありませんね」

『そういう無能エリートにとって、もっとも(おそ)れることは何だと思う?』

「実力がバレることですか?」

『それもあるが、それよりも(こわ)いのは自分の無能を見透(みす)かす実力者だ』

「地位を(うば)いかねない部下とか……ですか?」

『まあ、そうだな。とはいえ、日本人の国民性では他人との(しょう)(とつ)()ける傾向がある。だから部下は上司の無能に気づいても、普段は(てき)()忖度(そんたく)してうまくやってくれるものだ。これは今も変わらん。上司の方も昔は優秀な部下に仕事を(まか)せて、「良きに(はか)らえ」と()輿(こし)に乗っていれば良かったんだ』

「良かった? 過去形ですか?」

『そう、過去形だ。昔のエリートは無能なら無能なりに開き直る()(りょう)があった。だが、今の無能エリートには開き直れる度量がないんだよ』

「それは、何でですかね?」

『他人を蹴落(けお)として成り上がってきたから……だろうな。だから自分の弱みや無能を他人に……、中でも優秀な部下に(さと)られるのをもっとも恐れるんだ』

「それは生きづらそうですね」

『常に気を張ってるからな。だから中には精神(せいしん)バランスを(たも)つために他人を見下して、自分の優秀さを誇示(こじ)しようとする者も多いんだ』

「やたらと他人をマウントしてくる人ですね。話の前提がおかしい、言いがかりにしか思えない人も多いですが……」

『悲しいかな、そこが無能の無能たるところだ。しかも、そういう連中は自分の手に負えない難しい仕事は、すべて優秀な部下に丸投げしている。見下す態度を取りながらも自分では何もできないあたりは、昔の()(ぞく)が使用人や召使(めしつか)いがいないと自分では何もできないのと同じだな』

「その話、まるで今の正社員の貴族化問題ですね。非正規の人たちが賃上げを求めて労働争議(ストライキ)をした途端、正社員だけではマトモに仕事をまわせなくて、たった一日で大損害(だいそんがい)を出して倒産に追い込まれた会社もあったとか……」

 正社員だけでやったら()(じょう)殺到(さっとう)で信用を失ったり、機械を(こわ)して再起不能になったり。そんなネタを小説で使ったら「作者は想像力のないバカです。そんなことが起こるわけないだろ」とネットに書かれてしまうような事件だが、平成時代というご時世では現実に何件も起きてしまった。まさに「事実は小説よりも奇なり」である。

『ところで、きみは「エリート・パニック」という言葉を聞いたことはないか?』

「ありますよ。リーマン・ショックや東日本大震災、福島第一原発事故の時に見られた現象ですね。でも、なんかネットを見ると言葉の意味が()に落ちなくて……」

『そりゃあ、そうさ。海外と日本国内では意味が()(みょう)に違うし、そもそも「エリートが正常な判断ができなくなる現象」という前提が間違ってるんだ』

「そこから違うんですか?」

『さっきも言っただろう。今の無能エリートだって昔と変わらん。自分では何もできないから無能なんだ。だから優秀な部下に忖度(そんたく)させて仕事を丸投げしてる。初めから論理性のある正常な判断なんかできてないんだ』

「また()(ふた)もないことを……」

『だから大きな問題が起きて責任者として()(おもて)に立たされると、事態の終息よりも自分の保身が最優先になるんだ。暴動(ぼうどう)の多い海外では、すぐさま武力や権力で市民を抑え込もうという異常行動を始める。日本では暴動の心配はないから、代わりに自分の無知無能がバレるのを隠そうと意味不明な言い訳を始めるんだ』

「どちらも悪あがきですね」

『そうだ。どちらもエリートで居続けるために、自分たちの間違いを認めたら負けなんだ』

「不健全な世の中としか思えませんよ」

『非常に残念だが、今はそういう無能エリートが数多くのさばる時代だ。しかも、日本で元号が平成に変わるとともに、世の中は()(ごく)の三段目──最底辺へと落ちたんだ』

「日月神示に出てくる区切りの三〇年ですね」

『いったい何が起きて地獄の底まで落ちたのかというと、アメリカで始まった新自由主義だ。中でも能力主義や成果主義がまかり通るようになってから世の中が急速におかしくなった』

「私は実力主義や成果主義は、間違ってるとは思わないんですよねぇ。自由な(きょう)(そう)があるからみんなが(せっ)()(たく)()して、どんどん良いものや新しいものが生まれますから」

