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妖刀憑きの聖女 ~天下無双の剣士は復讐戦争に加担する~  作者: 結城 からく


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第37話 妖刀は次なる標的を定める

 翌日の昼、俺達は移動を開始した。

 背後に連れるのは盗賊達だ。

 親玉であるビルは、俺のそばに控えている。


 行き先は森の向こうにある街であった。

 このまま侵攻し、街の中に飛び込んで領主を脅迫するつもりだ。

 そこで独立派に寝返るように勧告するのである。

 きっと命惜しさに従ってくれるだろう。


 近くを歩くビルが、愛用の戦鎚を肩に担いで話しかけてくる。


「兄貴、本当にこのまま攻め込むのかい?」


「もちろんさ! 派手にかまそうぜ」


「……昔を思い出すなぁ。あの時の兄貴のままだ」


 ビルは微妙な表情で遠くを眺める。

 呆れているような、懐かしんでいるようなよく分からない顔だった。

 当時はビルを振り回した記憶がある。

 その頃に比べると、逞しくなったものだ。

 こうしてまた共に戦えることを嬉しく思う。


「そういえば、兄貴。聖女様の自我は残っているのかい?」


「ああ、しっかり残っている。この会話も聞いているだろうさ」


「なるほど。先代の担い手とは違うわけか」


 ビルは納得した顔になった。

 一方で黙っていたネアが疑問を訴えてきた。


『先代の担い手?』


「前回は色々とあってな。大した問題じゃないが、担い手との相性が悪かったんだ」


 一つ前の担い手は、優れた戦闘能力を有していた。

 しかし性格面に難があり、さらには正気を失いかけていた。

 俺の言うことを聞かず、命を捨てるような行動ばかりをとるのだ。

 やむを得ず、俺が主導権を握り続けることが多かった。

 その状態でも無理やり表に出ようとすることがあり、意図せず味方を殺すことが頻発してしまった。


 あれはあれで悪くなかったが、傍若無人にもほどがある。

 当時を知るビルからすれば、聖女の大人しさに驚くのも無理はない。


「しかし、聖女様の見た目で兄貴の言動だと違和感がすげぇな……」


「ん? 何か文句でもあるのかよ」


「い、いやいやいやいや! 似合っているぜ本当にっ! ぴったりすぎて驚いているくらいだ! あっ、そろそろ街が見えてきたようだぜ!」


 ビルは誤魔化すように指を差した。

 前方では、森が終わって草原が続いている。

 その先に街が見えた。

 外壁に囲われて内部は窺えないが、なかなかの規模である。


 あそこの領主は、新王派の中でもそれなりの有力者と聞いている。

 財力と影響力は大きいようだ。

 そんな存在を味方に置けるのは強い。

 さっさと裏切るように仕向けなければ。


「じゃあ、手筈通りに頼むぜ。頃合いを見て撤退してもいいが、そのまま逃げるなよ?」


「わ、分かってるよ。無断で兄貴から逃げたら、一体どんな目に遭うか……」


 怯えるビルを置いて、俺は一足先に走りだした。

 ここから街の反対側まで移動し、可能なら街に潜入する。

 あとはビル率いる盗賊団が襲撃を始めたのを見計らって、領主を狙う段取りだった。


 こういう場合、単独行動の方が楽だ。

 盗賊達が攪乱してくれることを考えると、とても行動しやすい。

 実に効率的な戦法と言えよう。


「さて、ちょいと説得するかね」


『……くれぐれも加減を忘れないでください』


「分かっているよ。俺は優しいからな」


 聖女の忠告に笑って答える。

 我ながら話し合いは得意分野なのだ。

 真摯に向き合えば、きっと相手も頷いてくれるだろう。

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