入部!
とりあえず、さっきの部活表を返して入部届けをもらうことにした。
丸やんはうれしそうに笑って俺と加藤に入部届けを渡してくれた。
「あー、嬉しいなぁ。加藤さん、やっとこういう行事参加してくれるようになったんだねぇ」
加藤はまたさっきみたいに俺の後ろに隠れた。
隠れたって無駄だって。何がしたいのこのこは。
先生はその様子をみてくすりと笑った。
「それにさ、」
丸やんの手がふわりと加藤の前髪に触れる。
「最近、まっすぐ前を見ているね。増岡くんのお陰かなぁ」
丸やんの手が移動して次は俺の頭をなでた。
そして小声で俺に話しかけた。
「感情表現ができない不器用な子だけど、これからもよろしくね。
君が、光になってあげて?」
入部届けを受け取り、Key☆音部の部室を聞いてみたのだが、どうやらひとつの教室を使えないらしく、どこかへ移動しながらの部活動なんだそうだ。
とりあえず、音のするほうにあると考え、加藤の指示に従って移動しようと決めた。
えーっと、あれだ。
丸やんと加藤は親子か何かなんだろうか。(まぁ、年齢的にありえないが)
随分、加藤の事情を知ってそうな口ぶりだったが。
っとゆうか、光とはなんなんだろう。
力になってあげて、そういう意味だろうか。
なれるだろうか、加藤の光に。
俺はそれを聞いてどう思ったのか?
そりゃあ、
なれるなら、なってやりたい
と、思う。
(…ん?)
なな、何だこの展開は。
俺が加藤スキーフラグが立ってるじゃないか。
そんなことは、断じてないっ。
俺が好きなのはもっと純粋でかわいらしい子。
こんな下ネタを言うような奴じゃないのだ。
しかも、こいつ俺の下の毛を見たわけだし…。
「ねえ」
気がつくと目の前に加藤の顔があって驚いた。
「顔あかいよ」
ええ、そうでしょうとも。
「音、ここから聞こえるよ」
加藤がとある教室の前で立ち止まった。
教室名が書いてあるプレートをふと見上げると、そこには「Key☆音部部室」と書いてある紙が張られていた。
だが本当の教室名は理科準備室である。
勝手に張っちゃだめでしょ。
「入るの」
「入るでしょ」
扉にてをかける。
ガラリ。
開いた瞬間何故か目の前が真っ暗に。
「…何」
うえのほうから声がして頭を上げてみる。
視界に映ったのは楕円形のめがねをかけた身長170くらいの男だった。
俺が知ってる二年生にこんな人はいなかったので勝手に3年生と認定する。
ふと、また加藤の手が俺の学ランをつかんでいるのに気づいた。
またですか。
今日は3回目だぞ。
なんて、そんなことは置いといて。
とりあえず目を合わせて数十秒。
メガネ先輩(?)はくるりと後ろを振り返って誰かに話しかけた。
「なんか、いるよ」
なんかとは何だ。
失礼な人だな。
さっきまでギターを弾いてたのはこの人だと思う。
手にピックが握られているから。
加藤の手が俺の学ランから離れた。
「あ、んたですか。さっきのギター」
おお、こいつしゃべった。
なんて当たり前なんですけどね。
「…ああ。ギターね。俺だけど」
「…そう」
「…なんか、用?」
こいつら似てるような気がする。
気のせいか?
「言わないの」
え、あ、そーか。
入部、しにきたんだっけか。
「あの、Key☆音部ってだれがつけたんですか」
あ、間違った。
加藤が俺の脚をふんづててます。
ごめん、ボケたわけじゃないんだ。
気になってんです。
するとメガネ先輩の後ろから妙にテンションが高そうな人が出てきた。
その人もメガネだった。
「あーっ、それ、俺俺っ」
高そうじゃなくて高かった。
「名前は俺じゃねーけどっ、君ら、入部希望かな?」
「あ、はい。そです」
そういうと後ろのメガネの人はニコーっと笑って俺の肩をたたいた。
「そか、そか!はいんなさいっ」
あっさり、入部。
なんだ、つまらん。
まぁ、これからが楽しければいいか。
こいつもいるしね。
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