『それは正論だが、肝心(かんじん)(かなめ)(ひょう)()()(てい)が公正でないと成り立たない話だぞ』

「やっぱり今の時代は、公正ではありませんかね?」

『今の世の中は少しでも(かね)(から)むと、たちまち公正さが失われる時代だ』

「出世も(かね)が関わりますからねぇ」

『出世と目先の欲に目がくらんだ連中によって地獄の底──カテゴリー一にまで落とされた世の中だ。それでも新しい分野を開拓(かいたく)できれば、そこでは連中が手を出してくるまでは公正な競争が(おこな)われる。その間に先行者利益を確保できれば、その後も逃げ切れるかもしれない』

「早い頃に手を出した人ほど、その分野での地位を確保しやすい先行者特権ですね」

独占禁(どくせんきん)()(ほう)にも、中小企業が開拓した分野には、大手企業は参入してはいけないという道義的な禁止事項が書かれている』

「その法律(ほうりつ)、平成時代になると、かなり無視された感がありますけど……」

『それは平成時代になってから、成功した企業を買収して(さん)()にする巨大企業グループが増えたことが原因だな』

「なるほど、企業グループの傘下に入れてしまえば独禁法(どっきんほう)の対象外になりますもんね」

 と思ったけど、この場合、他の大手も参入できるようになるんだよね。これ、他社に真似できないほどの独自技術でなかったら、やる意味のない方法だ。

『それに、そもそも独占禁止法に何が書かれてるかを知らない大手社員が増えたことも原因だ。そのせいで大手が新商品を出して早々、発売禁止になった例は多いぞ。さすがに回収まではせず、売り切りで終わるのがほとんどのようだがな』

 これは社内に誰かしら独禁法を知ってる人がいれば、新製品がお店に並ぶ前に止められていたはずだ。だけど、それが止まらなかったということは、大手社員なら知っておくべき教養や道義的なルールを何も知らない自称エリートが増えた証拠だ。そういう理由で消えたカップ麺とか、お菓子とか、私たちが意識してないだけで、身の回りにけっこうあったりする。


『さて、前置きが長くなったな』

「すでに第5話までの一回分より長く語ってますもんね」

『そういう文量の話はいい。それよりもここまで語ってきた無能エリートの一番の被害者になるのが、今回の話題の主役──高学歴ニートや中高年の引きこもりの人たちだ』

「社会問題になってますもんね。霊格の高い人たちでしたっけ?」

『ああ、それな。きみがダウジングで聞いてくる時、霊格が高い人と決めつけて聞いてくるだろ。それも大きな間違いではないが、それよりもIQについて触れて欲しかったな』

「IQですか? 知能指数の……」

『そうだ。今の時代は霊格が高い人よりも、IQが高い人の方が生きづらい世の中だ。もちろん、霊格とIQがセットになってる人も多いから、霊格の話と見なしても大きく間違いではないけどな』

「IQって、学歴エリートも高くありませんか? これまでの(たましい)の話でも、霊格を高めずに知力だけを高めた人たちの問題を語ってましたけど……」

『その学歴エリートのIQが、ほとんどの場合一二〇もないと知った上で言ってるのかな?』

「え? そんなに低いんですか?」

『一二〇が低いわけないだろう。……と言いたいが、明治大正時代だったら帝国大学には、まず入れないだろうな。戦前の大学進学率が一割未満だった時代でも、何とか底辺校にすべり込める程度のレベルだ。それが今では学力エリートの中心だ』

「IQ一二〇というと、上から一割ぐらいの位置ですよね」

 より正確には上位から八・九%あたりの高さだ。

「もっと上の人たちは?」

『戦後の受験戦争で割りを食ってる。そもそも日本は飛び級もなければ、優秀な子を集めた特別教室のようなこともしない。そのせいでIQの高すぎる子は授業が簡単すぎるために学習への意欲を失って、ドロップ・アウトするケースが多いんだ。中には高い学習意欲を持って、学校の浅い授業では教えないいろいろな()(もん)を感じる子もいる。ところが、それで質問された教師の方がその疑問を理解できず、一方的に勉強不足の一言で片づけやすいんだ。悪い大人(おとな)だよな。そのおかげでIQが高い子ほど成績を落としやすい(わな)がある。その被害が顕著(けんちょ)に出てくるのが一三八以上の人たちだ』

