ケーオンブ
バンド部のお許しをもらうため、俺たちは放課後学年主任の丸田先生(女性)に相談した。
「バンド部!やりたいです」
「えっ?軽音部のこと?」
「NO!バンド!」
軽音よりかっこいいんだぞ。
まいったか。
…違いがわからないけど。
まぁ、バンド部のほうがかっこいい感じするじゃん。
「うーん…。ケーオン部ってあった気がするんだけどなぁ…。あ、橋本センセェ、部活表ありますかぁ?」
ああ、ありますよ、そう言って橋本先生は丸やんに部活表を笑顔でわたした。
「加藤さん、部活するの?」
橋本先生が加藤に向かって話しかける。
すると加藤は俺の学ランの裾を掴んで俺の後ろに隠れた。
なんだこいつ。小動物かなにかか。
橋本先生はすこし残念そうな顔をして自席に戻った。
人見知りなのか?
とりあえず俺は加藤の頭をぽんとたたいた。
たたくってゆうか、まあ、なでたつもり。
「はい、増岡くん、加藤さん、部活表」
丸やんがゆったりした口調と動きで部活表を渡してくれた。
「さんきう」
「どぉいたしまして」
部活表を受け取った俺と加藤はとりあえず屋上へ向かった。
最近10分休みも屋上に来る。
ってそんなはなしはどうでもいんだけど。
「うわ、うちの学校ってこんなに部活多かったんだ」
加藤が俺のすぐ隣に来た。
近いよ。
「あるかな、ケーオン」
「おでんクラブなら見つけた」
「そんなクラブ見つけなくてもよし」
並び順が適当すぎてどこにあるかわからない。
不親切な部活表だ。
「あ」
突然加藤が声を出だした。
「何?」
「ギターの音がする」
え?
「きこえな、ぶっ」
加藤に口を無理やり塞がれた。
静かにしろってこと?
口で言ってくれればいいじゃん。
それがいやなら人差し指を口にやってシーとかね。
鼻まで塞がないでよ、息できない。
「聞こえるでしょ」
よくわからないけど、とりあえず耳を済ませてみた。
「あ」
うん、聞こえたよ、加藤。
すごいな、こんな最小の音が聞こえるなんて。
そのギターテクは、とても上手とは言えないけれど、下手でもない。
でもなんか、わかんないけど、
すげえ。
インパクトがあったわけでもないのに何故かすごいと思ってしまった。
とりあえず加藤さん、手をとって俺を解放して。
とりあえず加藤の手をたたく。
「あ、めんご」
めんごってお前。
もっと言い方あるでしょう。
加藤は俺を解放してから、部活表を手に取った。
「ねえ、あったよ」
「そりゃ、どっかでギターがなってりゃあるでしょ」
加藤に部活表を渡され、文字の場所に指を指された。
由比が指した場所を見ると、そこには
『Key☆音部:たなか さとる』
と手書きで書かれていた。
誰がつけたかわからんが、
どんなネーミングセンスだ。
「多分、この田中センパイだと思うよ」
「そうだね、俺もそう思うよ。
とりあえず、それを問いにいくついでに、
入部させてもらおーか」
「…『ついでに』なの」
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