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妖刀憑きの聖女 ~天下無双の剣士は復讐戦争に加担する~  作者: 結城 からく


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第51話 妖刀は禁忌の戦法を好む

 敵軍を目にしたアンデッド達が、一斉に走り出した。

 全身に矢が刺さり、四肢の一部が欠損した個体もいる。

 しかし、彼らは痛みを訴えることなく行動していた。


 基本的にアンデッドは、痛みを感じないのだ。

 使役する死霊術師の命令に従い、忠実に動く存在である。


 死体を操るという特徴のせいで倫理的に忌避されがちだが、俺は大好きな術だった。

 味方で使える者がいたら、いつも重用している。

 今回も何人か確保できてよかった。

 おかげで強靭な前衛を揃えることができた。


 ちなみに術者は後方に配置している。

 万が一、敵に倒されると大きな損害だ。

 死霊術師達には、安全圏から猛威を振るってもらおうと思う。


(こっちはこっちの仕事をやるかね――)


 俺はアンデッド達に紛れて疾走する。

 このまま前衛として暴れる予定だ。

 部下達は既に理解しているだろう。

 頃合いを見て仕掛けてくれるはずだ。


『やはり大胆ですね……』


「単純明快でいいだろう?」


 接近の最中、敵軍から矢が放たれた。

 浅い軌跡を描きながら、加速して降り注いでくる。


 しかし、俺とアンデッドを妨げることはない。

 そのまま一気に距離を詰めた俺達は、盾を構える敵軍に正面から衝突した。


「おら、どけよ!」


 怒鳴る俺は横一線に刀を振るう。

 盾ごと敵兵を切断し、死体を蹴り込んで陣形を崩した。

 さらに刀を往復させて、控えていた敵兵を解体する。

 押し退けるように奥へと突き進んでいく。

 奮闘するアンデッド達を横目に、俺も敵兵を屍に変えていった。


 そうして何十人と斬った頃だろうか。

 恐怖しながらも立ち向かってきた敵兵が、急に道を開けてきた。

 不審に思っていると、奥から咆哮が轟く。


 猛然と突進してくるのは、緑色の肌の大鬼――オーガだった。

 腰布を巻いて棍棒を握っており、首輪を装着していた。

 オーガは計五体で、さらにはゴブリンの集団も引き連れている。

 そんな魔物の群れは、敵兵の開けた道を進んできた。


(魔物を使役する首輪か……)


 俺はすぐさま察する。

 連中もなりふり構わなくなってきたらしい。

 独立派の戦略を危惧し、魔道具の開発を急いだのだろう。

 そうして出来上がったのが、使い捨ての魔物の戦力というわけだ。


「上等だ。やってやるよ」


 俺は刀の柄を握り直して笑う。

 手段を選ばないという方針は嫌いじゃない。

 俺達と同じだった。

 戦いが楽しくなるのは歓迎である。


 俺は嬉々としてオーガに跳びかかった。

 横殴りに迫る棍棒を、首を傾けてやり過ごす。

 風圧で前髪が乱れるも、傷を負うことはない。


 振り抜かれた棍棒は、軌道上の敵兵に炸裂した。

 人外の膂力は、敵兵をまとめて肉片に変える。


「ハハッ、大した一撃だ」


 俺は隙だらけなオーガの首を刎ねた。

 痙攣する巨躯が鮮血を噴出し、両手を振り乱しながら崩れ落ちる。

 驚愕する敵兵を殺しつつ、俺は速やかに前進した。

 そのまま他のオーガやゴブリンを始末しようとした時、ネアが唐突に発言する。


『首輪だけを破壊すれば、支配を解くことができます。暴走する魔物を利用できるのではないでしょうか』


「おお、いい案じゃないか!」


 俺は彼女の助言に従うことにした。

 魔物達の間を縫うように駆け抜けて、彼らの首輪だけを刀で破壊する。

 使役の呪縛から逃れた魔物達は、一斉に暴れ出した。

 先ほどのように俺を狙うのではなく、近くにいる敵兵を無差別に攻撃し始める。

 戦場は余計に混乱し、俺ばかりに構っていられなくなった。


(いいぞ。最高の状況だ)


 血を浴びながら俺は刀を振るい続ける。

 聖女様も、殺戮に慣れてきたようだ。

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