 IQ一三八以上というと、二五〇人に一人というレベルだ。

 ちなみに一般的に出まわっている知能指数検査では、IQ一三五が測定できる上限だという。各設問ごとに指定された時間があるが、それを一問でも最後まで()けた経験のある人はIQが一三五以上ある可能性が高いそうだ。それ以上の知能指数を正確に測ろうとしたら、特別な検査問題が必要になると聞いている。

「割を食うというのは、どういう意味ですか?」

簡単(かんたん)な話だ。IQは二〇近く離れると知能レベルが違いすぎて、意思(いし)()(つう)(むずか)しくなるんだ』

「頭の回転の速さ……ですか?」

『それもあるが、それよりも考えの深さや視野の広さだ。よほど(きょう)()の向く分野でないと、低い方の理解が(とど)かないんだ』

「ちゃんと説明しても……ですか?」

『それはお互いの間で、どちらのIQが高いかがわかってる場合に限られる。どうしてIQ一三八以上の人に被害が顕著にあらわれるかわかるか。それは今のエリートを気取ってる連中のIQが一二〇もないからだ』

 たしかに二〇に近いか、それ以上の差だ。

『本当はエリートを気取ってるヤツの方が物事をわかってないのに、自分の方が頭がいいからわかってると思ってるんだ。だから本当はIQの高い方が認識の違いに気づいて説明しても、頭から聞く耳を持たないケースが多い。そのあとにくるのは無能の世迷(よま)(ごと)だと決めつけて、自分の価値観を押しつける勘違(かんちが)いだ。こういう状況(じょうきょう)になる時、決まって勘違いエリートの方が上司だったり、学校の先生だったりと立場が上だ。こうなると高IQの側にとっては相手の思考が低次元すぎると感じても、どこかで退()くことを強要されるだろ』

「ジレンマですねぇ」

 こういう現象は、SNSでもよく見られる。乱入してきて一方的に相手を見下しておきながら、低次元な理屈で説教を垂れる現象だ。

 例えば高等数学の話をしてるところへ、算数を持ち込んでマウントを取ろうとする人が実際にいる。中学受験にどれほどの自信があるのか知らないが、あまりにも自分とのレベルが違いすぎて、逆に低次元な話をしてると錯覚(さっかく)したのだろうか。

 ちなみに、こういう現象にはダニング・クルーガー効果という名前が付いている。興味のある方は、調べてみてはいかがだろうか。

『ところが世の中には現実をまったく無視して、「高い方が会話を合わせればいい」なんて言説が流れている。そんなこと、可能だと思うか?』

「まず不可能ですね。さっき神様も言ってましたよね。IQの低いエリートの方が自分の方が頭がいいと思ってる上に、『頭から聞く耳を持たないケースが多い』と」

『その通りだ。そもそも双方が漠然(ばくぜん)とでも自分と相手のIQを()(あく)してるなんてケースがあると思うか? 人間ってやつは、言葉一つで勝手に相手を格下に見ようとする偏見(へんけん)持ちだぞ。それなのに「高い方が」なんて考えは、頭から机上の空論なんだよ』

 人は肩書きだけでなく、ちょっとした言葉の(なま)りや服装から勝手に知能レベルを推測(すいそく)する。知力が高い人ほど趣味を持つ傾向があるのに、それを『何とかオタク』と小バカにする(ふう)(ちょう)がある。それほど人は()(さい)な情報から勝手な偏見(へんけん)を持つのが当たり前だ。その多くは相手を自分より頭が悪いと決めつける傾向がある。悪い(にん)()バイアスが働くからだ。

「あ、神様。怒ってますね」

『当たり前だ。今回の話題である高学歴ニートや中高年の引きこもりの人たちだって、勝手に知的障害があると決めつけられて医学調査が(おこな)われたんだぞ。だけど、実態はまったくの逆だったんだ』

「馬鹿と天才は紙一重と言いますからねぇ。IQが二〇近く離れると相手の考えがわからなくなるから、一般人には馬鹿も天才も肩書きがないと区別できないってことなんでしょうね」

『それ以上に問題なのが、低IQエリートに見られる異常行動だ。それによって高学歴ニートや中高年の引きこもりの人には共通の被害が見られて、社会から距離を置こうとする傾向が出てくる。その結果が引きこもりだ』

