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妖刀憑きの聖女 ~天下無双の剣士は復讐戦争に加担する~  作者: 結城 からく


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第48話 妖刀は決戦に出発する

 数週間後。

 編成を終えた独立派の軍は、本拠地の街を発とうしていた。


 ここから五つの軍に分裂して、そのうち四つが扇状に拡散する。

 彼らには、残る新王派の領地を牽制してもらう。

 圧力をかけて引き付ける役目だ。


 残る一つの軍は本命であり、俺が指揮する部隊である。

 最短距離で進み、王都に乗り込んで新王派の息の根を止める。

 王城を乗っ取って首脳陣を残らず殺せば、連中も瓦解するはずだ。


 ただし、油断はできない。

 俺達が準備を進めていたのと同様に、新王派もこの数週間で変化していた。

 後継者争いが終わり、新王の妹が王位を獲得したのである。


 他の後継者は残らず暗殺された。

 露骨な傀儡政権だろう。

 強引な手段を使ってでも、舵取りをしなければいけないと判断したらしい。

 向こうの勢力も、どうやら役立たずばかりではないようだ。


 密偵によると、密かに禁術の実験を行っているそうだ。

 逆転に備えた策を練っているのだろう。

 いずれ独立派に痛打を叩き込む算段に違いない。

 やはりここで時を待たず、一気に攻め込むのが正解だった。


 個人的には内戦の激化を望んでいる。

 あと五年も待てば、向こうも戦力を揃えてくるだろう。

 しかし、それは契約者であるネアの意に沿うことではない。

 俺自身もそれまで殺人衝動を抑えられる自信がなかった。


 戦いなんて世界のどこにでもある。

 また次の敵を探せばいいだけだ。

 ここで新王派の再起を待ってやる必要はなかった。


「へぇ、いい景色じゃないか」


 馬車の上に座り込む俺は、街の正門付近を眺める。

 そこには独立派の軍が整列していた。

 大半がよその領地から借りた兵士や盗賊、傭兵といった類が混ざっている。

 もちろん盗賊頭のビルもいた。

 武装に統一感は無いが、やる気は十分である。


 彼らは妖刀に魅入られた。

 魔術的な力ではない。

 もはや呪いに近いものだ。


 俺と共に凄惨な歴史を刻んできたこの刀は、人々を戦いに駆り立てる力を秘める。

 決して強制するものではない。

 素質と気概を持つ者を後押しするだけだ。

 ただ、その後押しが重要なのである。


 彼らの目には、狂気が漲っていた。

 殺戮への期待だ。

 戦場では、死を恐れずに戦ってくれるだろう。

 素晴らしい部下達である。


「ウォルド様」


 下から声がした。

 馬車のそばにエドガーがいる。

 彼は直立不動でこちらを見上げていた。


「おお、どうした」


「くれぐれもネア様のことをよろしくお願い致します」


 エドガーは深々と頭を下げる。

 数週間前、彼とは殺し合った仲だが、あれからは随分と落ち着いていた。

 特に争ったということもない。

 彼の中で何か吹っ切れたのかもしれない。


 俺はエドガーに笑いかける。


「任せてくれよ、偉大な聖女にしてやる。そっちも留守番を頼むぜ」


「承知しました」


 エドガーは一礼してその場を立ち去った。

 直後、ネアが緊張の混じる声で呟く。


『いよいよですね……』


「ああ、楽しみだ」


 今回の遠征は、事実上の決戦となる。

 国内全土を巻き込む戦いだ。

 おそらく長期化しないだろう。

 滅多にない機会なので、しっかりと楽しまなければ。


『私は、今度こそ内戦を終わらせます』


「その意気だ。応援しているよ」


 俺は馬車の上を移動して、御者であるラモンに話しかけた。


「そろそろ出発しようぜ。忘れ物はないかい?」


「ああ、問題ない。しっかり積んである」


「なら大丈夫だな!」


 馬車は前進を始めた。

 俺は引き抜いた妖刀を掲げる。

 後ろにいる軍が、呼応して雄叫びを上げる。


 士気は十分だった。

 誰もが新王派との戦争を待ち望んでいる。

 これは最高の殺し合いができそうだ。

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