第11話 捕囚された魂について聞いてみた(1)
今回は都市伝説にある監獄惑星に関する話である。
「守護神様。地球は魂を閉じ込めておくために、電磁バリアに覆われた監獄惑星になってるという都市伝説があるじゃないですか」
『うん、あるな』
「あれ、初めて聞いた時は輪廻転生を曲解した都市伝説だと思ったんですけど、まさかそれを示唆する状況証拠がどんどん出てくるとは……」
『きみには小説のネタにでも使えるようにと、二〇年以上前からメッセージは送ってたんだけどな』
「そうだったんですか? やっと二〜三年前に気づきましたよ」
『まあ、気づいてもらえただけで、良かったと思うことにするよ』
普通の人は守護神様からのメッセージを、すんなりとは聞けないからねぇ。ダウジングには制約はあるけど、始めたことでようやくある程度のことを聞き出せるようになったわけで……。
『地球を監獄惑星にしてるのは、日月神示でいう邪鬼──俗にレプティリアンとして知られる存在だ。とはいえ天界の神々も、いつから彼らが地球に悪さを始めたのかは知らん。あとになって紀元前三千年頃から異民族の家畜化──と言うより奴隷化だな。そういう現象が起きてたと気づいてから知ったぐらいだ』
「そのあたりの話は、前にもやりましたね」
『邪鬼は何千年もかけて、地球を天の川銀河の中で最底辺の地獄にする裏工作をしていた。将来、監獄惑星として囚人を送り込むためだ。その準備が一四世紀末に終わると、すぐに囚人たちを送り込んできた』
「その囚人は、どのくらいの数が送り込まれてるんですか?」
『毎年、百万人から二百万人だ』
「ひゃく……。それを毎年ですか?」
『そうだ。それが六〇〇年以上続き、総数も一〇億人を超えるまでになった。地球人口の一四〜一五%は、邪鬼に連れ込まれた魂だと思っていい』
「七人に一人ですか」
魂にとって本来の状態である『神の器』が一六〜一七%だから、ほとんど数に差がない。
「地球に連れ込まれる魂って、どんな犯罪で捕まったんでしょうね?」
『わざわざ遠い場所へ流されるのは、昔から凶悪犯か政治犯と相場が決まってる。ただし地球へ送り込まれてるのは、政治犯に限定されてるがな」
「それが一〇億人を超えるって、いったい……」
『邪鬼の世界は宇宙帝国の一つだ。送り込まれてくるのは反政府軍や植民惑星の抵抗勢力、または帝国政府から目をつけられた文化人や活動家たちだ。いわゆる不満分子だな』
「そういう意味の政治犯ですか」
『だから邪鬼たちは、そいつらを地球に鎖じ込めて、永遠に理不尽な目に遭わせてやろうとしてるんだ。そのために地球の霊格カテゴリーを地獄の最底辺まで落として、戦争と貧困という仕掛けまで用意して……』
「巻き込まれる地球人には、ホント、迷惑でしかありませんよね」
「守護神様。邪鬼に捕囚された魂には、私たち一般的な地球人の魂とはまったく違う死後の世界があるというのは本当なんですかね?」
『そりゃあ、違うだろ。あの世や臨死体験を話した時にも語ったように、賽の河原や三途の川は担当する神の見せる幻覚だ。邪鬼たちは邪鬼たちで、まったく違う幻覚を用意しているようだぞ』
「守護神様が見せようと引っ張ってきた本にも書かれてましたね。最初は死んだ時とほとんど同じ光景を見せられるので、死んだことに気づかないこともあると……」
『だが、時間と共に街並みが古くなっていくらしいんだな。幻覚の作り込みが甘いのか、もしかしたら最初の頃に作った幻覚のままかもしれんぞ』
「最初の頃って、一四〜五世紀の街並みですか?」
『最初から時代とは関係のない、自然のままの幻覚を用意しておけばいいのにな』
神様の用意した幻覚、手抜き説発覚……ですか?
