第一話「出会いはコンビニで」
何もない日常が好きなりおだが、ふと寄ったコンビニで出会った幼馴染との再会で高校生活が急変する?
これからの学校生活はどうなるのか?
第一話 「出会いはコンビニで」
「りお~起きなさ~い遅刻するわよー」
「うーん・・・・・・・・あっもうこんな時間だ」
母に起こされ、私は飛び起きた。
まだ重いまぶたを無理やり開けつつ部屋の扉を開け、ダッシュで洗面所に行き、顔を洗い、歯を磨く。そして、母がいるリビングに行き手を合わせてから朝食をパパッと食べる。
部屋に戻り、今着ている花柄のパジャマを脱ぎ捨て、制服に着替え、髪を整え、持ち物チェックをして玄関に向かい、毎日同じやり取りを母とする。
「行ってきまーす」
「気を付けて行ってくるのよ」
そして勢いよくドアを開けて、春のポカポカとした温かさの通学路を学校まで歩いて行く。
本当にいつもと変わらない普通の朝で、いつもの風景にいつもの通学路、私はこの日常がとても好きだったりする。
家を出て、そんなことを思いながら少し歩くとコンビニの前についた。
このコンビニは私の地元にしかない、いわゆるローカルコンビニっていうやつだ。
私は、スカートのポケットの中から、ピンクのスマホを出して時間を確かめる。
スマホのトップ画面の時計はまだ登校完了時間とはほど遠い時間を表示していた。
「まだ時間あるし、コーヒーでも飲んでいこうかな・・・・」
そうつぶやいて、スマホをポケットに戻し、コンビニの中に入った。
「いらっしゃいませ!あっりおちゃんおはよう、こんな早い時間にどしたの?」
「おはようございます。渡邉さん、まだ時間あるんでちょっとコーヒーでも飲んでから学校に行こうかと・・」
「あらそうなの?じゃあ、いつものでいい?」
「はい、お願いします」
今、100円コーヒーを鼻歌交じりに入れている若い店員さんは渡邉さんという人だ。
このコンビニは、私の家から一番近くて、よく利用することから店員の渡邉さんと店長さんとは仲良くさせてもらっている。
まぁいわゆる常連客というやつだ。
「りおちゃん。お待たせぇ~出来たよ」
「ありがとうございます」
そう言っていれたてのアイスコーヒーを受け取り、財布の中から100円を出して渡した。
「あっそうそう、はいこれ。店長からりおちゃんに渡してって」
そう言われると渡邉さんから「パウンドケーキ」と書いてある商品を手渡された。
「えっ?これは?」
「店長によるとなんか発注ミスしちゃったそうで売れ残るのもよくないから試食がてら食べてって言ってたから遠慮せず食べてね。っていうか食べて!りおちゃん」
「あっそうなんですか?じゃあ遠慮なくいただちゃいます。それとちょっと、カフェスペース使わせてもらっていいですか?」
「うん、いいよ~。えーとそーいえば・・確か一人使っている人がいるはずだから、よろしく!」
「なんかいろいろとありがとうございました。」
「また来てね~りおちゃん!まだいっぱいパウンドケーキ残っているからね!」
―店長さん何個ウンドケーキ発注しちゃったんだよ・・・・
あっさっきから言っているカフェスペースとは、このコンビニの中にあるスペースで四席ほど椅子があり、机がバーカウンターみたいになっていて、ここで買ったものを自由に飲んだり、食べたりできる近所のおばちゃん達の御用達の場所だ。
そして私は、買ったアイスコーヒーともらったパウンドケーキを持ちカフェスペースに向かった。
そこには、渡邉さんが言っていた通りに先客がいて、その人の後ろ姿は、私と同じぐらいの年で同じ学校の制服を着ていた。
「あの~すみません。隣、座っていいですか?」
その人は私が声をかけると返事をしながら振り返った。
「あっいいですよ~。・・・・って・・・・えっ?あなたも、もしかして」
「えっ?そ、その声。も、もしかして」
私と知り合いの人?は少し考えるかのように黙り込んだ。
「りおっち~!?」
「けいこ~!?」
その人と私は、ほぼ同時ぐらいに名前を呼びあった。
「りおっちぃぃぃぃ!久しぶりぃぃぃぃ」
軽子はそう言って少し高めの椅子から猛スピードで降りてきて私に勢いよく抱きついてきた。
「いや・・・・けいこ。ちょ、ちょっと・・・・コーヒーこぼれるから・・」
「あっごめん。やっとりおっちと再会できたからうれしくて・・・・」
軽子は、私から少し離れた。
「ねぇけいこ、ひとつ聞いていい?」
「なに?りおっちぃ」
「けいこって親の転勤で、引っ越したんじゃなかったの?っていうか、なんでこっちにいるの?」
目の前にいる、妙にテンションが高い女の子は、「地濃軽子」と言って、私が保育園に通っていたときからの友達だ。
しかし、軽子は中学一年生の時に急に引っ越してしまい、引っ越した先も私の住んでいる町からとても遠いかったため一度も会っていなかった。
