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妖刀憑きの聖女 ~天下無双の剣士は復讐戦争に加担する~  作者: 結城 からく


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第44話 妖刀は血に浸って暴走する

 ビルと再会した俺は経過報告を聞く。

 盗賊は一部が死んだそうだが、その数倍の数の兵士を殺害したらしい。

 頃合いを見て森に逃げ込んだ彼らは、大半が生き延びていた。

 戦果としては上々と言えよう。


 合流した俺達はその足で別の領地へと赴き、同じ要領で領主を脅迫した。

 そして独立派への参入を約束させる。

 ここで若干の戦力不足を感じたので、その街にいた一部の兵士を徴集して手下にした。


 当然、兵士達から抗議が上がった。

 話し合いも面倒だったので見せしめに数人を殺したところ、彼らは大人しく従ってくれた。

 こういった場合は、下手に交渉するより暴力で言いなりにする方が早い。

 どうせ三日後には生きているか分からないような連中だ。

 多少ぞんざいに扱ったところで問題はない。


 その後、俺達は数十日をかけて各地の領主を脅し周り、次々と独立派に加入させていった。

 さらに本拠地の街から使者を送らせて、諸々の契約も結ばせておく。

 これで名実ともに独立派の一員となった。

 契約には魔術的な力が働いており、不用意に破ることはできない。

 本来は奴隷契約に使われるそうだが、まさにちょうどよかった。


 もちろん勧誘の最中にも戦闘は多発する。

 それを俺達は切り抜けてきた。

 屍の山を踏み越えて、生き残った兵士を捕虜にして戦力をさらに増大する。


 そうして内乱の戦線を大幅に押し込んだところで、ようやく帰還を開始した。

 本拠地の街が見えてきたところで現在に至る。


(新王派は焦っているだろうな。ここからどう動くかね)


 揺れる馬車の中、一人で寝転んだ俺は微笑する。


 向こうの戦力は大量に奪い取った。

 噂によると、自主的に独立派への加入を表明した領主もいるらしい。

 悪くない流れである。

 聖女の味方になる方が得だと思わせたということだ。


 俺達は単独で新王派の領土に乗り込んで、殺戮の限りを尽くしながら戦力を確保した。

 そこから被害を拡大しつつ、戦いを無敗で繰り返している。

 敵からすれば天敵そのものだろう。

 恐ろしくないはずがない。


 俺は馬車の隙間から外を見やる。

 周囲には大量の兵士や盗賊、奴隷といった面々がいた。

 身分も種族も統一感が無い。


 いずれも此度の遠征で手に入れた追加戦力達だ。

 少なく見積もっても一万は下るまい。

 各地の戦いで消耗しながらこの規模である。


 当初は無秩序でまともな戦闘行動も取れなかった。

 ところが俺が最前線で相手を殺し回る姿を見せていると、血に酔って積極的な攻撃を見せてくれるようになった。

 おそらく感覚が麻痺してしまったのだろう。

 或いは妖刀の狂気にあてられたのかもしれない。

 昔からそういった現象が起きていた。

 俺と共に歩んできたこの刀は、他者すらも血の道に招き入れるのだ。


 特にビルを始めとする盗賊達の奮闘は素晴らしかった。

 どのような状況だろうと果敢に攻め込んでくれるのだ。

 非常に頼りになる仲間達である。


 これから俺達は本拠地に帰還し、少々の休息を挟んでから再び出軍する予定だ。

 今度は王都まで乗り込むつもりであった。

 道中の領土から食糧と戦力を提供してもらいながら進み、数に任せた戦法で新王派を捻じ伏せる。


 まずは重役を始末する。

 そして王位後継者を捕縛して、大衆の面前で処刑しよう。

 それこそ闘技場で賭け試合でも催せばいい。

 人々は嬉々として飛びつくだろう。

 ネアからすれば、ちょっとした意趣返しにもなる。


 そういったことを考えていると、当の彼女は遠慮がちに言う。


『……あまり残酷な仕打ちはしないでください』


「なぜだ。それくらいする権利はあると思うぜ」


『だとしても、惨たらしいことはしたくありません。それはもはや、正義とは言えないでしょう』


 ネアは苦々しい口調で述べる。

 この期に及んで正義とは、果たして彼女は正気なのだろうか。

 疑問に思ったものの、それは口に出さないでおく。


「まあ、あんたが言うなら従うまでさ。俺も悪趣味な処刑にそれほど興味はない」


 別にネアが何を考えていようと関係ない。

 利害が一致している限りは、互いの力を使うまでだ。

 正義を自称するなら好きにすればいい。

 破綻するその瞬間を、楽しみにしていようじゃないか。

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