表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖刀憑きの聖女 ~天下無双の剣士は復讐戦争に加担する~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/71

第47話 妖刀は執事を諭す

 エドガーが短剣を構えて迫る。

 隙の少ない機敏な動作であった。

 一瞬でも気を抜けば、たちまち刺されるだろう。


(なんて爺さんだ……っ!)


 俺は刀を一閃して短剣を受け流す。

 間を置かずに、回し蹴りを放った。


 エドガーは紙一重で躱して、果敢に刺突を仕掛けてくる。

 俺はエドガーの手を掴んで逸らし、そのまま彼の手を握り潰そうとする。

 対するエドガーは器用に抜け出すと、するりと距離を取った。

 そこから再び短剣の斬撃を打ち込んでくる。


(やりやがるな。想像以上だ)


 エドガーは間違いなく武の達人であった。

 堅実ながらも大胆な攻め方で、仕掛けるべき瞬間を弁えている。

 年齢を感じさせない立ち回りだった。


 人斬りの俺を相手にしても、恐怖や焦りを感じていない。

 ただひたすらに最適な選択を繰り返して対抗してくる。

 やはり相当な実力者だった。

 なかなかに手強そうである。


 斬りかかってくるエドガーに対して、俺は防御と反撃を織り交ぜて対応していた。

 常人ならば何十回と殺せている頃だが、エドガーは掠り傷だけで済ませている。

 彼は異様に読みが鋭い。

 経験則と直感による回避が抜群であった。


 しかし、どんな人間にも弱点はある。

 どれだけ巧妙に隠そうと、いずれ露呈するものだ。


「……くっ、はぁ」


 苛烈な攻撃を連続させるエドガーだが、その呼吸に乱れが見え始めた。

 体力の限界が訪れたのだ。

 俺を相手に常に気を張りながら全力戦闘を行っているのだから当然である。

 どれだけの持久力があったとしても過酷だろう。

 そう長続きするものではない。


 一方でネアの身体も既に悲鳴を上げていた。

 強敵を相手に酷使しているせいで、限界が近かった。

 強烈な痛みも、俺が精神力で抑え込んでいるだけに過ぎない。

 このまま無理をし続ければ、先に肉体が壊れるだろう。

 双方にとって短期決戦が望ましかった。


 その時、エドガーの動きが粗くなった。

 僅ながらも明確な隙が生まれた。

 俺は刀で斬り上げて、短剣の刃を根本から切断する。

 そしてエドガーの首筋に刀の切っ先を添えた。

 後方で刃の落下する音が鳴り響く。


「動くなよ」


「…………」


 エドガーは殺気を霧散させる。

 素直に諦めたらしい。

 彼ほどの達人なら、埋めようのない力の差が分かるのだろう。

 いや、おそらく戦う前から理解していたに違いない。

 それでもエドガーは挑んできたのだ。


 俺はそのままの姿勢で彼に語る。


「確かに今の情勢なら五年は平和だろう。しかし、それで満足なのか? 五年後、持ち直した新王派は独立派を滅ぼしに来るぜ。老いぼれのあんたは五年後に生きちゃいないかもしれないが、これは大事なことだ


「しかし……」


「あんたはネアの心配をしてばかりで、国の未来を見据えていない。本当に平和を目指すなら、ここで畳みかけるしかない」


 今こそ攻める時なのだ。

 またとない好機であり、逃せばまた泥沼の殺し合いの再開であった。

 内戦を終結に導くためには、攻勢に向けて動かなくてはならない。


「何よりネアは、この国を変えようとしている。あんたは彼女の意志を無視するというのだな?」


「……っ」


 エドガーは歯噛みする。

 何か言いたげだが、こちらを向かずに考え込んでいる。

 その手から短剣が落とされた。

 地面にぶつかって甲高い音を鳴らす。


 静かに立ち上がったエドガーは踵を返した。

 彼はこちらに背中を向けたまま発言する。


「――申し訳ございません。少し、頭を冷やしてきます」


「気にするな。誰にだってあることさ」


 俺は気楽な調子で返事をした。

 エドガーは歩いて路地裏を去っていく。

 それを見届けた俺は、抑え込んでいたネアを解放した。


「終わったぜ」


『エドガーと何を話したのですか?』


 ネアがすぐに質問をしてきた。

 気になるのは当然だろう。

 しかし、本当のことを言えばややこしくなるのは確実だ。


 少し考えた末、俺は苦笑交じりに答える。


「大したことじゃない。世話焼き爺さんの説教を受けただけだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