大豆
味噌が日本に広まったのは戦国時代の頃だったらしい。優秀なミリ飯だってんで、戦国武将がこぞって採用した。誰もが日常食とするようになったのはその後で、江戸時代になってから。今から大体300〜400年前の話になる。味噌の歴史全体から見ると最近の出来事だな。味噌は数千年に渡る歴史を持つからね。
え?味噌の歴史が日本の歴史より長い?そんな事ない。千数百年から二千年と言われるのは天皇の歴史。天皇より前の時代も考えるなら、1万年でも全然足りないんだよ。文明も文化も無い原始人の集まりを日本の歴史としてカウントするのは抵抗があるかな?そんなあなたに朗報。美少女の萌えフィギュアってのはその時代からあったんだぞ。それを作る技術は、もちろん(当時の)世界最先端!…どれだけなんだ日本人…はぁ。
フィギュアも気になるが今回は味噌だ。話を戻そう。その古い々々味噌の起源だが、実はハッキリしない。中国から直接、あるいは朝鮮半島を経由して伝わったという説が有力だ。穀醤とか未醤とか。これなら味噌の歴史が日本史より古くてもうなずけるな。
ただ、古代中国の醤という物は、作り方や食べ方など、日本の味噌の起源として見るとどうも違和感を感じるという意見もある。ならば日本人が独自に生み出した可能性を検討したくなるのだが、これがまた、面倒臭い。
実は、日本で大豆を扱った最古の事例は、おおよそ五千年くらい前のものが発見されている。これって中国で醤が作り出された年代とおよそ同じくらい。と言っても平気で千年とか二千年の誤差があるからねぇ。伝来したのか独自開発か、まぁ、よくわかんないってのが率直な感想だな。
しかしそれって大豆の痕跡が見つかっただけだろ、って言いたくなる気持ちはわかる。乾燥した大豆を煮豆用に保管してただけなんじゃないかと。けどね、食べ物の長期保存の為に塩漬けにするってのは、世界中で古くからある発想だ。日本でも食べ物を塩漬けにした歴史は古い。塩も沢山あるしね。それなら煮豆を塩漬けにするのは自然な発想だと思う。
煮豆を潰して、適当な大きさにまとめて置いとく。温暖湿潤の菌類天国日本でこんな事をやれば当然カビが生える。カビだらけになったモノを砕いて塩と混ぜて年単位で放置。実はこれが原始的な味噌の作り方らしい。この作り方なら麹は要らない。今でもこうやって作っている方がいらっしゃるようだ。味噌玉と言う。同じ名前でお手製インスタント味噌汁の素もあるので紛らわしいんだが。
という訳で、一応、日本で味噌が自然発生する可能性はある。事実はどうだかわからない。考古学者の研究を待とう。
…で、話が終わったら楽だったんだけどね。そうは問屋が卸さないのが、味噌考古学?の面倒臭いところ。
大豆の起源を御存知だろうか。野生の大豆は存在しない。野生にはツルマメという豆が一般的に生えていて、ここから品種改良して作り上げたらしい。しかもこれ、中国や朝鮮半島はもちろん、東アジア一帯において同時進行した可能性が指摘されている。もちろん日本でも。ちなみにその時期は味噌の発生とおおよそ同じ頃…という結論になる、みたいだ。
そんな訳で、日本の味噌は、主原料を手に入れる所から日本人が独自に工夫を重ねて来た可能性がある。日本万歳な人からすれば諸手を上げて歓迎したい見解だな。だがしかし、剣と魔法の異世界で味噌を作りたい転生者にすれば大問題だよね。大豆を用意する段階からとんでもない手間が掛かるんだから。
ツルマメを直接使ってもいいけど、粒は小さいし、完熟すると莢が勝手に割れて飛び散っちゃうから収穫が難しいし。しかも連作障害がかなりキッツイみたいだ。ツルマメについてはわからなかったけど、大豆の連作障害は耳にタコが出来そうな勢いで解説されている。皆が困ってるって事なんだろうな。そういう訳だから、ツルマメは農業に向かない。
ツルマメの農業生産が難しいなら、やはり何とかして大豆を手に入れたい。既に誰かが栽培しているのならいい。単純に探してくればいいのだから。そうでなければ、ツルマメから自力で品種改良する所から始めなければならない。完成してしまえば小麦と輪作できるけどね、何年かければ大豆と呼べる豆になるのかわからない。しかもそれっぽいものが出来た後に十年以上作り続けて、種としての定着を確認しなければならない訳で…
一筋縄ではいかない異世界の大豆事情。この際だ、品種改良も魔法の力に頼ろうか?しかし思い付かないんだよね、品種改良の魔法なんて。キメラとも違うし。魔物化する?魔物化する魔法を植物に適用。ツルマメの魔物。あ、触手ニュルニュルだ… いいかも知れない… いやいや、え〜と。そう、魔物を通常生物に戻す魔法も用意しよう。でも魔物化してすぐ戻したら元の個体に戻っちゃうな。そしたら魔物を何とかして交配、できた子を戻す。魔物になったら成長も早くて繁殖力も旺盛って事で。どうだろうか?しかし魔物の養殖場ってどうなんだろうね。なろう系小説での設定の事例も結構あるけどさ。人為的な魔物を扱うなんて、普通なら悪だくみでしかないよねぇ。
異世界では大変でも、現代日本なら味噌作りは手軽に楽しむ事が出来る。小説のネタにもなるし、一度手掛けてみてはどうだろう。実は我が家でも味噌作りが計画された。大豆と麹を用意したのが去年の冬。そしてありがちな話、多忙と育児にかまけて手を付けられなかった。それでも主原料については順調に消費された。我が家の3歳の娘が喜んで食べたのだった、煮豆として。味噌はどうなった…