第45話 妖刀は呼び出しを受ける
本拠地に帰還した俺達を真っ先に出迎えたのは、執事のエドガーだった。
彼は優雅な所作の礼を披露してくれた。
遅れてやって来た奴隷商のラモンは、大軍を見て驚愕していた
単独で行動を始めたことは知っているはずなので、そこを含めて仰天しているのだと思う。
普通ならどこかで戦死するような判断だ。
生還するどころか、これだけの大戦力を引っ提げて帰ってきたのだから、ラモンの反応は極めて正常だろう。
そんな引き連れてきた軍は、街の外の空き地で暮らしてもらうことにした。
これだけの大所帯だと、街の中で住んでもらう場所がない。
余計な混乱を生まないためにもそれが一番だった。
当の兵士達に不満はなさそうだ。
道中は常に戦闘の繰り返しで、休む間もなく殺し会う日々が続いていた。
劣悪な環境に比べれば、ここは天国のようなものである。
むしろ喜んでいる始末だった。
街の人々も一時は騒然としていたが、聖女の連れる兵士だと周知されると、途端に歓迎する雰囲気に変わった。
早くもあちこちで宴が開かれている。
内戦が優勢になったことは、一般人にも知られているようだ。
都合のよい情報であるため大々的に宣伝でもしているのだろう。
勝利が見えてきた人々は明るい様子だった。
一方で俺は、ビルに命令して兵士達が悪事や問題を起こさないようにする。
集めてきた連中は、盗賊や捕虜といった面々だ。
凄惨な戦いの連続で精神に異常を来たしており、魔が差してしまうかもしれない。
ここで面倒なことになっても困る。
ビルに監視させておけば問題ないはずだ。
彼は兵士達にも一目置かれており、実力も申し分ない。
ただの兵士が束になろうと、ビルには敵わない。
非常に頼りになる男だ。
その日は大人しく屋敷に帰ってゆっくりと休んだ。
翌日、清潔な服に着替えたネアは、屋敷で食事をとっていた。
閑静な食堂にて、一人きりで淡々と進めている。
その途中、食堂の扉が開かれた。
現れたのはエドガーだ。
彼はネアのそばにやってくる。
「失礼いたします」
「どうしましたか?」
「ウォルド様にお伝えしたいことがあって参りました」
意外な返答だった。
てっきりネアへの報告で来たのかと思った。
俺は主導権を交代すると、フォークで刺した肉を頬張りながら尋ねる。
「何か用かい」
「お食事の後、少しお話できますでしょうか」
丁寧な口調のエドガーだが、有無を言わせない雰囲気を発していた。
彼の目は、冷え冷えとした色を見せている。
小心者なら睨まれただけで卒倒しそうな圧力だ。
肉を咀嚼した俺は、フォークを次の一切れを口に運びながら答える。
「ああ、構わないぜ」
「ありがとうございます。それでは後ほどよろしくお願い致します」
一礼したエドガーは静かに退散した。
気配はすぐに消失する。
また別の仕事をしに行ったのだろう。
彼も多忙なのだ。
一方、ネアが疑問を呈する。
『エドガーは何を話したいのでしょう』
「さぞ大切なことだろうさ。楽しみにしておこう」
只ならぬ様子で言ってきたのだから、無視するわけにはいかない。
穏やかな内容ではないのだろうが、今回は素直に従おうと思う。




