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魔麹の恐怖

塩の製造シリーズについて、サブタイトルを変更しました。本文は全く変わりませんが。


今回は残酷表現があります。この位は大した事ないだろうと思いますけど、苦痛の表現が苦手な方は御注意ください。

 今を遡ること千年前、いにしえの大魔導士は言った。麹に瘴気を当ててはならない。魔物化したら恐ろしい事になる。…などという伝説は無い。残念。


 麹の魔物なんてあんまり考えたくないなぁ。いやね、その、なんて言ったらいいかなぁ…


 取り敢えずキャラのイメージを固めよう。最初に気になるのは、そうだな、動物か植物かって事かな。どちらかと言うと動物に近いらしい。意外だよね。ノコノコ歩いたりしないけど、細胞の構造とかね、植物とは大きく違うらしい。


 動物の特徴の一つ、必要な栄養はすべて外から調達する。従属栄養生物と呼ぶ。植物だったら栄養の一部は自力で合成するんだけど。光合成とかね。そういう生物は独立栄養生物と呼ぶ。ま、その辺を突っ込み始めると小難しい話になっちゃうし、ちゃんとした定義は調べてくれ。


 という訳で、麹もモノを食べる。でもね、消化器官を持ってないんだ。麹に限らず菌類はみんなそうだけど。どうしてると思う?ここで、あんまり考えたくない話になる。菌類ってね、消化酵素を体外に分泌して、周囲のモノを溶かして、表面から吸収するんだ。う〜ん、スライムの捕食以上に想像したくない絵面だよ…


 調べてみると、消化液の分泌と言ってる記事は一つも無い。すべて酵素の分泌となってる。水分は出さないっぽい。水分は周囲にあるものを利用って事かなぁ。魔麹だったら水魔法だね。魔法で出した水に酵素を溶かして、消化液として放出だね。


 注目すべきは、麹の消化酵素は質も量も微生物トップクラスって事。これは怖いよ。大抵の生物素材は溶けちまうって事だから。そうは言っても溶ける速さには限界がある。基本的に化学反応だもんね。しかしそこは魔麹、醗酵促進の為の時間短縮魔法を使うだろう。消化液を浴びたら、洗い落とす間も無くガンガン溶かされちまうって事だ。


 魔麹の消化液の真の恐怖は、モノを溶かしているのが酸やアルカリじゃない点にある。酵素ってね、触媒なんだよ。自分自身は変化せず、反応を促進するだけ。次から次へと反応が進む。何らかの理由で壊れるまで、触媒は触媒のまま在り続ける。反応は止まらない。


 例えば塩酸だったら、溶けるにつれて塩酸が減っていく。浴びた量に比例する分だけ溶けたら止まる。極々少量だったら皮膚の火傷とかいう程度で終わるんだ。酵素は違う。溶け始めちゃったら最後、綺麗に洗い落とすまで溶け続けるんだ。しかも掛けられた魔法は時間短縮。魔法が消えても溶ける速さがゆっくりになるだけ。本質的には止まらず溶け続ける。


 魔麹の殲滅が遅れたら大変だ。触手ならぬ菌糸が伸びてきて、溶けた端から吸収していく。吸収して成長し、更に消化液を吐く。避けきれなかった騎士の体は生きたまま溶かされて、吸収されては魔麹の一部と化す。もし皮膚より先に筋肉が溶けたら悲惨な事になる。体の中に魔麹が入り込む。うわー!絶叫と共に剣でぶった斬っても終わらない。終わる訳が無い。敵はかびなのだ。磨き上げた剣技など全く意味を成さない敵に絶望する。騎士の体の中、見えない所で殖えていく魔麹。筋肉や内臓が溶かされる痛みと、吸い取られていくおぞましさ。溶かされる部分が遂に心臓に達し、ようやく死ぬ事が出来た騎士は、精神の苦痛から解放されてむしろ安堵したのであった。おいおいどうすんだよ、ホラーになっちゃったよ…