「異常行動……ですか?」

『低IQエリートは他人を蹴落(けお)として出世してきただろ。そのせいで優秀な部下に対する()心暗(しんあん)()がすごいんだ。昔の無能上司なら、気にせずIQの高い部下に仕事を任せるんだ。「自分が責任を取るから、好きなようにやれ」とな。そうするとIQの高い人は能力を()(かん)なく発揮できるから、素晴らしい働きができる』

 初めの方で語った「良きに(はか)らえ」って上司の話ね。部下の方も(てき)()忖度(そんたく)すれば安定した立場を確保できて、うまく仕事が回ってた時代の話だ。

『ところが今の低IQエリートは勝手に部下を自分よりも(おと)ってると見ておきながら、少しでも才能の片鱗(へんりん)を見せたり、昇格試験に受かったりした()(たん)、急にその部下が自分に対して反抗(はんこう)的な態度になったと思い込むんだ』

「え? 何でですか?」

『マトモな思考では理解できないから異常行動だ。おそらくだが自分よりも部下の方が(すぐ)れてるとは認めたくないのだろう。そこで(にん)()バイアスが働いて、勝手に敵対してきたと見て攻撃的になったのだろうと(おれ)は見ている』

「無茶苦茶ですね」

 神様とはいえ、守護神様は他人の意識の中──心の動きまでは(のぞ)くことはできない。だから、あくまで守護神様の予想である。

『きみだって技術者時代に昇格試験に受かって課長になる直前、いきなりリストラを食らっただろ』

「やられましたね。昇進日が決まって、昇進する一か月前にいきなり……ねぇ」

 あれは異常なリストラだった。違法(かい)()だ。それでいながら、それで仕事が回らなくなって、半年()った頃にどうしようもなくなって、部長が「責任を取って何とかしろ」と電話してきた。当然、(ことわ)るが会社に残った人たちでは解決できなかったのか、最終的に四回も電話をかけてきた。ここまで道義も人格もイカれた人は、後にも先にも経験がない。

『高学歴ニートや中高年の引きこもりの人たちも、ほとんどの人が二〇代の頃は優秀な社員として頭角(とうかく)(あらわ)してた。だが、それが社内で出世レースが始まった途端、会社によっては新人扱いが終わった途端、厄介者(やっかいもの)としてリストラを食らった共通点がある。これが一社だけでなく、再就職した先でも同じ目に()い、年齢的にもだんだん再就職が難しくなってそのまま引きこもるところまでがセットだ』

「その多くがIQ一三八以上ですか?」

『その通りだ。しかもIQの高い人は状況(じょうきょう)判断(はんだん)が早くてあきらめやすい共通点がある。それに法律や行政の窓口に行かない傾向もある。きみもそうだっただろう?』

「違法解雇を食らったのに、訴えなかった件ですか? 訴えても、あんなことをする職場に戻りたいとは思いませんよ。すでに作家デビューしてましたから、なおのこと訴えるだけ時間と労力の無駄です」

『ははは。だがな、世の中の人は、そういう理由を考えない。というか今のエリートたちは好戦的だから「不正解雇されたら訴えるのが当然」「やられたらやりかえすのが当然」と考える。それに反して訴えないのは「情報リテラシーが低いからだ」「行政に窓口があるのを知らないから行かないんだ」と(かい)(しゃく)する』

「なんか発想が(かたよ)ってますね」

『この仕組みを作った連中が低IQで好戦的な霊格だから、そんな発想しかできないんだよ』

「ああ、これが霊格カテゴリーの話の時に出てきた泥海(どろうみ)(どろ)ですか」

『念のために言っておくが、野心でエリートになった連中のIQが一二〇もないというだけで、IQが一二〇前後の人全員が好戦的という意味ではないぞ』

「わかってます。霊格が低いから好戦的で、霊格が高くなると競争心や闘争心が弱くなるんですよね」

『その通り。だから高IQの人は、戦う意味や価値がないと判断したら、やる前からあきらめる。というか何も行動しない。情報リテラシーがないわけじゃない。知っていながら悪い情報を多く仕入れすぎて、権利を持ちながら利用しないことも多い。周りにいる悪い大人(おとな)たちに学習させられて、あれもこれも駄目(だめ)無駄(むだ)だと達観(たっかん)してるだけだ』

 なんとも(なや)ましい話である。

『ことわざにある「(あん)ずるより()むが(やす)し」は、そういう達観してる高IQの人たちに向けての言葉だろうな。日月神示にも「好きなことを見つけてバカになれ」みたいなことが書かれてただろ』

