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妖刀憑きの聖女 ~天下無双の剣士は復讐戦争に加担する~  作者: 結城 からく


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第40話 妖刀は屋敷を訪問する

「……ったく、どろどろで気持ち悪ぃな」


 小声で愚痴を吐きつつ、俺は屋敷の敷地を闊歩する。

 軍服は返り血でずぶ濡れだった。

 頭から足先まで血で染まっており、ぬめりのある不快感を主張している。

 綺麗に整えられた芝生は、俺が歩くと赤黒くなっていった。

 俺は抜き身の刀を携えて進んでいく。


 周囲には、解体された兵士達が散乱していた。

 立ちはだかってきた彼らを始末したのは、他ならぬ俺だ。

 数が数なだけに、たくさん楽しむことができた。

 大量の魂を喰らった妖刀も、心なしか喜んでいる。


 ネアは感心したように呟く。


『この人数差でも負傷しないのですね』


「慣れたやり方だからな。要領さえ掴めれば、誰だって真似できるさ」


『それは無理だと思いますが……』


 会話をしているうちに、屋敷の入口に辿り着く。

 さっそく扉に手をかけるも、開かない。

 何かが引っかかっているようだった。

 施錠した上で、家具でも置いて塞いでいるのだろう。


「面倒臭い真似をしやがる」


 俺は刀を往復させる。

 扉とその奥に積まれていた家具をまとめて切り崩した。

 割れた扉の隙間から室内へと踏み込む。


 そこには、弓矢を構えた兵士達が整列していた。

 彼らの狙いは俺に集中している。


「撃てェッ!!」


 号令と共に一斉射撃が行われた。

 数十本の矢が同時に迫る。


「おっと、危ねぇな」


 命中する分を見極めて、それだけを刀で弾く。

 数え切れないほどに繰り返してきた芸当だ。

 たとえ両目を潰されようと同じ精度で再現ができる。


 一方で兵士達は大いにざわめいていた。

 彼らは慌てて第二射を用意しようとしている。


 無論、そのような猶予を与えるつもりはない。

 俺は疾走して、居並ぶ兵士達を次々と切り崩していった。

 飛んでくる矢や魔術は躱し、或いは近くの兵士を盾にやり過ごす。


 味方を殺した者はますます動揺して、攻撃を躊躇する。

 そこを突くように攻め、反撃の隙を与えずに斬り殺した。

 やがて玄関には死体だけが残される。

 刀を下ろした俺は、意識を集中させて屋敷内の気配を探る。


「ふむ……」


 あちこちを兵士達が動いていた。

 一カ所に固まって怯えているのは使用人だろう。

 隠し通路を音も無く動くのは、密偵や暗殺者の類に違いない。

 隙あらば俺のことを殺そうと企んでいるはずだ。


 領主の位置は不明だった。

 ここからではまだ分からない。

 単純に遠すぎるのだ。

 進んでいけば、いずれ察知できるだろう。


 状況把握を終えた俺は、屋敷の奥へ進もうとして足を止める。

 そしてネアに提案した。


「そうだ。ここから先は、自分で動いてみるといい。鍛練にちょうどいいだろう」


『私は構いませんが……いいのですか?』


 ネアは言葉を濁して確認する。

 殺戮の機会を前に、俺が静観するのを不思議に感じているのだろう。

 自分の出番はないと考えていたのだと思う。


「遠慮しなくていい。多少の補助はするから、大人数との戦いに慣れてくれ」


『……分かりました』


 頷いたネアは歩き始める。

 その直後、靴底の血で滑りそうになるも、転倒だけは免れた。

 彼女は気まずそうに歩を進める。


 可憐な聖女様は、まだまだ危うい所が多い。

 さりげなく助けてやった方がよさそうだ。

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