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「今、そこで涼汰くんとすれ違いましたよ。傘をさしていたから、気付かなかったみたいですけど」

 言いながら店に入り、三宅は「ん?」と眉根を寄せた。店内の空気が、何やら湿っぽい。

「……何かあったんですか?」

「あー、うん……ちょっとね」

 苦笑しながら、乾と和樹は三宅を出迎えた。

「それで……三宅さん。今日は何の用?」

 和樹が問うと三宅は、はぁ、と大袈裟にため息をついて見せた。

「間島君が言ったんでしょ。葉南東中の噂話を詳しく調べてくれって」

「……そうでした」

 あははと笑って誤魔化そうとする和樹に、三宅は再びため息を吐く。

「……まぁ、良いわ。大して詳しい事はわからなかったし」

 そう言いながら手帳を開いた。

「あの後、葉南東出身の友達や、その兄弟、後輩なんかとも会って話をしてみたんだけどね……結局わかったのは、この前話した事件に出てきた子達の名前くらい」

「名前?」

 首をかしげる和樹に、三宅は頷いた。

「ロミオとジュリエット状態になっちゃった子達は、大川正人くんと野村みやびさん。病気がちであまり学校に来れなかったって子は、佐原香澄さん。卒業式前に交通事故で亡くなっちゃったって子が水谷茜さんで、東大寺の大仏に登ろうとして怒られたっていうのが加地星太くんと、田辺凛々奈さん。……以上ね」

 三宅の報告に、乾と和樹は何とも言えない顔をしている。

「……大仏に登ろうとした子、二人もいたんだ……」

「アグレッシブな学校ですね。葉南東中……」

「涼汰くんを見てると、とてもそうは思えないけどねぇ……」

「その子達だけが特殊なんだと思うけど……」

 ひとしきり三人で、苦笑した。そして和樹は「ふむ……」とうなる。

「どうしたの、間島くん?」

「いや、三宅さんに調査を頼んでおいて良かったなぁ、って」

 さらっと言ってのけた事で、三宅の顔が照れて紅潮する。しかし、それに和樹は気付いていない。

「……乾さん」

「ん?」

 首をかしげた乾に、和樹は真剣な目を向けた。

「葉南東中の卒業式に、園芸部用の花束を届ける日……俺が、配達に行くんですよね?」

「うん。そのつもりだけど?」

「なら……」

 言いながら、和樹はちらりと手元を見た。涼汰が置いていった、佐原による最後の暗号だ。

「その日、ひとつやりたい事があるんですけど……」

 その言葉に、乾と三宅は顔を見合わせ、首をかしげた。

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