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妖刀憑きの聖女 ~天下無双の剣士は復讐戦争に加担する~  作者: 結城 からく


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第33話 妖刀は盗賊の拠点に赴く

 俺は森の中を移動していく。

 先導するのは数人の盗賊だ。

 先ほどの戦闘で生き延びた者達である。


 どいつも重傷を負って死にかけだった。

 死体の衣服で傷口を縛って応急処置を施しているが、多量出血でふらつく者も少なくない。

 俺からの粛清を恐れて、懸命に歩いているようだった。


 最悪、道中で何人か死んでも問題なかった。

 案内役は一人で十分だ。

 一人くらいなら、到着までは持つだろう。


 そんなことを考えながら歩き続ける。

 途中、ネアが疑問を挙げた。


『今更ですが、なぜ盗賊の拠点に向かっているのですか?』


「すぐに分かるさ。楽しみにしておくといい」


 俺が答えると、盗賊の一人がこちらを振り返った。


「姐さん、誰と話しているんだ……?」


「森の妖精だよ。心が清らかだから、妖精が見えるのさ」


「は、はぁ……」


 その盗賊は困惑したような相槌を打つ。

 こちらの冗談に、笑っていいものか迷っているらしい。

 場には何とも微妙な空気が流れていた。


 そんな中、腰の剣に手を伸ばす者がいた。

 俺は背後から刀を突き付ける。


「妙なことを考えるなよ。裏切れば首を斬る」


「分かっている! だから脅すのはやめてくれっ」


 その盗賊は慌てたように両手を上げた。

 どさくさに紛れて仕掛けるつもりだったのだろう。

 気持ちは分かるが無駄だ。


 俺は殺気に敏感である。

 相手の攻撃を事前に察知できるため、不意打ちはまず通用しない。

 たとえ気付かなかったとしても、攻撃を受ける前に反応できる。


「お前らも分かっているな?」


 俺は他の盗賊にも問いかける。

 返事はなく、彼らはただ従順に歩き続けていた。

 ふとした発言で、俺に目を付けられたくないのだ。

 そんな心情が窺えた。


 張り詰めた雰囲気で移動すること暫し。

 獣道の先に、古びた家屋群が見えてきた。

 森の奥深くにこんな場所があるとは、元は隠れ村か何かだったのか。

 まるで廃墟のような風景だが、遠目にも生活感が伝わってくる。


 そして多数の気配を感じた。

 目視による確認はできないものの、盗賊達が潜んでいるようだ。

 結局、盗賊達は道中で脱落しなかった。

 誰もが気合で生き残ってみせた。

 そのうち一人が家屋群を指差す。


「見えてきたぜ……あれが俺達の拠点だ」


「人数は?」


「だいたい五十人くらいだろう。あんたの刀で減ったから、今はそれより少ないと思う」


 俺はその答えを聞いて感心する。

 このような場所で五十人もの盗賊が生活しているとは面白い。

 基本的には狩りで食料を調達しているのだろう。

 あとは森を通った者を襲って略奪を行っているに違いない。


「親玉は誰だ」


「……まさか、それを知らないで攻撃してきたのか?」


 盗賊が怪訝な様子で問い返してきた。

 俺はその頬に刀を添える。

 一筋の血が切っ先を伝い落ちた。


「質問しているのは俺だ。耳を削ぎ落とされたいのなら、好き勝手に喋るといい」


「ひ、ひいっ!」


 盗賊は顔を青くして飛び退く。

 その間に別の盗賊が答えを述べた。


「……俺達の親分は"炎鎚"のビルだ。名前くらいは知っているだろう」


 当たり前のように言われても、俺はこの時代の人間ではない。

 心当たりがなかったので、休息するネアに尋ねた。


「憶えはあるかい?」


『はい。この辺りで有名な盗賊団の頭領です。多額の懸賞金がかけられていますが、未だに掴まっていない大悪党です』


「なるほどなぁ……」


 俺は刀を収めながら思案する。

 二つ名が付くほどの盗賊だ。

 さぞ期待できそうだった。


「まあ、相手が誰だろうと構わないさ。このまま直行して――」


 指示を出そうとしたその時、家屋群から無数の矢が飛んできた。

 山なりの射撃は、明らかにこちらを狙っている。

 盗賊の一人が悲鳴を上げた。


「畜生! 親分め、俺達を見切りやがった!」


 俺は盗賊達の悲鳴や怒声を聞きながら微笑する。

 相手もなかなか容赦がない。

 穏便に事を進めるつもりだったが仕方ない。

 少し暴れさせてもらおうと思う。

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