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妖刀憑きの聖女 ~天下無双の剣士は復讐戦争に加担する~  作者: 結城 からく


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第22話 妖刀は聖女に託す

 数日後、俺達は新王派の領地に踏み込んだ。

 関所を蹂躙し、大した被害もなく進む。

 そこからさらに数日の移動を経ると、領地の主要都市が見えてきた。


 あの地に噂の領主がいるらしい。

 長きに渡って独立派の猛攻を食い止めてきた強者だ。

 道中でこれといった妨害は無かった。

 街に引きこもり、防衛に徹するつもりらしい。

 領主の常套手段だと聞いている。


 ただし、今回ばかりはそう上手くはいかせない。

 ここで俺が殺す。

 我ながら数え切れないほどの人間を殺してきた。


 標的として見定めた相手を逃したことなど、非常に稀なのだ。

 第三者に先を越されたり、病で勝手に死なれたくらいだと思う。

 基本的には有言実行で抹殺していた。

 今回もそのつもりである。


 現代の戦いを何度か経験したが、兵士の質はいまいちだ。

 最悪とは言わない。

 もっと酷い時代もあった。


 しかし、絶妙に物足りなさを感じている。

 十数年の内戦で、俺の求めるような人間が死んでしまったらしい。

 あと五年ほど早くネアと出会うことができれば、充実した毎日が送れたかもしれない。

 悔やんでも仕方ないとは言え、残念に思わざるを得なかった。

 領主が期待外れでないことを切に祈っている。


(まったく、勘弁してほしいぜ)


 馬車の中で、俺はため息を吐く。

 効率よく殺せるのは喜ばしいことだが、刺激が少ないのは考えものだった。

 命の危機を感じるほどの戦いが欲しい。

 ネアの身体を使う今、全盛期とは比べ物にならないほど弱体化している。

 それなりの相手でも楽しめるはずだった。


 刀を抜き差しして暇を潰していると、御者が振り返ってこちらを見た。

 青い顔をしているのは奴隷商ことラモンだ。

 彼は呻くようにして苦情を述べる。


「旦那、少し殺気を抑えてくれねぇか。恐ろしくて仕方ないんだ」


「すまないね。無意識だった」


 俺は素直に謝る。

 ラモンは何かと勘が鋭い。

 俺の動きを鋭敏に察知していた。

 生存能力に長けた才能であるが、こういった場面においては大変だ。

 常に俺のことを気にしてしまうため、精神は休まらないだろう。


 ラモンには、侵攻した街で奴隷を確保してもらう予定だった。

 大切な戦力兼労働力を持ち帰るのが彼の役目である。

 ラモンは専門の知識を持つ。

 奴隷の入手は兵士に命じてもこなせるが、彼がいると捗るだろう。


 俺は刀を置きながら笑う。


「安心しろよ。お前を斬るつもりはない」


「そう言われてもなぁ……」


 ラモンは困ったように唸る。

 あの様子だと、ずっと警戒したままだろう。

 気苦労が絶えない男である。


『ラモンは貴方に怯えているようですね』


「当然だろう。こっちは人斬りだぜ? 全幅の信頼を置く方が間違っている」


『ああいった反応をされて傷付かないのですか?』


「はは、何を言うかと思えば。わざわざ訊くまでもないだろうさ」


 俺は腹を抱えて笑った。

 他者から怯えられたくないのなら、人斬りなんてできない。

 愚問にもほどがあるだろう。


「俺は嫌われやすい性質でね。聖女様の助力を期待するよ。円滑な人間関係は、戦いの勝利を招くんだ」


『……善処します』


 ネアは不承不承といった調子で応じた。

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