表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

~第二の錦織圭たちに贈る言葉(22)~  『ネットダッシュの第一ボレーの成否はインパクトポイントの判断の正確さで決まる』

作者: 目賀見勝利

           〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(22)〜

  『ネットダッシュの第一ボレーの成否はインパクトポイントの判断の正確さで決まる』


1. まえがき;

2018年ATPファイナルズ・ロンドン大会のラウンドロビンで錦織選手はケビン・アンダーソン選手に0−6、1−6で敗れた。敗因はネットへ出ての第一ボレーのミス、ストローク戦での忍耐不足(気力のレベル差、拍子のズレによる強打ストロークミス)、第一サーブの成功率が50%以下、などが挙げられる。まあ、錦織選手の悪い点がすべて出た試合であった。その悪い点を引きだしたのがアンダーソン選手の優れたコートカバリング能力と気力を使った基本に忠実なストローク力であった。

錦織選手のストロークは基本に忠実な場合もあるが、臍の高さのボールでも足を延ばしてインパクトすることが時々あり、威力が弱くなり、ミスショットに繋がっている。

ストローク戦で勝てないと判断した錦織選手はネットプレーを試みたが、出球アクローチショットは良かったのであるが第一ボレーが上手ではなかった。当然エースショットを決めなければならないアンダーソン選手からの緩い浮き返球をバックアウトやネットし、又、ローボレーのドロップショットはサービスコートの中央よりネット側に落とさなければならないのに、サービスライン近辺に落ちて、アンダーソン選手に容易に拾われていた。

ラウンドロビンのフェデラー戦・ティーム戦でもネットダッシュを試みては第一サーブのミスショットを繰り返していた。

私は何故に錦織選手は第一ボレーが上手くないのかを確かめるべく、しっかり3人との対戦を観察して、その理由が判った。ネットダッシュ動作の基本が出来ていないのである。胸の高さより高い相手からの浮球うきだまに反応が遅れ、インパクトの瞬間が微妙に遅れて、ボールを抑えきれていないのである。これではバックアウトを繰り返すだけである。


今回はネットダッシュからの第一ボレーの処理技術について述べる。



2. 贈る言葉;

  (右利きとして解説するので、左利きの場合は左右を入れ替えて読んでください。)

《サーブアンドボレーのネットダッシュの場合》、

手順1;トス位置はボールを置いた左手を水平に前に一杯伸ばした位置、或いはその10cmくらい前目に上げる。なるべく前目に上げてボールをインパクトした後にまっすぐ前に走りだせる体勢で打球する。(インパクトの瞬間に体は前方に向かって動いていること)


手順2;左足から着地し(着地点はベースラインから40〜50cmコート内に入った地点となる)、続いて右足を左足より前に踏み出してネットに向かって走り始める。

ほぼ、1、2歩進んだところで手順3になるはずである。


手順3;相手がレシーブの為にラケットを振り出した瞬間に、両足を左右に開いて着地し、一瞬止まる。(この時、走って来た勢いのため、体にはネット方向に動く力が働いている。すなわち、物理学で謂うところの慣性力が前方に向かって働いている。)

(※錦織選手はこの動作をするべき時に、まだ走っていたり、同じ位置で小刻みに足踏みをしていた。これでは、次の動作に移る時に一瞬(0.0数秒)の遅れが出たり、正確なボレーインパクトポイントの判断ができない可能性がある。)


手順4;着地した瞬間にアンティシぺ―ション(予測)で相手が自分のフォアーサイドに打って来るのか、バックサイドに打って来るのかを察知する。


手順5;察知したサイドにボレーのためのテークバックをする。(無意識に出来るはず)

    (ボレーのテークバックは腕を45°引き、上半身を45°捻って、ラケット面がネットに平行になるようにするのが基本)

(※手順4・5についてはその判断した経緯は記憶に残っていない。気が付いたらラケットがボールを追いかけている。(私の経験)。 大脳皮質は使われない。頭脳のうちの本能的な部分が使われているはず。ただ、パターン連修を開始した頃は意識しながら練習を始めるが、そのうちに意識は自然に消えていくはず。そうでないと高速返球には対応できない。)


手順6A;相手からのレシーブ返球が緩い浮球の場合は、インパクト位置を感じ取り、そこに向かって走り出す。(この感じ取りが正しく判断できるようにパターン練修を繰り返すこと)

(※大リーグ野球のイチロー選手など外野手は打者がボールを打った瞬間の動きとボール初速と弾道からボールの落下地点を瞬時に感じ取って判断し、その位置に向かって走り出す。これと同じで、返球の初速と弾道から自分のボレー地点を判断し、そこへ走り始める。)