『あとの共通点は、空が曇ってるとか、夜にならないとか、持ち物を見るとお金の種類が変わってるとか……』
「そのお金の話が、なんとも不思議なんですよね」
『地球を金融経済という地獄にして支配しようとしてる邪鬼らしいじゃないか。だからあの世にまでお金を用意してるんだろ』
「地球のお札は横長が多いですけど、そのお金は縦長白銀比みたいですね」
縦長白銀比のお札。B6サイズの手帳がイメージ的に近いのだろうか。レプティリアンの世界では、そういう形の紙幣が多いそうだ。
「よく『あの世までお金は持っていけない』と言われますけど、捕囚された魂たちは……」
『生前貯め込んだ金は、そのままではないが換金されてあの世まで持っていける。そこで、それを元手にして商売を始める者もいるぞ』
「あの世の記憶のある人の証言では『お財布の中身が増えてた』『なぜか手元にお金があった』なんて話もありますし……」
『あの世ではお金がなくても暮らせるのに、邪鬼は意地でもお金を使わせたのかねぇ』
「守護神様はそっちの方向で考えますか。私はベーシックインカムみたいだと思いました」
まさにレプティリアンは経済悪魔である。
「それにしても、あの世で商売を始めるなんて、たくましい人もいるもんですね」
『そりゃあ、邪鬼の作ったあの世には仕事が溢れてるんだ。なんせ平均一か月しか滞在しないから、人を雇ってもすぐに転生されて人手が足りなくなるからな』
「死後、一か月で転生するんですか?」
『そうだ。捕囚された魂は、短い時間で転生するのが特徴なんだ。長くても一年。短い方だと前の肉体に命が残ってるのに、同じ病院にある産婦人科で保育器に入った新生児に転生してたって例もあるぞ』
「死んだと思ったら保育器の中ですか。心の準備もありませんね」
『そういう状況だから、人を雇ってもすぐ転生していなくなる。あの世はいつも人手不足だ』
「ところで、誰が雇ってるんですか?」
『そんなの邪鬼に決まってるだろ。あの世にある会社も店も、邪鬼が経営して死んでやって来た魂を雇い入れてるんだ。まあ、あの世では働かなくても暮らしていけるんだけどな。たぶん死後の世界に来たというより、異世界に迷い込んだと思って「生活のために、まず働かなきゃ」って思い込んだ人たちが、仕事を見つけて働いてるんだと思う』
さすが、経済悪魔の作った世界である。
『そういう世界だから、手に元手がある人は商売を始めるんだ。でも、仕事が軌道に乗る前には転生してるだろうな』
それはそれで悲しい話である。
「捕囚された魂の転生は、どんな感じで起こるんですか?」
『前触れのある人は、ある日、目の前に飲み物を配ってる鬼女に遭遇するそうだ。その鬼女には抗いがたいほどの魅力があって、近寄ると急に強い喉の渇きを覚えるそうだぞ。それで渡された飲み物を口にすると、意識が薄れて気がついた時には赤ん坊になってるそうだ』
「配ってる飲み物は、何かの薬なんですかね?」
『一説には前世の記憶を消す薬と言われている』
「前世を忘れさせる薬ですか?」
『そういう薬が出てくるのも、捕囚された魂に限定された話だ。本当に記憶を消す薬かどうかは怪しいがな』
「別の目的があるんですかね?」
『考えてもみろ。魂には生まれてから体験してきた過去生の経験が記憶されている。その積み重ねが霊格や地頭になるんだ。それを薬で消したらどうなると思う?』
「経験がゼロになって、草に戻る」
『すべてを消したら、その通りだ。だが、それでは邪鬼の気は済まないのだろうな。やつらは地球で理不尽な目に遭わせて、囚人たちをジワジワといたぶるのが目的だ。おそらく前世を含めて少しずつ記憶を消して、囚人の霊格を落とすのが狙いじゃないかと思うぞ』
「ひどい話ですね。そんな被害者が、今の地球には七人のうち一人もいると……」
『きみの父方の祖母ちゃんも、捕囚されて理不尽に振りまわされた魂の一人だぞ』
「本当ですか? あ、でも生前、『世の中、なるようにしかならん』と達観してたのは、散々、運命に翻弄されたせいだったのかな?」
『その祖母ちゃんも、亡くなってから一か月と経たぬ間に転生している。捕囚された魂の特徴として、死んだ場所からそう遠くない場所に生まれ変わることが多いんだ』
「そう言えばさっきも『同じ病院の中で』とかいう話がありましたもんね」
捕囚された魂の世界。たしかに他の魂とは、まったく違う世界だ。




