前章:飯田(いいた)頼嗣(よりつぐ)の手記
結界島……精神障碍者によって立ち上げられた政権がある。正常な人には目に見えない島である。こんなことを言っても誰も信じてもらえないかもしれない。
公用語は日本語である。建国されて今年で100年目になる。領土は結界島一つである。そのほかに領土はない。
食文化は日本食である。和食ではない。和食を含めた洋食、中華料理を統合したものが、日本食である。
漁港もあり、豊富な魚介類が日々沖に上がる。コメや小麦、野菜類は必要な量が確保されている。
日本国にいた時代は、食料自給率がすこぶる悪いと日々聞かされていたが、こちらに来てからはそんなこともなく恵まれた国であると実感している。
火山があり、人々が心の拠り所とする御嶽のようなものとなっている。島自体が温泉島の為、共同浴場は全て温泉である。畑作業で疲れた体には丁度いいのだ。
私は82歳になる老いぼれである。いつ死ぬか分からん身の為、この書を書き残すことにした。所謂、入門書である。
いつ新しい島民、シマンチュが来るか分からない。これは入門書、語録である。
4代:金城宗武(義越島主)大統領第一祐筆 賜姓錦城 飯田頼嗣