表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖刀憑きの聖女 ~天下無双の剣士は復讐戦争に加担する~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/71

第59話 妖刀は聖女の再起に感心する

 上空に打ち上げられた兵士達は、手足を振り乱して慌てる。

 ネアは彼らを一瞥すると、走りながら刀を何度も往復させた。


 斬撃は風魔術によって延長される。

 風の刃は唸りを上げて敵兵を捉えて、無防備な彼らを次々と引き裂いていった。

 敵兵は肉片となって落下して大地を汚す。


 ネアは顔色一つ変えずに疾走する。

 彼女は全身から微弱な風魔術を放出させていた。


 風の流れを感知し、敵兵の動きを把握しているようだ。

 先ほどまでは使っていなかった技である。

 乱戦に向けた能力を編み出したらしい。


 ネアは凄まじい集中力を発揮していた。

 魔術行使の精度が格段に上がっている。

 相対的に魔力の消耗も劇的に改善されていた。

 長時間の戦闘でも問題ないように工夫している。


 攻撃ばかりに使うのではなく、防御策も備えていた。

 土壇場で柔軟な思考を見せている。

 ビル達に助けられたことで、ネアも冷静になったようだった。

 覚悟を新たに成長している。


「狂った聖女め、死ねェ!」


 叫ぶ敵兵が槍の刺突を繰り出す。

 ネアはそれを見切り、首を傾けながら踏み込んだ。

 穂先が頬を掠めるも、致命傷には程遠い。


 ネアは強く踏み込んで、地面を切り裂きながら刀を振り上げた。

 斬撃は敵兵を縦断する。

 敵兵は白目を剥いて吐血し、その手から槍を放した。


 ネアは空いた片手で掴み、視線を巡らせる。

 周囲の敵兵の位置を確認すると、回転させるように一閃させた。


 魔術が付与された槍から、渦巻く炎の風が発せられて吹き荒れる。

 周りの敵兵は抵抗できずに燃やされていった。

 槍に触れていない者もまとめて切り刻まれていく。

 燃える肉塊が散乱する中、ネアは止まらずに武器を振るい続ける。


 彼女が暴れる一方、敵兵は徐々に逃げ始めていた。

 ネアの戦いぶりに恐怖したのだ。

 命惜しさに殺し合いを放棄している。


 ああいった連中は追い回して斬り殺したいが、ここは我慢だ。

 眼前の敵兵を斬り伏せるネアをひたすら見守る。


 それにしても、彼女の戦い方は急成長を遂げていた。

 少しでも分が悪いと思えば風魔術で後退する。

 相手の動きに惑わされず、常に有利な立ち回りを意識していた。


 乱戦を活かした動きだ。

 先ほどまでの突貫とはまるで違う。

 どうやら俺の立ち回りを模倣しているようだった。


(やるじゃないか)


 感心する俺はネアの腕を操作し、死角からの魔術を斬る。

 そこからさらに三人の首を刎ねた。

 倒れる死体を横目に、腕の主導権をネアに戻す。


「ありがとうございます」


『構わないさ』


 答えながら俺は確信する。

 妖刀憑きの聖女は、人斬りとして完成しつつあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