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妖刀憑きの聖女 ~天下無双の剣士は復讐戦争に加担する~  作者: 結城 からく


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第18話 妖刀は次なる戦いを熱望する

 砦での戦いから二週間が経過した。

 独立派の状況は、かなり変化している。


 各地では、聖女の復活を支持する声が続々と上がっていた。

 さらには新王派への反撃も実施されている。

 結果、独立派の領地にあった戦線を押し戻して、窮地を脱することに成功した。

 士気の向上が決め手だろう。


 降伏を視野に入れていた者達も再び奮起し、聖女のために戦うと決心していた。

 一部の傭兵は、ここぞとばかりに自らを売り込んでくる。

 独立派はそれを受け入れて、限定的な軍人として採用した。


 現在、新規戦力は貴重だ。

 多少の財を削ってでも確保すべき部分であった。

 素性も何も関係ない。

 この気勢に乗ることが重要だった。

 細かな問題は後で解決すればいい。


 一方、新王派は苦難の連発だった。

 多大なる犠牲を払いながらも撤退した彼らは、それぞれの領地に帰還している。

 民衆からの不満を抑えつつ、次の戦いに向けて準備を進めているそうだが、かなり難航しているらしい。

 劣勢の状態でそれを成し遂げるのは至難の業だろう。


 民衆だけでなく、兵の間でも不平不満が蓄積していると聞く。

 見切りをつけて独立派へ離反する者もいるそうだ。

 こちらの戦力増大の一因となっている。


 最も不味いのが、新王の死だろう。

 上に立つ者が不在という状況が、士気の低迷と陣営全体の混乱を招いていた。

 さらには新王の母や兄妹によって後継者争いも勃発している。

 それぞれの背後に国の有力者がおり、言ってしまえば傀儡戦争だ。


 独立派との争いがあるというのに、呑気な連中だと思う。

 この期に及んで権力に固執し、政治ばかりに気を取られて、土台から自壊しかけていた。

 憐れだが、情けをかけるつもりはない。

 両陣営の状況は、いつの間にか覆っていた。


(こいつは楽勝かね)


 屋敷の一室にて、俺はソファに寝転がって思案する。

 最近はずっとこんな調子だった。

 報告を聞きながら、脳内の構図を書き加えていく日々である。


 もちろん怠惰を貪るばかりではない。

 具体的には、兵士達に剣術を指導したりしていた。


 ただし、俺の戦い方は一般的ではない。

 模倣したところで早死にする。

 俺の場合、極限まで洗練したからこそ成立しているだけだった。

 剣術自体、鎧を着た人間に不向きな系統であり、そもそも俺が指導という行為を得意としていない。


 そういった事情を抱えながらも、使えそうな技術は伝授していた。

 俺には様々な流派の使い手を殺し合ってきた経験がある。

 これで少しでも兵士の生存率が上がれば儲けものだ。


 新王派は、膨大な戦力を有している。

 未だに数の上では大敗していた。

 その差を埋めて凌駕するなら、兵の質を改善していくしかない。


『律儀な性格をしていますね。意外です』


 今後の計画を思い描いていると、唐突にネアが発言した。

 彼女は意外そうな様子である。


 苦笑いした俺は、髪を掻きながら彼女に尋ねた。


「そんなに意外かい」


『ええ。粗暴な面ばかり見てきましたので』


「ハハッ、はっきり言いやがる」


 俺は顔を手で押さえながら笑った。

 なんとも遠慮のない意見だった。

 そういうところがネアらしい。

 落ち着いたところで俺は呟く。


「戦いをより楽しむための準備だ。そこを怠るほど無粋じゃないってことさ」


 独立派には頑張ってもらわなくてはならない。

 俺はこの内戦を、さらに過激に盛り立てていくつもりなのだから。

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