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異世界化学工業・次は塩田

 異世界化学工業、次は塩田を作ろう。


 日本型の入浜式塩田でも良いんだけどね。今回はゲレロネグロ塩田をモデルにしたい。


 まずは立地条件。海に面した砂漠を探す。見つけたら領主様に談判だ。そんな場所、どうせ人は住んでない筈だから、領主様に話を通せば簡単に許されるんじゃないかな。下手すりゃ誰の領地でもないよね。


 次に、広大な砂地を何とかして固める必要がある。ここは異世界の魔法に期待かな。うん、土魔法で砂地を固めて、水を一切通さないようにする。広い場所を平らに固める必要があるから大変だ。小さく作って操業しながら広げていくのが順当だろうね。


 そうやって作る塩田は、適当に区切って何面かを用意しよう。順繰りに使えば休まず操業できる訳だ。干し上げるのに2年近く掛かるから、50面くらいは用意したいね。


 岩塩を生産している領地なら、こんな苦労をして塩を作る必要は無い。僻地の砂漠だと街まで遠いしなぁ。まぁ岩塩も不純物が結構含まれるから、作り方によっては海塩は高級品になるけどね。


 そこまでして海塩を作りたい理由は苦汁にがりだ。海塩の嫌われ物、苦味の素。以前紹介した例のアレ。


 海水を塩田で干し上げる際、最後の水分は干さずに集めよう。塩化ナトリウムはほとんど出切っていて、残りは硫酸マグネシウムと塩化マグネシウムと塩化カリウムだ。苦汁の主成分だな。


 塩は船で出荷する事になるだろう。塩の結晶表面に付いている苦汁は、航海中に海上の湿気を吸って溶ける。この苦汁を集めてもらおう。


 出荷先には塩を焼く炉を作っておいて欲しいよね。最後の一手間。塩の水分を飛ばすと同時に、苦汁を変質させて苦味を消す。最高級の焼き塩だぜ。


 出荷前に真水で洗って苦汁を回収って手もあるか。そして真塩を出荷する。


 ところで塩化ナトリウムも吸湿性がある。乾燥した気候の異世界なら大丈夫かな?日本みたいに湿気の多い土地柄だと、苦汁が付いてなくても湿気を吸って塩粒がくっつく事がある。これを防ぐ為に、現代日本の食塩は結晶表面を炭酸マグネシウムで覆っている。だからいつでもサラサラなんだよ。これは異世界ではちょっと再現できないねぇ…


 さて、こうして手に入れた大量の苦汁。これは建築材料になるんだ。


 前回作った石灰と、今回手に入れた苦汁。これに土を混ぜて水を加えて練る。そう、三和土たたきだ。現代でもコンクリートと比較してどうかって位の強度がある凄いヤツ。


 但し施工に手間が掛かるんだけどね。現代コンクリート並の強度を出す為には、叩いて締める必要がある。これを転圧と言う。そして乾燥におよそ1ヶ月。しかも強度を出す為の配合率は苦汁や土の成分によって違ってくるから、実験してみなきゃいけない。


 似たような建築材料に石灰モルタルがある。前回ちょっと触れたな。これは柔らかいんだ。いや決して悪い訳じゃない。煉瓦や石材の接着剤として使う分には、むしろ柔らかい方が向いている。壊れた時に補修が簡単だし。経年変化で家の構造が歪んだ場合にも、多少なら吸収してくれるしね。ろくすっぽ基礎を作ってなくても何とかなるなんて話まであるみたい。


 ちなみに日本型の漆喰は、石灰に砂と植物繊維と、糊を混ぜる。布海苔ふのりなんかの海藻を煮出して濾すと弱い糊になるんだけど、それを使う。このやり方は日本だけみたいだな。壁を塗るのに丁度良い粘りが出るんだとか。ついでに保水性も上がる。


 更に、ローマン・コンクリートという物もある。古代ローマで普及してたヤツで、古代コンクリートとも呼ばれてる。コイツは凄いよ。条件が整うと、2000年の時を超えてなお強度を保ってたりする。まぁ現代のコンクリートと比べるとちょっと弱いらしいけどね。残念ながらそのレシピはローマ帝国と共に失われたって話だ。中世ヨーロッパには存在しない。


 そして苦汁の用途はもう一つ。日本人にとってはこっちの方が重要だな。豆腐だ!


 豆腐は豆乳に苦汁を混ぜて作る。売り物を作るにはかなりの職人技が要るけどね。そして豆乳は大豆を潰して煮た物だ。


 しかし大豆ってのは東アジアで品種改良された豆なんだよなぁ。中世ヨーロッパには存在しない。残念。大陸の反対側のオリエンタルな国々まで探しに行かなきゃ。あるいはエルフの里に伝わる門外不出の豆…かな?


 そしてもう一つ残念が。醤油が無い!豆腐が出来て最初の料理は、やっぱり冷奴だよなぁ。冷奴には醤油が欲しい。ネギ塩ゴマ油って手もあるけどさ。


 異世界でも作れる醤油の代用品となると… 魚醤はどうかな。魚を内蔵ごと塩漬け。それだけ。塩田を作ったから塩は幾らでもある。数ヶ月も放っとけば自然に身が溶ける。あるいはそのまま長期熟成。これを濾す。


 実は魚醤ならヨーロッパにもある。イタリア料理にはトマトより古くから使われてたとか。うん、醤油の代用品なら何とかなりそうだ。


 という訳で、異世界に塩田を作ろう!そして大豆を探そう!

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