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T.W.F.S. (The Way For Surviving)  作者: ほむほむ-心葉
3/4

III 対峙

  急いで家の中に入る。玄関、廊下、リビング、キッチン、と、一通り見てみたがなかなか良さそうな道具は見つからない。バールのような物があれば車のドアをこじ開けられそうなのだが。残念ながらそんな物はこの家にはない。普通の一般家庭にはあるのだろうか。

 「ガラス割るしかないかなあ…。」

 事故の衝撃のせいか、窓ガラスにはヒビが入っていたはず。硬いもので叩けば簡単に割れるだろう。

 「…お」

 部屋の隅に立てかけてあった金属バットに目をやる。

俺は小学生時代に少しだけ野球を嗜んでいた。しかし野球部等に所属していたわけではなく、ただの遊びとしてやっていた。このバットはその頃に父親に頼んで買ってもらったバットだ。少し長めだが、小学生でも振れるようかなり軽く作られている。昔はこれでもかなり重く感じたが、久しぶりに持ってみると本当に軽く感じた。

 俺はバットを握り、急いで玄関へ向かった。




 家の玄関を出る。庭を駆け足で進み、道路へ出る。

しかし、さっき単独事故を起こしたと思われる車のドアは開いていた。自力で脱出できたのだろうか。

車に近付き、車内を覗きこむ。さっきまで車内でドアを叩いていた男性がいない。ふと道路に目をやると、おびただしい量の血痕があたりに散乱していた。あの出血した状態でどこへ行ったのだろうか。


 近くで音がした。


 トッ、と。おそらく足音だろう。

あの男性だろう、近くにいたのだ。当然だ、あの出血状態でそう遠くへ行けるはずがない。

音のした方向は後ろだ、振り返ろう…としたが、なぜか首がうまく回らない。肩に何か乗っている。




 俺の左の首にさっきの男性が噛み付いていた。



 「う…うわああああああああああああ!!!!!」

 全力で男性の頭をどけようとするも、ビクともしない。とてつもなく強い力で俺にひっついてきている。

 「くそっ…くそっ…なんなんだよアンタっ!!!!」

 左手で男性の頭を何度も殴る。しかし、頭のある位置が悪くなかなか力を入れて殴れない。

男性は微動だにしない。

 俺は右手に持っていたバットの先端を握った。ボールを打つ部分だ。そのバットで思い切り男性の頭を殴る。殴る。なんども殴る。

 「こんのおおおおおおおお!!!!」

 男性の頭皮が出血し始めた。しかしなおも男性は俺の首から離れない。


 俺の首に噛み付いている男性を引き剥がそうともがき、5分ほどが経過した。

頭から大量に血を流した男性が自ら離れた。俺はその男性から距離を離し、再び向かい合ったあとに自分の首を触った。ズキリと鋭い痛みが走る。首を触った左の手の平は真っ赤に染まっていた。血だ。

男性の方を見る。ゆっくりとこっちに近づいてきている。

 「なんだよ…なんだよっ!!」

男性との距離が縮まる。逃げ出そうとするも足が震えて動かない。動け、動けと自分に言い聞かせるが体はいうことをきかない。男性が3mほど前にまで寄ってきた。

耐えられずに目をぎゅっと閉じた。涙が溢れた。すると、後ろから大きな声がした。




 「君!!!!早くその男から離れろ!!!!」




 足が動いた。気が付くと声のした方に俺は全力で走っていた。

目の前には全身に濃い緑色の迷彩服のような物を着た男性がいた。いや、あれは迷彩服だ。

自衛隊員だ。自衛隊員が俺の方に、俺の後ろにハンドガンの銃口を向けている。

俺が自衛隊員に近付くと、彼は俺の手を掴んで振り返り、後ろに向かって駆け出した。

前方70mほど先に輸送車のような車が停まっている。俺は手を引かれながら必死に走る。

車に辿り着くと自衛隊員はドアを開けて俺を車に乗せ、続いてその自衛隊員も乗り込んだ。

その後、彼は運転席に座っていた別の自衛隊員に

 「出してくれ!」

と言った。運転席に座っていた隊員がコクリと頷くと、車が動き出した。

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