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第三章『悪魔』

村の秘密、真相が明らかになり、この事件も終わりに近づいています。これから、どういう展開が待っているのか、楽しみにしてくれると幸いです。

 『自由なる騎士団』のリーダー、キクリは村で唯一川が通っている先の山に向かっていた。

「この先に、(ほこら)があるはず」

祠には悪魔たちの魂が宿っている。祠を開けると魂は解放され、悪魔たちは(よみがえ)る。キクリは左目を押さえ、魔眼(まがん)の力を使う。

「魔眼『赤月(あかつき)』…発動」

キクリの左目が赤く染まる。魔眼『赤月』は目の中に108つの呪いを内包させ、発動すると常にその呪いを使うことができる。使えば使う分だけ(ごう)が増え、罪が増える。発動しなくても、呪い自体は有効なので、キクリは老けないし、死なない。キクリが少女のような童顔(どうがん)なのは、その呪いが理由である。

「さて、祠まで移動しましょうか」

キクリはそう言うと、魔眼に内包されている108つの呪いの一つ、『圧縮の呪い』を使う。時間、距離などあらゆるものを圧縮させる呪い。3歩歩いたキクリは目的地に着いていた。黒い鳥居(とりい)、古びた(やしろ)。社の裏手に祠があった。その祠を開け放つ。黒いものが流れ落ちた。黒いものは地面に溶け込み、人の形になっていく。しかし、次第に人とは違う部位が現れる。角、黒い羽、長い爪。そして、肌が赤黒かった。これが悪魔。キクリは何度も見慣れている。下級の悪魔は統一してこのような形をしている。

「さて、始めましょうか。凌辱された人たちに贈る聖歌(せいか)(うたげ)を…」

キクリは腰から2本の小刀を手にし、構える。黒いものはあふれ続け、悪魔が増えていく。黒いものの流れが止まった時には、悪魔は20体を越えていた。

「女だ」「しかもかなりの上物だ」「食ってやろうか」「待て待て、まずはお楽しみからだろ」

悪魔たちが話している。もちろんキクリは話し合いを待つことはない。キクリは右手の小刀を投げた。一匹の悪魔の額を貫く。そして、その悪魔は死んだ。

「…は?」「ほへ?」「おいおい…まずいんじゃないか」

悪魔たちが焦りだす。本来悪魔は死なない。もちろん例外は存在する。しかし、どのような兵器でもすぐに復活し、甦る。ではなぜ死んだのか。キクリは語りだす。

「悪魔は普通の殺し方では殺せない。でも、聖なるもの、呪われているものの攻撃、殺し方は通用する。そのまま死んでくれる。私の小刀は聖なる祈りを込め、力が宿っている。この小刀の攻撃は通用してくれるのよ」

ここで悪魔たちは自分たちが置かれた立場を理解した。悪魔は自分が『狩人(かりうど)』だと思っていた。しかし、実際は逆で、悪魔たちはただの『獲物(えもの)』だった。

「ひぃ!」「逃げろ!」

悪魔たちが尻尾を巻いて逃げようとする。しかし、逃げることができなかった。気が付くと、悪魔たちは下半身と上半身が分かれ、死んでいた。『赤月』の108つの呪いの一つ、『斬撃(ざんげき)の呪い』。刃物を振ると、ある程度の距離まで斬撃を飛ばすことができる。20匹の悪魔は5分しないうちに全滅した。

「…苦しんで殺すつもりだったのに…」

少し残念だったが、悪魔たちを仕切っているボスがいるはずだとキクリは考えた。

「名がある悪魔が率いているはず。悪魔はある程度の上級を除いて、群れを成す傾向があるから」

キクリはその元凶のボスを探そうとした。しかし、その必要はなかった。一匹の赤い悪魔。(ひたい)五芒星(ごぼうせい)に黒い翼。そして黒いヤギの顔。

「……まだ一人残ってたのね」

「我の同胞たちが皆殺しにされるとはな。しかし…我には勝てまい」

悪魔は空高く飛ぶ。キクリは悪魔を見た。そして他の悪魔とは違うオーラを放っていることに気付いた。

「…お前は本物の悪魔のようね」

「本物…か…。……………ふ…はははははははははははははははははははは!!!!」

悪魔が笑い出す。それは不気味に感じられるし、怖さも感じられた。

「悪魔には罪人の魂が変化した者と、(いにしえ)より存在する悪魔の2種がある。私がさっき倒した20超の悪魔たちは罪人どもの、いわば下っ端(したっぱ)。お前は昔からいる悪魔みたいね」

「我からすれば、さほどの変わりはない。ただ同じ生き物として生きているだけだ」

「あんなことをしておいて、生きているだけ…ねぇ」

キクリは『赤月』の呪いの一つ、『火の呪い』を使う。悪魔の足から火花が散る。キクリは少し驚いた。本来『火の呪い』は相手に消えない火で燃やすことができる呪い。その力でも、火花しか散らないぐらいの呪いに対する耐久力を持っているということになる。