手順6B;相手からのレシーブ返球が高速のパッシングショットの場合は、フォアサイドに来たボールには左足を左横方向に蹴って体を右に飛ばしてボールを捉える。バックサイドに来たボールには右足を右横方向に蹴って体を左に飛ばしボールを追う。


手順6C;相手からのレシーブ返球がネットより低い場合は、返球はややゆるいのでいち早く打球ポイントを判断し、そこに向かって走り、ドロップボレーを試みる。ドロップショットの打球は放物線を描く。自分の打球位置とボールを落下させるべき狙った位置(相手サービスコートの中央位置よりネットの場所)を結ぶ直線上の中央が弾道の一番高い位置になるようにドロップボレーを練習すること。

(※錦織選手のドロップボレー弾道の最高点がいつもネットの真上になっていたため、ボールはサービスライン近くに落ちて、相手選手に簡単に拾われていた。ネットを意識するためにこの現象が起きる。ドロップボレーの時はネットを意識してはいけない。ボールを落下させる点を意識すること。ベースライン上のストロークからのドロップショットの場合はネットを意識することが多いが、放物線のピーク(山頂)はネット上には無い。)


ストロークからのネットダッシュも手順はほとんど同じである。サーブ後の着地からの走り出しではなく、ストロークからの走り出しになるだけである。ただ、サーブアンドボレーよりも多くの歩数(2.3歩)が走れる。

以上のように、サーブやストロークからのダッシュは両足を開いて一瞬停止するタイミングと自分のボールへのインパクト位置判断が重要なのである。これを間違えると一瞬の遅れやインパクトミスに繋がり、ボールを抑えられない。

よくよく練修(練習)すること。

なお、インパクトポイントはネットに近ければ近いほど良いのは当然である。



3.あとがき;

  10/29から始まった2018マスターズ1000パリ大会で錦織選手はアンダーソン選手に勝利したが、その時はアンダーソン選手の気力は充実していなかった。

  しかし、今回のATPファイナルズでは絶対に負けたくないと云った気力がプレーや表情に現れていた。錦織選手にも欲しい気力である。

  ラウンドロビンでA組の4位に終わった錦織選手は

  『(今回のよく弾む)使用球のせいなのか、コートの所為なのか判らないが、(3戦共に)感覚が良くなかった。』と述懐していた。

アンダーソン戦(第一サーブの成功率44%)の翌日の練習ではサーブ練習に時間を割いていた。しかし、私の分析ではサーブの成功率が低かったのは結果であって真の敗因ではない。真の敗因は未消化のネットダッシュ技術からくるミスショットを繰り返すことによる錦織選手の『固有リズムの感覚喪失』であったと観ている。リズム感を喪失すれば、ストローク、ボレー、サーブ、レシーブ等、すべてのショットに悪影響がでる。

フェデラー選手は錦織戦で失っていた感覚をティーム戦・アンダーソン戦では見事に復活させていた。そして、結果、A組の一位で準決勝に進んだ。

錦織選手にとって、『感じる能力』がすべてを決めてしまった2018ATPファイナルズであった。


序ながら述べておくが、

『負けている時はテニスを変えろ!』の格言の意味は『プレーのリズムを変えて、相手のリズムを崩せ』と云う意味である。

錦織選手はストロークでポイントを取っているのに、ここ一番のポイントを狙ってネットダッシュをする場合が時々ある。これは自らが自分の勝ちのリズムを崩すことになり、敗因に繋がるるので止めた方が良い。善しんば、ポイントが取れたとしても、その後にストロークのリズムを崩してしまう危険性がある。『勝ちパターンにある時はテニスを変えてはいけない。』



          『諸君の健闘を祈る』

        目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ

           2018年11月17日



※追記:2018年11月18日

R・フェデラー選手対A・ズべレフ・選手の準決勝戦を観た。

二人ともネットダッシュをする時は基本的に両足を横に開いて一瞬停止を実行していたが、

相手選手が打球の為にラケットを振り出す瞬間に歩調が合わない時はそのままインパクトポイントまで走り続けていた。その時のボレーはネットしたり、バックアウトしたり、イージーボールとなって簡単に拾われたりして、相手のポイントになっていた。やはり、走りながらボレーのインパクトポイントを正確に見定めるのは難しいようである。(多分、走っている時は眼の高さが上下しているので飛んで来るボールを精度よく見ることができない為にボールの弾道判断の精度が落ちるのであろう。人間の眼は水平に2個ついており、水平(横)方向の変化に対する追従性は良いが、垂直(縦)方向への変化追従性は弱い。)

因みに、フェデラー選手は一瞬停止のタイミングが遅れ気味であったのが気になった。(年齢の所為で反応が遅れたのだろうか?)         



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