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妖刀憑きの聖女 ~天下無双の剣士は復讐戦争に加担する~  作者: 結城 からく


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第20話 妖刀は国を掻き乱す

 屋敷に向かって歩いていると、そばに希薄な気配が出現した。

 目を向けなくとも誰か分かる。

 独立派の人間でこれだけ優れた隠密能力を持つのは、エドガーだけだ。


 これだけの技能を持ちながら、全盛期よりも衰えているらしい。

 なんとも素晴らしい人材であった。

 あと二十年ほど若ければ、果たし合いを申し込んだところだろう。

 彼にとっては幸運だったかもしれない。


 そんなエドガーが、歩き続ける俺に話しかけてくる。


「ウォルド様。例のご命令について、ご報告に上がりました」


「早いな。周知できそうか?」


「はい。すぐに他国の耳にも入るでしょう」


 エドガーは涼しい顔で頷いた。

 俺は笑みを深めて、彼に指示を送る。


「そいつはいい。実行してくれ」


「かしこまりました」


 エドガーは再び気配を消して立ち去った。

 細かな命令をせずとも、仕事を完璧にこなしてくれる。

 紛れもなく最高の部下だった。

 あれだけの逸材は珍しい。

 素直に感心していると、ネアが話しかけてきた。


『……本当にやるのですね』


「当たり前だろう。連中の意見なんざ必要ねぇさ。勝手にやっちまえばいい」


 俺は鼻で笑いながら言う。


 ネアが言っているのは、俺がエドガーに送った命令である。

 すなわち、この領土の独立宣言だった。

 今までは王国の中にある領土だった。

 そこから抜け出て、一つの国としてやっていくことを表明するのだ。


 今までネア達が主導で進めてきたのは、王国から独立の許可を得るための戦いであった。

 その言い分が通らずに内戦にまで発展した。

 ここまでの状況になった以上、向こうも絶対に首を縦に振らないだろう。

 互いに後に引けない状態になっているのは間違いない。


 だからこそ、この局面で独立宣言をする。

 独立派は優位に立っており、その空気を後押しするのが最大の目的だった。


 戦争とは、流れを制した者が勝つ。

 今の流れは独立派にとって悪くなかった。

 ここは逃がさずに加速させるべきだろう。


 建国と言っても、まだ具体的なことは決まっていない。

 しかし、こういう時は、真っ先に宣言してしまうのが大事だ。

 中身なんてその後に考えればいい。

 そこは俺ではなく、もっと賢い人間に丸投げすればいい。

 何事も適材適所が一番である。


『貴方は、ここからどうしていくつもりなのですか?』


「新王派を叩き潰して国を乗っ取る。首都をこの領に定めて、無理やり奪い取る形だな」


『……可能と思っているのですか?』


「当然さ。不可能なことに時間を費やすほど、俺は暇じゃないんだ」


 俺は刀の鍔を小突きながら答える。

 金属の硬い感触が心地よい。

 どれほど携えてきたか分からない。

 刀そのものに愛着などなかったが、もはや俺自身と言っても過言ではなかった。


「国崩しや革命は何度も主導してきた。今回だってその一つに過ぎない。すぐに成果を出してやるよ」


『自慢ですか』


「ああ、特大の自慢だ。格好いいだろう」


 俺は笑いながら言う。

 少々の沈黙を挟んで、ネアは冷徹に述べる。


『野蛮ですね。軽蔑します』


「ハハハ、最高の褒め言葉だ」


 聖女様はどこまでも真面目らしい。

 俺にこれだけ物を言える人間も珍しかった。

 なんとも面白い担い手である。

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