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妖刀憑きの聖女 ~天下無双の剣士は復讐戦争に加担する~  作者: 結城 からく


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第23話 妖刀は領主の洗礼を受ける

 二日後の昼頃、目的の都市が見えてきた。

 都市の外に軍の姿は見当たらない。

 草原で迎え討つつもりはないらしい。


(やはり籠城戦か)


 ここの領主は、その戦法で常勝を掴んできた。

 鉄壁の防御で持久戦に持ち込んで、相手を消耗させる。

 そこに突如として大軍を仕掛けて薙ぎ倒すのだ。


 単純明快だが、これと言った隙がない。

 戦法自体を崩すのは困難だろう。

 都市内に引きこもられると、こちらのやれることは少なくなる。


 何より領主の実力が飛び抜けていた。

 並の兵士ではとても敵わない。

 彼に突撃されると、こちらの軍は困ったことになる。


 今までの内戦において、独立派はこの領土を迂回する形で進撃してきた。

 幸いにも領主は遠征は行わない主義である。

 彼は自らの土地さえ守れればそれでいいのだ。

 故に独立派も、なるべく触れないようにしてきた。


 とは言え、その領地が位置的に邪魔なのは確かだった。

 不用意に手を出さなければ被害も受けないが、いつまでも放置はできない。

 独立派は、この内戦を制するつもりだった。

 窮地まで追いやられたが、ようやく再起の兆しが見えたのだ。

 そこをたった一人の領主に妨害されるわけにはいかない。


 領主の死は、双方に大きな影響を及ぼすだろう。

 独立派には希望の流れを作り、新王派には絶望を与える。

 ここで勝利すれば、戦況はさらに優位なものへと傾くのだ。


(だから絶対に殺して勝つ)


 馬車の中で意気込んだ俺は、装備の点検を進めていく。

 元が純白だった軍服は、今や赤黒く染まっていた。

 そのすべてが返り血である。

 洗っても落とせないほどの汚れとなっていた。

 軍服については、各所のベルトの緩みを締めておく。

 ブーツは底が擦り減っているが、気にするほどではない。


 そして刀はいつも通りだった。

 数え切れないほどの人間を斬り、その魂を喰らってきた得物である。

 古びた感じは否めないも、どれだけ乱暴に扱おうと折れることはない。

 どのようなものでも俺と共に斬ってきた。


(今回は何人斬れるかね……)


 近付く戦場を想っていると、馬車の外が騒然となる。

 何やら兵士が喚いているらしい。

 かなり動揺しているようだった。


 不審に思った俺は、外に出る。

 前方の都市までまだ距離があった。


 先ほどまで閉ざされていた門が、開いている。

 そこから現れたのは、鎧を纏った大男だ。

 オーガにも勝るほどの体躯で、およそ人間の領域を超えている。


「……あれが領主か」


 事前に聞いていた身体的特徴と一致している。

 間違いないだろう。


 領主の背後には荷馬車があった。

 目を凝らすと、球状の岩が山積みになっているのが分かった。


 領主はその一つを掴み、大きく振りかぶる。

 獣のような雄叫びを上げたのちに、岩を投擲した。


 描かれる浅い放物線。

 高速で空を飛ぶ岩は、俺達の軍へと急速に迫りつつあった。

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