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1章 商業都市「マーケット」

※注意

下記に当てはまる方は読まないほうが幸せでいられます。


・ファンタジー系RPGがとにかく好きな人

・ロマンチストな人

・真面目な考えを持っている常識人の人


当てはまらない人も、覚悟してお読みください。

次の街への道中、何度か凶暴化したモンスターから襲撃を受けた。

元々凶暴なのがモンスターなのに、更に凶暴化していることに驚く。

「1人」で戦ううちに、徐々に戦闘にも慣れてきた。

特に、酒瓶を20本も背負いながらの戦闘なので、力が大幅に鍛えられた。

敵の弱点を巧みにつくことで、楽に退治できた。

必殺攻撃は「瓶攻撃」

カースでもらった土地の銘酒を瓶ごとモンスターにぶつけ、そのまま火をつけるのだ。

たいていのモンスターは、良く燃えた。

たまに暴れるモンスターが民家に突っ込んでしまい、火事になったこともある。

悪いのはモンスターである。

ただ1つの難点は、仲間3人からの冷たい視線だった。


そしてたどり着いたのは商業の街「マーケット」

大陸で1〜2を争うほどの大きな市場があるのが特徴。

ここで旅の装備を整えることにし、まずは仲間と手分けをして買い物をすることになった。

最初に武器・防具屋を訪れたが、数時間前に別の勇者一行が訪れていたようで、武器・防具類は売り切れとなっていた。

仕方がないので、幸運を呼ぶというフォーチュンリングを人数分購入。

装備するだけで幸せになれるという魔性のアイテムで、通販でも大人気らしい。

王からもらったはした金がほとんど飛んでしまったが、おまけにあの有名なパワーストーンも人数分もらったのでお得だったはず。


3時間後、他の3人は合流場所に来る気配が無い。

既に集合時間を1時間ほど回っていた。

何か問題でも発生したのかとやきもきしていると、憤慨した表情の3人が戻ってきた。

口々に値引きがどうだったとか品揃えがどうだったとか喋っている3人をよく見てみると、服がブランド物になっていた。

フォーチュンリングとパワーストーンを渡すことを告げると、露骨に嫌な顔をされた。


デザインが悪い。

色合いがコーディネートに合わない。

胡散臭い。


と散々の評価。

仕方がないので、全て自分で装備した。

きっと、4倍の幸せが訪れるだろう。

幸せになりすぎてしまう自らを想像して武者震いした。


今日の宿は温泉宿だった。

源泉かけ流しが売りの老舗である。

部屋に通された後、店員から不可解な言葉を聞いた。

循環ポンプが故障しているので、浴場が1つしか使えないらしい。

宿泊が決まってから真実を告げられたのである。

詐欺ではないかと疑ったが、瞬時に思い直した。

男女混浴かもしれない。


神の思し召しか。

いいや、パワーストーンのおかげか。


しかし、男女別の時間制と聞いて天を仰いだ。

そううまい話は転がっていない。

男の入浴時間を尋ねると15時から18時と24時から29時までになっているそうだ。

時計を見ると、18時5分過ぎ。

残念ながら、日が変わるまで入浴できないことが確定した。


宿の厚意で、夕食バイキングが高級な部屋食にレベルアップされた。

浴槽が1つ使えないことのお詫びだという。

俺は男で1部屋。 仲間は女3人で1部屋。

このままだと寂しく1人で部屋食だと思っていると、一緒に食べないかとの誘いがかかった。


神の思し召しか。

いいや、パワーストーンのおかげか。


女部屋を訪れると、既に4人分のお膳が用意されていた。

部屋の隅に1膳だけ置かれているといった仕打ちもなく、4人で楽しく食事ができる距離になっていた。

何日かの旅を通じて、ようやく警戒心も無くなったようだ。

3人とも既に入浴済みなのか、浴衣に着替えていた。

今日は何かが起きそうだ。 ありがとう、パワーストーン。

端の席に着こうとすると、真ん中に誘導される。

3人の優しさに涙が出そうになった。

勇者マニュアル5ページ目にあった「ツンデレ」という言葉を思い出す。

 ・普段はツンとしているにも関わらずあるタイミングで急にデレてしまう人種のことをいう

 ・以前は希少種であったが保護政策の下で発展しつつある

 ・類義語に『クーデレ』『ヤンデレ』がある

さしづめ、いつも文句ばかりでこちらを非難してくる魔法使いの彼女は「ツンデレ」

ほとんど言葉を交わすこともない、視線が冷たい僧侶の彼女は「クーデレ」

昔はヤンチャもしたという水商売が「ヤンデレ」なのだろう。

3種を1回で集めてしまう自分の選球眼に改めて己の素晴らしさを認識した。


席に座った刹那、異常な状態に気がついた。 明らかな違和感。

刺身が… 無い。

皿には誇らしげに大根のツマが山盛りに盛られている。

他の3人のお膳にはカニの脚がある場所に、大量のゆでエビ。

煮物は鉢からこぼれんほどに盛ってあるのに、ナスとピーマンしかない揚げ物。

もしやと思い小鍋のふたを開けてみる。 入っているはずの牛肉は消えている。

不可解に思いながらも、食事を取ることにした。

デレ3人がおいしそうに刺身・揚げ物・牛肉を食べているのを眺めながら。


傷心のまま夕食を食べ終え、そそくさと部屋に戻ろうとすると呼び止められた。

勇者様、もう戻られてしまうのですか? と。


全ての苦行はこの瞬間のために!


部屋にいても暇なことを告げ、彼女たちの部屋に居座ることになった。



動きづらい。

両手・両足を縛られ、芋虫のような状態で這い回る。

このまま攻撃を受けるのも趣向としては面白いが、部屋に1人残された。

湯浴みをしている間、部屋を見張っておくようにとのお達しだった。

しかし、俺も勇者のはしくれ。 このひどい状況に甘んじているだけの存在ではない。

彼女たちは言っていた。

「先に」お風呂に入ってくる、と。

「その後は」勇者様、よろしくね、と。

芋虫も悪くない。



 「いいわ… 本当に気持ちいいの、勇者様!」

 「はぁ… 本当に上手ね、勇者様…」

 「つ、次は私ね、勇者様!」


お約束に漏れず、見事なまでの「マッサージ要員」である。

前向きに捉えよう、マッサージをされても嫌ではない存在になれたのだと。

マッサージも終わったところで、すぐに部屋から追い出された。

少し臭うと言われてしまった。 まだ入浴していないことを思い出す。

部屋に戻り時計を見る。

23時を少し周ったところ。 

あと1時間でようやくこの不快感から解放される。

安堵のため息をついたところで、部屋をノックする音に気付いた。

どうぞ、と呼びかけると、音も無くクーデレが入ってきた。

そうか、やはりフラグは立っていたのか。

少し疑ってしまってすまなかった。 ありがとう、パワーストーン。

じりじりとにじり寄ってくるクーデレ僧侶。

無言で差し出された1封の封筒。

中に入っていたのは3枚の紙。 ブランド店の請求書だった。



その日の深夜、特に問題も起こらない街だったのでマーケットを後にした。

この街は勇者を求めていないのだ。

早く次の街へ向かわないと、請求書が大変なことになる。

いや、次の街が大変なことになっているかもしれない。

急に沸いてきた使命感と、仲間の文句を背に、俺は早足で旅立った。

パワーストーンが、真夜中の月に照らされて怪しく光った。



結局書いてしまいました。

次話があるかどうかは気分次第となります。

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