表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

そして当日は

さて、当日は一直と恭のお話しです。



 バレンタインの朝。私は朝食のデザートに、那波に教えてもらいながら作ったチョコレートケーキを出した。

「へえ?これを恭が作ったの?ありがたくいただきます……うん、美味しいね」

「エヘヘ、ありがとう。私だってやれば出来るでしょ?」

「なんで?恭は料理嫌いなだけで、ヘタじゃないし」

 えっへん!そうなのよ。料理はただ嫌いってだけで、出来ないわけじゃないのよ、実は。


 那波とルームシェアしてる時も、朝ごはんは私が作ってたしね。

 というのは、那波はどうも朝はちょっぴり苦手で、あの性格と同じく、のんびりしてしまう方なんだって。私は朝はパパッと目が覚めて、シュタッと起きて、とっとと用意してって言うのが出来るから、朝ごはんはいつも私の担当だった。


 今朝もトーストにサラダにスクランブルエッグとベーコン。珈琲になぜか味噌汁。

 そして、いつもはつかないけど今日は特別にスイーツを。那波が某有名菓子店のチョコレートケーキを研究して作り上げたレシピを使ったから、美味しいのは確実。だから、美味しいよって食べてくれている姿を見ると…

 バレンタイン一番乗りってちょっと嬉しいかも~。

 と、にやけてる私を怪訝そうに見ていた一直さんが、

「今日は車で出勤しようか」

 と言い出した。

「え?なんで?」

 今度は私がほへっとした顔をして見ていたのだろう。吹き出しそうになりながら言う。

「バレンタインってさ、いろんな風習があるけど、日頃の感謝の気持ちを贈る日だっていう気がしない? だからさ、今日は帰りにドライブに連れてってあげる。ちょっとした小旅行気分で。それに明日は休みだし」


 そうなのだ。今年のバレンタインはちょうど週末。

 うわー嬉しいな。ドライブも久しぶりだし、けっこう好きなのよね。

「じゃあ、私にも運転させてね!」

 とお願いして、その日は渋滞を考慮して、少し早めに家を出たのだった。


 さすがに我が「ソラ・コーポレーション」。

 今年のバレンタインもチョコがハンパじゃない。私は、そんなに仕事が忙しくなかったので、会社便などで贈られてきた荷物を仕分けしていた。

 ふむふむ。

 今年は一直さん宛が少なめ。よーしよし、昨日の社長の策略が、もう功を奏してる。

 あ、でも、アスラ宛が増えてる。まだ那波と婚約したこと知らない子たちね。

 これは加福さん。こっちは末山さん。やる気いっぱい出して下さいよー。

 あ、これは12階の、とか。

 こんなこと考えてると、なかなか楽しいのよね、仕分けも。


 そして、あっという間に今日も1日が終わり。

 お昼前から一直さんに「今日は定時のチャイムとともに消えるからね」と言われていたので、定時30秒ほど前に机を片付け終え。

 そして……

 私は制服から私服に早着替えコンテストって言うのがあったら、間違いなく優勝するタイムで着替えを終えて、終業3分後にはすでに、一直さんに手を引かれて、全力疾走して地下駐車場に到着していた。


「ハア…ハア……あっははは、こんなに必死で走ったのいつぶりだろ、もう…一直さん、ちょっと、ひ・ひどくない?」

「ハハハ、大丈夫だよ。社長には了承とってあるし」

「!」

 一直さんってば、確信犯~。

 1階のエレベーターホールに降りると、お待ちかねしてる人たちがたくさんいるから、スルーして一気に地下まで降りる作戦だったの。

 で、その理由が「クリスマスに恭を泣かせちゃったからね」って。


 あ。

 気にしてくれてたんだ一直さん。

 ありがとう……


 そうして今、車はベイサイドへ向かっている。

 港の上にかかる橋を通る前、一直さんは通行所のようなところを通って、なにやら受け取っていた。

 不思議に思いながらそのまま乗っていると、橋の真ん中あたりですうーっと車が止まる。

「え?一直さん!こんなところで止めちゃダメよ!」

 私は思わず言ってしまってから、でも外を見ると、他にも何台か同じように止まっている車があるのだ。


「あのね、今日は抽選で100台に限り、10分間だけここに駐車出来るんだよ。ちょっと面白そうだから応募しておいたら、あたっちゃったんだよね」

「そうなの?!」

 さすが一直さん、100台にあたるなんて~。

 でも、車を降りて、ベイコーストブリッジから眺める夜景は最高だった。高所恐怖症気味の私は、足下に海が見えて、フルフルと震えちゃったけどね。

 そんな私を笑って見ながら、怖くないようにと肩を抱いて、それでも10分間を充分楽しんだのだった。


 そしてね。


 思った通り、一直さんは港にそびえるホテルに部屋を予約してくれていた。

 港が見渡せる上階フロア。

 ふと見下ろすと、この前、那波の誕生日に花火を上げてもらった埠頭も見える。なんだか可笑しくてなつかしくて。フフッと笑ってしまった。


 さて、本日のメインイベント。

 車を運転するから、家に帰ってからと思っていたチョコを取り出す。

 珍しくワインが入ったボンボンショコラだ。

「今日はありがとう。お礼に」

 そう言って差し出すと、

「あれ?恭が食べさせてくれるんじゃないの?」

 とか言うから。


 もう、きっとそうくるんじゃないかと思った私は、えーい!と、勇気を振り絞って?

 そのひとつを口にくわえると、一直さんに突撃?していったのだった。


「HAPPY VALENTINE ! 」






ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

いろんな思いのこもるバレンタイン。

ちょこっと遊んでしまいました。

幸せそうな一直と恭を見て、ほっこりして頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