「正しくは『苦労して落ちぶれて、()(ちが)いと言われても、阿呆(あほ)と言われても』ですけどね」


『それとだ、ここまで高IQの人たちが今の世の中に絶望(ぜつぼう)して、自分から引きこもったように語ったように感じたかもしれんが、実際は違うぞ』

「違うんですか?」

『まあ、中にはそういう人もいるだろうが、多くの場合、特に霊格が高めの人の場合、担当する守護神が再就職させないように引き止めているケースが多いんだ』

「再就職……させない? でも、働くことが『この世の(ぎょう)』ですよね?」

『そうなんだが、仕事で霊格を上げるには大切な前提(ぜんてい)がある。「世のため」と思って働くか、「自分よりも霊格的に高い存在に身を(ささ)げる」ように働くかだ』

「日月神示には、それが喜びになると語ってますもんね」

『ところが今の時代は霊格の低い者が上司になりやすい。そのせいで仕事が「この世の(ぎょう)」にならない人が増えているんだ』

「今のエリートの多くが、霊格が低いからですか?」

『その通りだ。今の世の中を見てみろ。「世のため」「身を捧げるため」に働いてる人が、どのくらいいると思う? ほとんどの人が「(かね)のため」「会社のため」「組織のため」だ。それを霊格の低い上司の下で働いたら、仕事がつらくなる上に霊格が落ちる。本末転倒だろ。これこそが低IQエリートの弊害(へいがい)だ』

 日月神示には「お金が好きならお金を(おが)んでも良い」と語られているが、これも道理を間違えてなければの話だ。

『これは(おれ)たち守護神にとっても地獄だ。守護神は担当した(たましい)の「霊格を高める」のが最大の使命だし評価ポイントだ。それなのに霊格を「上げる」ではなく、「どうやれば霊格を落とさずに済むか」という問題に()(しん)するハメになっている。どうやって悪い職場から引き離すか。労災や病気にして長期入院させることは可能か。仕事を()めさせられないか。過労死や過労自殺なんて最終手段まで考える守護神もいる。今回の主題である引きこもりは、ある意味、無難な選択(せんたく)なんだよ』

「働くと霊格が落ちるのは、誰にとっても……ですか?」

『そこはどんな職業や職場で働くかによるな。そのあたりの話は説明すると複雑になりそうなので別の機会を(もう)けた方がいいと思うが、まあ、指導神から運命を与えられるような霊格でない人ならば、働けばそれなりに霊格は上がると思っていいだろう。目安としてIQが一二〇ないなら気にするな。悪影響が顕著(けんちょ)に出るのはIQ一三八以上ある人たちに限られる』

「ところで、なんでIQ一二〇なんですか? というか、今のエリートのIQも一二〇が中心ですけど、たしか彼らは霊格が低いだけで、(たましい)の持つ地頭は恐ろしく高いはずですよね?」

『理由は単純、()のままの肉体が発揮できる知力の上限が、そこにあるからだ』

「素のままの肉体?」

『親からの遺伝を単純に受け()いだだけの肉体だ』

「それは生き物として普通の体ですよね?」

『普通というのは(けもの)までの場合だ。人は本来、神の(うつわ)だぞ。そのため指導神や担当する守護神の好みや方針で、肉体には多少の手が加えられることが多いんだ』

「遺伝子を書き換えるんですか?」

『さあ、そのあたりの原理までは知らん。とはいえ自分が担当する子のために、運命や人生の課題、それから生まれる前の希望に合わせて、少しでも(あつか)いやすい肉体を用意したいっていうのは指導神や担当する守護神の親心だ』

「それで知力も高めてるんですか?」

『そこは(たましい)の持つ地頭次第だな。どんなに良い肉体を与えても、使いこなせなかったら(たから)の持ち(ぐさ)れだ。それどころか害悪になることもある』

素人(しろうと)にプロ仕様の高級品を与えるようなものですか?」

『その認識でいいだろう。魂に対してあまりにも高性能すぎる肉体を与えると、使いこなせないどころか霊的な手入れすらできなくて、いろいろ不具合が出るからな』

「天才に変人や病弱が多いとか……、そんな弱点ですか?」

『そうそう、まさにそれ。他に頭が良すぎるあまり、脳の余力が勝手に別の思考を始めてボーッとした子に育っちゃうとかな』

「そこは悲しい現実ですね」

『指導神や守護神のやりすぎってヤツだ。やった神は反省しろ』

 あのぅ、守護神様……。

「今のエリートたちの話に戻しますが……」

『やつらの多くは勝手に地球へ生まれてきてる魂──ワンダラーだ。いわゆる(けもの)の人民だな。親が何らかの才能を持っていたら、多少は同じ才能の片鱗(へんりん)を見せるかもしれないが、三代目になったら()(つね)としてタダの人に(もど)る』