「いや~りおっちぃ、結構前かな~親の転勤が終わってね、こっちにある仕事場に戻ってきたから・・・・この町に帰ってきたんだよ」
「へぇ~そうなんだ。って、その制服って・・・・・」
「うん。りおっちと同じ私立SK学園だよ」
軽子は、そう言いながらグッと親指を立てた。
「でもさ、けいこ、入学式の時いたっけ?」
「まぁまぁ。りおっち、立ち話もあれだから座って座って」
軽子はそう言いながら、私の背後に回り込んで私の背中を押した。
そして、二人で肩を並べて椅子に座った。
「あっりおっち。入学式の話なんだけど・・・・ひどいよ~私、ちゃんと入学式出たし、それに、担任の先生が名前呼ぶ時に、ちゃんと返事して立ったよ」
「あっそうなの?・・・・あっところで軽子って何組?」
「えっ?C組だけど・・・なんで?」
「C組か~じゃあそれぐらいの時、うとうとしていたかも・・・・てへ」
「りおっちのばかぁぁぁ」
軽子はそう言いながら、私の右肩をぽかぽかたたいた。
「はいはい、すみませんでした。けいこさま。」
「許そうではないかりおっち」
けいこはそう言い、たたくのをやめた。
「ねぇところでさ、けいこ。一つ聞いていい?」
「なにぃ?」
「ここら辺さ、結構高校あるよね?なんでSK学園にしたの?」
「ふふふふよくぞ聞いてくれた・・・・それはね、りおっち。この私立SK学園には・・・・」
軽子はそう言いかけて、カバンから一枚のチラシを取り出して机に勢いよく置いた。
「自動車部があるからだよ!りおっちぃぃ」
私は、軽子が置いた、A4サイズのカラフルなチラシを見た。
そこには、「私立SK学園自動車部」と書いてあり、部員募集中の文字が目立つように大きく書いてあるいたって普通な部活動勧誘のチラシだ(この部活が何をするのかは謎だが・・・・)。
「あーそう言えば、けいこ。自動車好きだったね」
軽子は、正真正銘の自動車好き・・いや、オタクだ。
軽子によるとお父さんがクルマ好きで、いろいろと話を聞いているうち、クルマの知識が身に付いたたらしい。
私が、少し知っているクルマの知識の大半は軽子と話しているうちに覚えてしまった。
「ねえねえ、ところでさ、りおっち、部活ってまだ入ってない?」
「うん。入ってないけど・・・・」
―そう言えば部活か~考えてなかったな~
なんて考えていると軽子は私の手を握ってきた。
「りおっち。今日の放課後、暇?まぁ暇だよね~じゃあ一緒に自動車部に見学しに行かない?」
「勝手に決めつけんな・・まあ暇だけど・・・・私でいいの?」
「うんいいよ。むしろ、りおっちじゃないとダメ」
「けいこがいいって言うんだったら私も断る理由もないけど・・・・」
私は、コーヒーを一口飲んだ。隣では何やら軽子がブツブツと独り言を言っていた。
「うふふふ。これでりおっちを自動車部に入れればぐへへへ」
「ねぇ、けいこ。なんかたくらんでるでしょ?全部聞こえててるよ」
「あっもうこんな時間だ~早く学校に行かなければ」
軽子は、ありもしない腕時計を見て棒読みにそう言うと、椅子から降りた。
「ほら、りおっち行くよ!」
「もー、ごまかさないでよ!」
私は、少し残ったコーヒーを飲みほし、渡邉さんからもらったパウンドケーキをカバンに入れ、すでにコンビニの前にいる軽子を少し小走りで追った。
「また来てねぇーりおちゃん~」
手を振る渡邉さんに手を振り返して、コンビニを出た。
走って通学路を逃走したかと思いきやコンビニの駐車場にある一台の大きなバイクにまたがる軽子がいた。
「け、けいこ。そ、それどうしたの?」
「ほっほっ私の愛車のスズキカタナ400ちゃんでーす」
「えっ?けいこ、どこからそれパクってきたの?」
「ひどいなぁりおっち。私がそんなことをするわけないでしょ。このバイクはお父さんのおさがりで盗むわけないじゃん」
「へぇ~あっけいこ、まさか無免許じゃないよね・・・・」
「りおっちぃぃひどいよーちゃんと普通二輪の免許持ってますよーだ」
そう言うと、じゃじゃーんと軽子は自慢げに、ポケットから免許証を出して見せた。
「じゃあ、とゆうことで私は、先に学校に行ってるからねー。放課後、りおっちの教室に迎えに行くから・・・・よろぴくねぇ」
軽子は、ヘルメットをかぶり、エンジンをかけた。車とは違うバイク独特の音が朝の静かな住宅街に響く。
「りおっち、じゃあまたあとでねー」
「うん。またあとで」
軽子は、私に軽く手を振ると、コンビニの駐車場を出て、あっという間に学校がある方向に行ってしまった。
「あっ私も早く行かなくちゃ」
私は、自分のスマホを出し、時間をちらっと見てからつぶやき、学校に向けて歩き始めた。
「自動車部ね~どんな部活なんだろう?気になるな・・・・」
昔からの友人、軽子と再開から私の高校、自動車部ライフが始まった。
一話終わり 二話に続く