第24話 邪馬台国について聞いてみた
邪馬台国論争。日本史における大きな謎である。
著者の認識では畿内説を唱えるのは東大閥の学者が多く、その畿内にいる京大閥の学者たちは九州説を訴えているイメージだ。
ダウジングをするなら、こういう話題での回答も聞いてみたいよね。
ということで最初は、
「守護神様。魏志倭人伝に書かれてる邪馬台国は実在してたんですかね?」
中国人史家が作った、空想の国という可能性から聞いてみた。
『あったよ。それと「邪馬台」は当時の記録者が「ヤマト」の音写として記述したものだ。だから「ヤマタイ」ではなく「ヤマト」と読むのが正しいぞ』
「邪馬台国はヤマトだったんですか。じゃあ、畿内説が正しかったんですね」
『それは違う。三世紀の日本は、九州がヤマトだったんだ』
「ということは、九州説の『邪馬台国は八女津国ないし八女一番の国の間違い』とする説は……」
『間違いだ。当時は九州がヤマト。それだけの話だ』
「なるほど」
あっさり答えが出てしまった。
「神様。正しくはヤマトですけど、話の都合上、このあとは邪馬台国という言い方で統一してもいいですか?」
『かまわんよ。その方が話が混乱しないだろうからな』
ということで、このあとは邪馬台国という言い方で進めたいと思う。
「次に邪馬台国の女王──卑弥呼は、実在した人物でしょうか?」
『いたよ。でも女王じゃない』
「では巫女ですか? 今の主流仮説は『日の巫女』だから『ヒミコ』と呼んでたと……」
『巫女が近いかもしれんが、「日の巫女」はこじつけがすぎるな。そもそも卑弥呼と太陽は関係ない。それに、よく文字を見ろ。卑弥呼は「ヒミコ」ではなく、当時の中国では「ヒメハ」と読むんだ。それに卑弥呼は人の名前じゃない。「使いがヒメと呼んでた人物」という意味だ。本名は他にある』
とはいえダウジングでは、本名までは引き出せなかったので不詳のままだ。
『それと邪馬台国だが、ここは王国ではない。まだその時代まで残っていた、神が統治する国だ。卑弥呼は審神者によって神の言葉を伝える、神の秘書のような役目だぞ』
「ということは最後の岩戸閉じが起こるまで、天界からの光が届いていた国だったんですか?」
『仏教伝来までは続かなかったが、地球が地獄の底まで落ちたあとも、霊格カテゴリー三のままクラヤミから免れていた国だ』
「つまり神託政治をしていたと……」
『そうだ。卑弥呼自身は審神者役に徹して、自分ではいっさい政治を行ってない。しかし、魏志倭人伝を記した史家にはそのあたりの話がまったく理解できなかったのだろう。勝手に「鬼道だ」「占いで政治をしてるんだ」と想像したフィクションで語ってるんだ』
カテゴリー一まで落ちた中国では、カテゴリー三の政治は想像すらできなかったのだろう。
「この卑弥呼がアマテラス様のモデルですか?」
『まったく関係ない。さっき太陽と関係ないと断っただろう。そもそも邪馬台国と天皇家の間には、何の縁もない。それどころか邪馬台国は、西暦三五四年にヤマトタケルによって滅ぼされるんだ』
「……ん? ヤマトタケル? あれ? ヤマトタケルは一〜二世紀の人物では?」
『西暦三三四年生まれ、三六二年没だ。今日言われるような一世紀から二世紀の人物ではない』
「ちなみに卑弥呼は?」
『西暦二〇三年生まれ、二四三年没だ』
「ヤマトタケルの方が……あと?」
『一世紀あとの人物だな』
「神武東征は?」
『完全なフィクションだ。天皇家は最初から畿内で興った豪族で、明治になって東京へ移るまで近畿地方から出たことはなかったんだ』
「じゃあ、九州にいたことは?」
『もちろん、ないよ。というか邪馬台国畿内説っていうのは、古事記、日本書紀のウソを、無理やり正当化してる主張に過ぎん。神武東征や一〜二世紀のヤマトタケルを歴史的事実と考えたら、三世紀の九州に邪馬台国があってもらっては困るんだ。すべてが矛盾になるからな』
「えっと……」
情報量が多すぎて、脳が理解を拒否している。
『そもそも権威付けのために三〜四世紀のできごとをもっと昔にあったことにしたため、日本の歴史には三世紀後半から五世紀頭にかけて一世紀半もの空白期間ができてしまった』
日本史でいう「空白の四世紀」だ。
「ところで卑弥呼が王位に即く前の二世紀後半、日本では倭国大乱という大変な戦乱期があったそうですが、それは事実ですか?」
『そんなものは起きてないぞ。実際にこの時代の遺跡からは、戦乱を思わせる証拠は何一つ見つかってない。吉野ヶ里遺跡などから刀傷のある遺体や矢の刺さった遺体は見つかっているが、戦乱があったとするには数が少なすぎる。この遺体の主は、おそらく権力争いの犠牲者だ』
「じゃあ倭国大乱は、中国の史家が作った創作ですか?」
『そこは俺にはわからん。でも、ウソの波動は感じないから、何かの事実誤認か、話が誇張して伝わったか……』
「他の地域と混同した可能性は?」
『中国は三国時代の戦乱期だが、日本や朝鮮半島では混同されそうな事件はないんだよなあ』
「別の世界線で起きた事件とか?」
『そんなものがあったら、俺が気づかないわけないだろ』
「ということは謎ですね」
『ああ、謎だ。調べても、なぁ〜んにも出てこない』
歴史には、そんなこともあるんだろうねぇ。
「では、卑弥呼のあとはどうでしょうか。卑弥呼の死後、あとを継いだ男の王が世を乱したので、娘のトヨが女王に即いて平穏が戻ったそうですが……」
『卑弥呼のあとを継いだ男は、ただの野心家だ。審神者ができないのに神の声が聞こえるフリをして、野心丸出しの政治をしたんだから世が乱れるのも当然だ。そのあとちゃんと霊能力を持つトヨが審神者役に立つことで、再び神の統治する平和な世に戻ったというわけだ』
「なるほど。わかりやすい理由ですね」
いつの時代にもある、ダメ政治家が上に立ったことによる混乱だったようだ。
「最後にヤマトタケルですが、九州、関東へと遠くへの遠征が命じられたのは、なぜだったんでしょうね?」
『生まれつきの女顔が、時代的に疎まれたんだろうな。今だったら甘いマスクのアイドルになれたんだろうが』
「叔母の倭比売から女物の服を渡された話がありますが……」
『古事記の内容とはちょっと違うが、叔母から「女装が似合う」と言われて、女物の服を送られたのは事実だ。実際、女装が似合う美少年で、たびたび女装してたのも事実だぞ』
「男の娘だったんですか」
『だから、周りから気持ち悪がられて遠くへ追いやられたんだ。とんだ災難だよな』
「古事記には兄殺ししたことによる父の怒りだそうですが……」
『あはは。そんな事実はないよ。それは太安万侶が、つじつま合わせで勝手に書き加えたんじゃないか? 日本書紀には書かれてないだろ』
とんだ冤罪である。
「ヤマトタケルって、生まれる時代を間違えたんでしょうかねぇ?」
『こらこら。ただ女装が似合うってだけで、本人がそれを望んでるわけじゃないんだ。おネエ芸能人になったヤマトタケルなんて想像するんじゃない!』
……あ。ツッコまれてしまった。
というところで、今回の話は終わりである。