「じゃあ、今のエリートのIQが一二〇あたりなのも……」

『神の(うつわ)から(うば)った肉体でなければ、どんなに地頭は良くても、そのあたりで頭打ちってわけだ』

「仮に優秀な肉体を横取りした場合は……」

『そりゃあ霊格が低い連中がほとんどだ。邪悪(じゃあく)なまでに(わる)(がしこ)くなるだろうな。とはいえ物事を見る視野が(せま)いから、どんなに地頭が高くても残念エリートにしかならんだろうさ』

「それでもエリートになれちゃうのが厄介(やっかい)ですよねぇ」


「ところで今回の話題の引きこもりですが、その中には登校拒(とうこうきょ)()もありますよね?」

『あ、それは今回の話の対象外だ。そもそもIQが高い子は、どんなに(ひど)いイジメを受けてても知識欲が勝って授業に出ようとするんだ。たとえ教師の教え方が下手(へた)すぎて授業に出る価値がないと思っても、それならそれで図書館登校、保健室登校って方法があるからな。あとは親や学校との関係だ。よほどイジメに無関心とか、図書館登校を認めないとか、責任回避でありえない行動を起こすとかして知識欲を打ち(くだ)かない限りは、まず引きこもらないと思っていいぞ』

「ありますね。そういう(しょう)()(くさ)った学校。それで学校ではなく、市の図書館で時間を過ごしてる子もいますし……」

『それと登校拒否についてだが、多くの場合、そういう行動を起こす魂は(りゃく)奪型(だつがた)ワンダラーだ。今の地球は経験値倍増のボーナス期間だから、宇宙から経験値欲しさに身勝手な魂が集まってきている。そういう連中の中には地球に生まれるだけでは飽き足らず、高い経験値が設定された肉体を見つけて、それを横取りするヤツまでいるんだ。それこそが略奪型ワンダラー、より楽に経験値を(かせ)ごうとする魂だ』

「迷惑な人たちですね。それが引きこもりとどんな関係が?」

『高い経験値が設定された魂は、得てして厳格(げんかく)家柄(いえがら)の生まれだったり、やたらと家庭の事情が複雑(ふくざつ)だったり、先天後天問わず身体障害を(かか)える宿命だったりと、大変な運命が待ってるんだ。そのため、その肉体には指導神から選ばれた因縁(いんねん)ミタマが宿(やど)ることが多い。場合によっては修業中の魂では(じゅう)(せき)()えられないため、一度(りん)()から離れた神の一人が、そのお役目のためだけに地上へ降りることもある』

「うわぁ〜。そんな肉体を横取りしたら……」

『だいたい定番の行動を取るな。グレて同類(どうるい)の悪い連中とつるむ、登校拒否になって家でゴロゴロする、学校へ行かず作家や芸術家などのクリエーターを目指す、家出して金を稼ぐ人に弟子入りする、大正期以降はミュージシャンや芸人を目指すヤツが出てきた、最近は若くして動画サイトの常連投稿者も出てきた……』

「待ってください、守護神様。それ、かなり偏見(へんけん)が入ってませんか?」

『いや、大きく間違ってはいないぞ。高学歴ニートや中高年の引きこもりの人は引きこもってる間、日々を無為(むい)に過ごすことに罪悪感(ざいあくかん)を覚えている。それで(ひま)を持て(あま)してる時間を使って、漠然(ばくぜん)と何かに打ち込んでいる人が多い。それに対して霊格の低い引きこもりは、ずっと遊んでる。何もしないことに罪悪感を持たず、ゲームやパチンコ、賭け事などにうつつを抜かす。ここが大きな違いだ』

