第68話 妖刀は聖女と共闘する
「オラァッ!」
跳び上がった俺は、落下に合わせて妖刀を一閃させる。
押し寄せる強化兵の首が、まとめて斬り飛ばされた。
首を失った身体を蹴倒しつつ、踏み進みながらさらに斬撃を繰り出す。
連中を真っ二つに解体することで、前進するための道を築いた。
そこで俺は屈み込み、背後の相棒に合図の声を送る。
「ネア!」
「はいッ!」
頭上を掠めるようにしてネアが飛び出してきた。
風魔術で加速した彼女は、結晶の刀を振り回す。
風の刃に無数の結晶が散りばめられて、無残にも強化兵を切り刻んでいった。
動きが鈍ったところに、ネアが追撃を叩き込んで攻め立てていく。
彼女が押され気味になれば、俺が手を引いて位置を交代した。
消耗した彼女を差し置いて強化兵を薙ぎ倒す。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
俺達は即席で連携を組んでいた。
互いの戦いを最も近い場所で見てきた。
それ故にどう動くのかは直感で分かる。
状況に合わせて臨機応変に対応できていた。
先ほどから強化兵達が、雪崩れ込むように攻撃してくる。
しかし、こちらは世界最悪の人斬りだ。
有象無象のアンデッド共に負けるほど軟弱ではない。
ひたすら斬り殺して屍に変えていく。
聖騎士だけでは物足りなかったのでちょうどよかった。
やがて俺達は強化兵を殲滅する。
途中で合流した独立派の軍は歓声を上げていた。
現在、使えそうな死体を死霊術師がアンデッド化して戦力を補充している。
一方で奴隷を整列させていたラモンが、こちらを見て唖然としていた。
彼は俺とネアを交互に凝視している。
顎が外れそうな顔だった。
「ウォルドの旦那、その姿は……」
「奮発して作ってみた。今夜だけの特別仕様さ」
特に隠すようなことでもないので答える。
どうせ向こう数十年は使えないであろう力である。
受肉にかかる魂が多すぎるのだ。
再発動には相当な労力がかかってしまう。
「兄貴ィ! 本当の姿が見れて嬉しいぜ……っ!」
ビルは感涙しながら崩れ落ちている。
彼は一騎当千の働きをしてくれた。
疲弊した部下の盗賊をよそに、まだ元気が有り余っている様子だ。
とんでもない体力である。
魔族という種族を加味しても異常だろう。
よほど鍛え上げてきたらしい。
俺は涙を流すビルを見て苦笑する。
「泣くほどじゃないだろう。なあ、ネア?」
「そう、ですね……はい」
ネアは呼吸を整えながら応じる。
彼女は汗と血と泥で汚れた軍服を払い、垂れた髪を掻き上げた。
多少の疲れはあるようだが、まだ余裕がありそうだった。
彼女もだいぶ戦いに慣れてきたのだろう。
軍が落ち着いたところで、俺は指示を出す。
「このまま王都を攻め落とすぞ」
「戦力的に問題ないのか?」
「ああ、こっちには俺とネアがいる。連中の士気も落ちているから、派手に仕掛けてやればいい」
連中は聖騎士という奥の手を失った。
次の策を打たれる前に、さっさと攻め込むべきだ。
今ならば混乱に乗じて一気に勝利を掴み取れる。
俺は刀を鞘に戻しながらビルとラモンに告げる。
「お前らはどこか一カ所で防戦に徹してくれ。後は俺達が片付ける」
「ウォルドの旦那、それはさすがに厳しくないかい? いくらあんたが強いと言っても無謀すぎる」
「安心しろよ。国落としは何度も経験している。得意分野だ。それに今回は一人じゃない。人斬りが二人もいるんだ。楽勝ってもんさ」
ラモンの反論に応えつつ、ネアに視線をやる。
彼女は無言で頷いた。
それこそ聖女だ。
やる気は十分らしい。
俺は凶悪な笑みを隠さず、彼らに語りかける。
「さあ、行こうぜ。掃討戦だ。さっさと終わらせて酒を飲もうじゃないか」