「……」

キクリは悪魔を睨む。悪魔はにやっと笑った。

「我に呪いは…効かぬ」

悪魔は急降下し、キクリを襲う。キクリは……



 有馬はベッドから出て、床の上に立っていた。しばらく体を適当に動かしていると、純が話しかけてきた。

「もう大丈夫なの?」

「ああ、おかげさまでな」

全快(ぜんかい)?」

「ある程度、は」

「それはよかった!早く()ろう!」

純は有馬と戦いたがっていた。目をキラキラさせて、有馬を見る。

「わかった。外に出るか」

「うん!」

二人が外に出ると、瞬がいた。瞬は有馬に近づき、耳打ちする。

「気を付けてください。私の弟は手加減を知りませんから」

「…どっちが強いんだ?」

有馬は聞かずにはいられなかった。すると、瞬が苦笑いをしながら答えた。

「十中八九、純の方が強いですね」

「マジかよ」

有馬は瞬との戦いでギリギリで勝てた。しかし、純はその瞬よりも強いという。

「まぁ…頑張るわ」

有馬はそう言い、純のいる方へ向かう。

「話し合いは終わった?」

「ああ、待たせてすまない。本気でいくぜ」

「もちろん」

純の気配がより鋭いものに変わった。気配だけなら、オーラだけならリーダーより純の方が強いかもしれない。

「いくよ」

純がそう言うと、両手で土を集め、握る。すると、地面から、刀が飛び出した。それを純はうまくキャッチし、(さや)を抜く。一連の動作を見ていた有馬だが、何がなんだかわからなかった。

「驚いた?僕は伝説上の武器を土から作れるんだ。ただし、贋作(がんさく)だけどね」

「贋作…偽物か。その能力、瞬に似てるな」

「当たり前だよ。だって僕たち、兄弟だから」

純が走る。走りながら振りかぶり、有馬に向かって振り下ろす。有馬はそれを横に跳び、避ける。そして、念力を集中し、エネルギーを放つ。純はそれを防ぐこともせず喰らい、吹き飛ぶ。

「ぐ、ああああーー」

岩にぶつかり、血が(したた)る。有馬は焦った。ガードすると想定しての攻撃だから、ほとんど力を抜いていない。死んでいてもおかしくはない威力だった。

「だ、大丈夫か?」

有馬はゆっくり近づく。すると瞬が叫ぶ。

「まだです!構えて!」

「え」

有馬が驚いた時、純が起き上がる。

「あはははは!!痛い!おもしろい!こうでなくっちゃ!!」

血が地面に滴って、それでも笑う。有馬は少し恐ろしくなった。その瞬間、純が一瞬で近寄る。『縮地の法』だ。純の手には武器を持っていない。なので、手のひらを有馬の鳩尾(みぞおち)にぶち込む。

「が……」

有馬は激痛でしゃがむ。声が出なかった。出そうとしても、空気が出る音しかしない。

「まだまだこれからだよ。有馬さん」

純は有馬の髪の毛を掴み、顔を殴る。

「早く反撃してよ。これからなんだよ」

バキッ

「これからだよ」

バキッ

「早く」

バキッ

「起きてよ」

バキッ

「もう…待てないよ」

ドスッ

有馬の腹部を蹴り上げる。有馬の体は宙に浮きあがる。小柄とは思えない力強さだ。そしてその背中を殴り、地面に叩き付ける。

「ぐふ…」

有馬は気を失っていた。


  過去 2010年 2月

 有馬はベッドから起きて、両親に「おはよう」と言った。しかし、親はいない。彼に両親などいなかった。それに気づいてしまった。今まで見ていた両親は夢。幻。実際はいない。彼がそれに気づいたのはその日だった。じゃあ…彼は何に挨拶をし、誰に育ててもらい、誰によって産まれたのだろうか。彼は知っていた。有馬の親…それは…


  現在

 有馬は目を覚ます。しかし様子がおかしかった。純は有馬を蹴る。殴る。その暴行は止まらない。しかし、有馬はびくともしなかった。まるで死んでいるような静かさ。生きてはいる。しかし、有馬自身ではなかった。その目はまるで獣だった。

「おい」

有馬は純に(たず)ねる。

「俺は、誰だと思う?」

突然の問い。純はいつの間にか、必死に蹴っていた。有馬の様子がおかしいことに気づいていた。そして、なぜだかそれが怖かった。しかし、いくら蹴られようとびくともしない。

「聞いてるんだが、無視か。殺すか」

その声は有馬の声だが、違う。雰囲気がまるで違うのだ。純は冷や汗を流していた。それを有馬は見たのだろう。

「怖いのか?」

有馬がそう聞いてくる。その問いに答えれば自分が食われそうで、純は答えられなかった。

「まるで…」

純の口が開く。

「悪魔…みたいだ」

そう(つぶや)いていた。

この世界では悪魔は生き物のような感覚で出てきます。悪魔は人より強力で、この話を書くにあたって、強力なものに立ち向かう精神を描きたかったのだと思います。そういうことになると、この話では、村長が一番主人公らしいのかもしれません。


えー、まだまだ続きますので、よろしくお願いします

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