「クリエーターを目指す人なんかは、(はた)()にはわかりませんよね?」

『いや、けっこう違うぞ。今回の対象になった人たちは、時間がかかっても何か作品を生み出す。対象外の人たちは何一つ完成しないか、やっつけで終わるか』

 まあ、クラシック音楽の作曲家には、シューベルトというどちらのグループにも入らない人がいる。音楽編集者のイヤガラセでウィーンの音楽業界から干され、それから亡くなるまでの約一〇年間、ずっと家に引きこもって作曲を続けていた人だ。おかげで世の中へ発表する機会を奪われ、書きかけで未完成の作品や断片(だんぺん)だけの作品が多くなってしまった。そんな息子を見ていた親からは、日々部屋にこもってゴロゴロしてるだけの穀潰(ごくつぶ)しとしか思えなかったらしい。

『とにかく高学歴ニートや中高年の引きこもりの人は元が優秀だ。居場所や役目、動機を与えれば、人並み以上の働きをする(かく)れた人材が多い。引きこもって何かをしてる中からも、将来、新しい仕事が生まれてくるかもしれない。それなのに今の時代は低IQエリートにとっての目先の損得(そんとく)で物事を見て、高IQの人材に活躍(かつやく)する場所も機会も与えないどころか、ライバル視して活躍する場を(うば)って無駄(むだ)に遊ばせるイヤな時代ってわけだ』


「最後に一つ。近年、EQ──心の知能指数という言葉がありますが」

『あれは世の中からIQの高い人を排除してる状況を、自己正当化してるマヤカシだ。ちょっと考えてみれば、低IQエリートにとって都合の良い理屈が並んでるだろ』

「それは、言われてみると何となく……」

『それに最近は精神科医たちが、IQ一三〇以上ある人を一律(いちりつ)精神障害と言い出した。これも裏の意図がわかるよな?』

「世の中から高IQの人たちを追い出したい本音がダダ()れてるとしか思えませんね」

『それに一般市民にもIQにはルサンチマンがある。きみだって、それがあるから無意識のうちに話題に()れるのを()けてたんだろ』

「それは否定できません……」

 ルサンチマン。これは持たざるものが、持つものに嫉妬(しっと)(ぞう)()を覚える感情だ。特に経済力や社会的地位、才能や実績(じっせき)、知名度、名声について使われることが多い。

 余談であるが今回の話、著者(ちょしゃ)は途中まで書き進めたものの、途中でパタッと筆が止まってしまった。その理由は守護神様が、著者が霊格からの見方に()(しつ)してIQという見方を避けてきた間違いに気づかせようとしたからだろう。守護神様がいつからIQの話題を振ってきてたのかはわからない。そのせいで間違いを書かせないために筆を止めさせたのだろうと思う。そのため前の話の投稿(とうこう)から、二か月近くも()いてしまった。

 触れるのを避けていたのは、この二か月に限られるのか。それともずっと前から続いているのか。

 こういう間違った認識は、おそらく他にもあるだろう。

『IQが高い人のすべてが霊格も高いとは言わん。だが、この問題は日月神示が語る大グレンによく()(ごう)してるとは思わないか。今は地の底まで落とされてて、大グレンが起きたあと上に立てる存在だ』

(かみ)つ巻 第二〇帖にある『上の者 下に、落ちぶれた民 上になるぞ』ですね」

 日月神示では今の時代、人格者ほど落ちぶれて、身勝手で他人を蹴落(けお)とす人たちばかりが出世して(とみ)(むさぼ)っていると語っている。これはこれで一理あるけど、この物言いは宗教(しゅうきょう)的であり抽象(ちゅうしょう)的だ。そのため、ここに違和感や(きょ)()感を覚える人が多いだろう。

 著者も読み解きで『落ちぶれた民』を『搾取(さくしゅ)されて苦しんでる人格者』と漠然(ばくぜん)と見なしてきた。だが、一番の問題は、人格者だからと言って仕事ができるとは限らないこと。ここが、それまでの読み解きのネックになっていた。

 だけど、これをIQという具体的な尺度で語られると、たしかに今は高い人が落ちぶれ、低い人が上に立つ世の中だ。IQの高い人は世間から(はじ)き出され、引きこもるしかないという意味で間違いなく落ちこぼれている。

「この状況、本当に変わりますかね?」

『少しずつ世の中が事実に気づき始めてるんだ。大グレンが起こるのは、そう遠くないかもしれんぞ』

「その時、私はどのあたりにいるんでしょうねぇ?」

 一人一人にとっては、そこが最大の問題かもしれない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お待ちしておりました! IQの話題が出て、ようやく進んだ感じですね。 [気になる点] IQ120が一種の基準ですかね。私は見た限り若干低いですが、それでも割と恵まれている側だとは思っていま…
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