 ホラーは俺の趣味じゃない。おぞましさ全開の無敵の魔麹なんかイヤだ。防ぐ方法は無いか。うん、麹の消化酵素について調べよう。


 麹が消化するのは、主に澱粉と蛋白質と脂質だ。また、植物細胞の細胞壁は消化するのがものすごく難しいんだが、その成分の内のセルロースとヘミセルロースも消化できる。


 澱粉分解酵素。アミラーゼという。色々な種類がある。澱粉=大きな炭水化物を専門に分解したり、分解した結果がブドウ糖だったり、あるいは麦芽糖だったり、麦芽糖を分解してブドウ糖にしたり、等々。工業的な化学薬品混ぜ混ぜ系の方法だと、1つの手順で色んな反応が混在する事も多いんだけども。酵素ってのは働きかける対象と結果が非常に厳密なのが特徴だ。それだけに色んな種類の酵素を併用する事になる。


 ちなみに人間は澱粉の味を感知できない。麦芽糖やブドウ糖になったら甘味を感じる。だから粥に麹を働かせると甘くなる。甘酒だ。


 蛋白質分解酵素。プロテアーゼという。そもそも蛋白質はアミノ酸がた~くさんつながった構造になっていて、そのアミノ酸も種類が多く、つながる順番に制限が無い。あらゆる蛋白質を完全に分解しようと思ったら、多様な酵素を用意する必要がある。この点について麹はものすご~く頑張ってる。どのくらい頑張ってるかというと、頑張り過ぎて麹自身まで溶かしちゃうほど。はぁ?あんたバカァ?ま、上手にコントロールして何とかしてるみたいだけどさ。条件によってはやらかしちゃうみたいだね。


 そして人間は蛋白質の味も感知できない。アミノ酸になったら旨味を感じる。と言いたい所だけど、旨味に関してはそんなに単純じゃないんだ。ちょっと面倒臭い。その話はまた今度。


 脂質分解酵素。リパーゼという。そもそも脂質ってのは色々と種類があって、脂質の分解酵素は研究途上みたいだな。麹の酵素は研究の偏りが著しい。セルロースやヘミセルロースの分解酵素も研究途上らしい。


 研究途上なのは酵素だけじゃない。例えば甘酒。飲む栄養点滴って言われるほど多様なビタミン類を含むのは有名だが、そのビタミンはどこから湧いてくる?実は麹の中で合成される。但し合成の仕組はよくわかってない。最近ようやく解明が始まったようだ。


 麹の中ではビタミンが湧いている。これは朗報だ。魔麹を倒して酵素の異常活性を抑える事が出来れば…!麹の消化酵素は人間と共通の物も多い。毒も無い。食べれば、胃もたれを防ぎ、腸を整え、栄養豊富。辺境の痩せた農地で苦労している村人の健康増進に役立つな。おお、テンション上がってきたぞ!


 本腰を入れて魔麹対策を考えよう。


 盾で防げるか?木製だったら前述の通り、魔麹の消化液は木を溶かす。鉄製だったら?麹は酸も分泌している。ちょびっとだけどね。コウジ酸とか。酢酸やクエン酸も微量ながら分泌するって情報も見かけたけど、確証が持てないな。ただ、麹の一族の中には、クエン酸分泌量の多い黒麹もいる。クエン酸ってのは家庭の掃除なんかで近年話題のアレだ。こういう酸はね、鉄を溶かすんだよ。困ったな。盾は木製でも鉄製でも役に立たないぞ。


 やっぱり結界か。水も遮断する強力な結界で包むかな。これさえ出来れば、後は放っておけばいい。魔麹の消化液で魔麹自身が溶けていく。魔麹が息絶えれば醗酵促進魔法も切れる。うむ。


 結界魔法の難易度はどうしようか。低難易度なら生活魔法になるな、頭上に展開すれば雨の日は傘として使えるし。高難易度だと傘は冗談にしかならないから、戦闘魔法か。ここは異世界の造物主に決めてもらおう。


 最後に、魔麹の姿について。リアル指向で恐ろしげに描写したいなら、ネットを漁れば麹の写真は山程出てくる。デフォルメして可愛らしい姿にしたいなら、そんなサブキャラを配して成功した漫画があるので参考にするといい。え?知らない?かもすぞ!

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