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妖刀憑きの聖女 ~天下無双の剣士は復讐戦争に加担する~  作者: 結城 からく


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第69話 妖刀は夜空の下で語らう

 その日の夜、俺とネアは王城のバルコニーにいた。

 俺は酒瓶を呷ると、深々と息を吐く。


「一段落だな。思ったより早く終わっちまった」


「不満ですか?」


「まあな。あっさり降伏しやがって……」


 悪態を吐きつつ、俺は城下町を望む。

 そこには活気と熱狂の渦巻く光景があった。

 人々は宴を開いており、楽しそうに騒いでいる。


(こんな結末になるとはな……)


 少し前、独立派の軍は王都に侵入した。

 敵兵との攻防を展開する中、俺とネアは一足先に城へと向かった。

 兵士を斬り殺しながら突き進み、ついには幼い王を捕縛した。


 新王の妹である彼女は幽閉されていた。

 実権を持たず、本当にただの傀儡として生かされていたのだ。

 おそらくは聖騎士が閉じ込めただろう。


 城を占拠した俺達は、独立派の勝利を宣言した。

 魔道具を介した聖女の声明は、瞬く間に王都全土へと拡散された。

 敵兵は次々と降参し、現在は地下牢に詰め込んでいる。


 王都の人々は独立派を歓迎していた。

 聖女の活躍は、この地まで広がっていたらしい。

 王国の転換期を喜ぶ彼らは、ここぞとばかりに宴を開いたのであった。


 なんとも調子のいい連中である。

 ネアの処刑を楽しんでいた癖に、今は呑気に勘所を肯定している。

 個人的には一人ずつ殺して回りたいが、その衝動は抑え込んでいた。


 俺は空になった酒瓶を置いてネアに尋ねる。


「あんたはこの結末に満足しているんだろう?」


「はい、被害を減らせましたから。戦争の犠牲者など、少ないに越したことはありません」


「さすが聖女様だ。言うことが違うな。涙が出そうだぜ」


 俺は軽く笑いながら懐を漁る。

 取り出したのは一本の煙草だった。

 口にくわえると、ネアの指先から小さな火が飛んできた。

 それが煙草の先端を炙る。

 紫煙を味わいながら吐き出していると、ネアが意外そうに言う。


「喫煙者だったのですね」


「ああ、酒と煙草が大好きなんだ」


 俺にとっては数少ない嗜好品である。

 基本的に殺し以外はあまり興味が無いものの、酒と煙草は悪くない。

 紫煙を一瞥したネアは、少し眉を寄せる。


「身体に悪いですよ」


「どうせ夜明けには朽ち果てる。気にしなくていいだろ」


「……そう、でしたね」


 ネアは悲しげに呟く。

 なぜか湿った空気が漂っていた。

 彼女は誤魔化すように質問をする。


「どうして私の身体で吸わなかったのですか?」


「あんたが喫煙者じゃないからだ。吸わない人間の肺を悪くしようとは思わない」


 喫煙者の担い手なら別だ。

 常に吸っているような時期もあったほどである。

 一方でネアは煙草を吸わない。

 肉体を借りる身として、そういったものは控えると決めていた。


「人斬りも気遣いができるのですね」


「ははっ、言うじゃねぇか」


 俺は煙草を噛みながら笑う。

 堅苦しい聖女様も、随分と口が達者になったものだ。

 まったく、誰の悪影響を受けたのやら。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一人ずつ殺していくのは面倒臭いから、徴兵制を取り入れて新兵のまま前線送れば効率よく処理できるかと。
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