FILE.1→3 MAD MAN
2人は台車からドラム缶を一つ持ち上げると勢いよく川に投げ込んだ。
その後も軽快にドラム缶を五つ程投げ込むと首にかけたタオルで汗を拭った。
『君達、何やってるんだ?』私の声にビックリした男達は同時に私の顔を見た。
『そのドラム缶の中身はなんだ? なぜ、川に投げ込んでいる?』少し荒っぽく尋ねると、2人はこう言った
「ゴミですよゴミ 仕事でここに運ぶように言われたんですよ ってか貴方、誰? 警察?環境委員会? 町長? なんか問題があるんならそこの工場に言ってくださいよ。」(なぁ、もしかしたら口止め料とかでるかもよ)「あっ、それあるかもな! よかったですね!あそこ 結構デカイ会社だから多分かなり貰えますよ」
この時、私は怒りを堪えていた。が、2人の次の言葉に怒りは爆発した
「あ、でも なんかさっき1人の男が訳わかんないイチャモンつけて追い帰されたらしいから 気をつけてくださいね 」
『その男はなんて言ってたんだ?』
「なんか、あんたの工場のせいで町の人間が死んだとか身体を壊したとか、どう考えても工場じゃなくてそちらさんの健康管理の問題ですよね、そんな不条理な理由で工場潰されたら… このオイシイ仕事がなくなっちまうじゃないか。」 『オイシイ仕事?』
「ゴミ捨ての仕事っすよ 工場からでたゴミを指定された場所に捨てるだけで日給400ドルなんて、おいしすぎる仕事ですよ 貴方も金に困ってるなら紹介しますよ?」
『いや、結構だ! 仕事 頑張って。』
2人はなんにも分かってはいない。なんにも分かってないからこそ、私は怒りを隠せなかった。 自分達がいったい どれほどの罪を犯しているのかも気づかず、彼等はまた ゴミを街に捨てに来るだろう。オイシイ仕事だと言って。
その夜、私は気づいたらベスパを走らせていた。 午前中と同じ格好で、ワイシャツネクタイに白衣を羽織り 虎柄のパンツを履いてコミックに出てくるヒーローのようにバイクのヘルメットを被った。それは、DR.チョッパーを彷彿とさせるスタイルだ。
ただ、午前中とは違う点が一つ なぜか背中に背負っている鉈一本。
あの2人はまだ、川でゴミを捨てていた。始めて会ってから約5時間が経った、10は軽く超えた量のごみが川に流されたはずだ。
2人は私を見るとニッコリと微笑み、こっちに近づいて来た。
「やっぱり仕事、やることにしましたか?」
『……』 「なに、そんなに心配することないですよ 俺達がしっかり上には伝えるんで 多分、明日から仕事を始めると思‥いますよ」
(あれ? お前、その右手…どうした?ん?
あ? あっ…… お お前! その右手どうなってんだぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎) もう1人の男の声に喋っていた男は驚き、アタフタしながら自分の右手に視線を落とすと 絶叫しながらよろめいた。
「あぁぁ‼︎ あぁぁぁ‼︎‼︎ あぁぁぁぁぁぁ‼︎何でなっ なんでこりゃー‼︎‼︎‼︎ 」
男の右手は手首から切断され、切れ残った皮でかろうじてぶら下がっている。
人間はショックが強いと痛みが遅れるらしく
男は自分の右手の状態を把握してからちょっと間が空いて痛み始めたらしい。
「痛い!痛い痛い痛い痛い! 助けて!
ママ ! ママァァァァァァァァァ‼︎」
激痛にもがき苦しむ男を尻目にとっと逃げようとしたもう1人の男を捕まえ、右手を切り落としかけた鉈で腹に一発キメテてやると
腹はスイカのように割れて 中から腸が滑るように溢れ出た。 地面には赤い水溜りができ、男は口から泡を吹いた。
私は医者だからこんな状況どうってことはないが、一般人には多少インパクトが強すぎた
ようだ。右手をぶら下げてる男は嘔吐し、尻餅をついた 私はゆっくり彼に近づくと、頭部に鉈を振り降ろした。鋭く磨かれた、刃が彼の頭を薪割りのように真っ二つに切り裂いた。 男は地面に倒れ切断面から味噌がドロドロと流れ出た。 蟹は人間に食われる時、こんな感じなのだろう。
2人の事は翌日の朝刊のトップを飾っていた
【残虐な手口】 【不条理殺人】
俺は一夜にして狂気殺人鬼として有名になった。 世間は私を 《MAD MAN》と呼ぶ。




