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元通りの関係?



 キーンコーンカーンコーン……。


「きをつけ! 礼!」

『ありがとうございました!!』


 クラスメイトの委員長の声と、クラスメイト達の礼の声が聞こえ、今日の授業が終わる。

 マナと一緒に竜田を撃退してから一週間がたつ。季節が夏に移行してきたため、外での魔法練習の授業は少々堪えるところがある。

 そして最後の授業が終わった後は、一度教室に戻ってSHRがあるのだが……。


「ここから教室に戻るのって大変なんだよね……」


 いつもそう思う。どうしてスペ組はあの馬鹿デカイ校舎の五階なんかにあるのだろうか。

 アーマ組もその隣だから同情する。それに比べ、イクウェン組とアシス組は二階。サモン組は三階でネイチャー組は四階だ。

 イクウェンメントとアシスタントは準備する物とかあまりないので二階に納まるがサモン組は召喚部屋などいろいろな準備があるために一階使っており、ネイチャー組も同じような物で、自然教室があるぐらいだ。たくさんの植物があるらしい。

 言い忘れていたがそれぞれの階がそれぞれのクラスに関する教室がそろっている。

 だからあまり人がいないスペ組とアーマ組は五階の教室になってしまうと言うことだ。それぞれが一クラスしかないが。


「何してんだリク?」


 いろいろと考えていると、まだ教室に向かっていないいつものメンバーが話しかけてきた。


「いえ……。ここから教室に戻るための魔法があればな~なんて思いまして……」

「……私は〈テレポート・陰〉がある」


 それ以前に白夜は二階ではないか。それぐらい歩いて行ってほしいと思う。


「私はいつも窓から出入りしてるから……ってスペ組は鉄格子がつけられてたんだったね」

「そうなのね?」


 アキが校舎を見ながら呟くと、ハナがアキに訊き返した。


「仕方ありませんわ。リクさんが窓から魔力解放なしで飛び下りるんですもの」

「へぇ。そんなことしたのリク君」

「いや……あれは仕方なくですね……。それに、下にキリさんいたから大丈夫かなって思いまして」

「おかげで俺はいい迷惑だったけどな」


 キリが肩を落としながら答える。

 すると、自然と笑いが起きた。

 そうしていると、ずっともじもじとしていたマナと目があった。


「どうかしたんですか? マナちゃん」

「え!? いや、あの……」


 ちょっと目を落として顔を赤くさせている。そしてチラチラと見てくる。その様子にボクは全く心当たりが見当たらない。


「そういえばリク。お前、どうやってマナを説得したんだ?」


 キリの言葉にマナの肩がビクンと跳ね上がる。


「え? 説得?」


 一体何の事だろうと考えた。すると、マナが神を召喚した時の日を思い出した。

 ボクは別に説得をしたつもりなんて無かったのだが……。


「休んだマナの家に行ってマナを狙う奴と直接対決した日だよ。ったく、そんな面白い奴がいるんだったら俺も行きたかったな……」

「仙ちゃん。聞きたい目的が変わっておりますわよ?」

「って待ってください! どうしてボクがマナちゃんの家に行った事知っているんですか!? 狙う人がいた事も!」


 確か、知っていたのは白夜だけのはずだ。襲ってきた竜田を撃退し、雑賀達に任せた事も、ボクがマナの家に行く事を知っていた白夜だけに話した。


「あぁ。それなら安心してリク君。ここに居るみんなで怪しかった白夜さんを縛りあげて吐かせただけだから」

「……まさか放課後、帰ろうと教室を出たら縄で簀巻(すま)きにされ捕まえられるとは思わなかった」

「ちなみに実行したのはアキ」

「ふふん♪ 情報を扱う者、これぐらい出来て当然よ!」

「みんなして何をしているんですか!?」


 まさか学校でそんな事が起こっていたとは……。


「えっと、説得と言うかボクはただ、マナちゃんにそ――」

「だ、ダメ! リクちゃん!」


 突如口をマナに封じられる。両手でしっかりと止められ、もがもがと喋れなくなる。

 そのマナの変貌ぶりに、なぜかみんなの目が光った気がした。


「……そういえば。……リクちゃんに聞いた話の中でマナを説得した言葉は聞いていない」

「へぇ。なんて言ったんだ?」

「そうですわ。教えてくれてもよろしいではありませんか」

「ものすっごく興味があるわ」

「これは今週のスクープになりそうね……」

「話すのね!」


 ずい、という擬音と共に近づいてくる六人。アキとハナに至っては録音機とマイクまで用意している。


「べ、別に聞かなくてもいいでしょ!! 気にしない!」


 マナが一生懸命ボクの口を押さえずるずるとボクごと後ろに下がって行く。

 押さえつけられている当のボクは乱暴に扱われているので口がとても痛い。そして後ろに無理やり下がられているので首も痛い。


「……〈シャドー〉。……マナを捕まえて」

「なぁ!! 魔法を使うなんて反則だよ!?」


 マナが影に捕まえられボクが解放される。窮屈な状態から突如解放されたと思ったら、すぐに六人に囲まれた。


「さぁ。なんて言ったか聞かせて貰おうじゃねぇか」

「ダメぇ! リクちゃん! 言っちゃダメだからね!?」


 この場合、ボクは一体どっちにつけばいいのだろうか?

 別に、ボクは説得したつもりなんて無いのだが……。素直に思った事を言っただけだし……。


「仕方ないわね……。言わないつもりなら今日家に帰ってカナさんに参加してもらうわ」

「えっとですね」

「リクちゃん!?」


 だってしょうがないじゃないか。母さんだよ? あとテンネントラブルメーカーだよ? あの人まで参加したら変な方向に進みそうだし。


「確か……ボクはマナちゃんに傍に居てほしいと思ってる。マナちゃんはボクにとって大切な人だから……って言ったような気が……」


 ボクはそう言うと、みんなしてポカーンとしたような気がした。

 白夜の集中力も切れてなのかは知らないが〈シャドー〉も消える。

 解放されたマナは顔を真っ赤にして隠している。


「えっと、みなさんどうかしたんですか?」


 さすがに心配になって訊いてみた。

 すると、みんなが変な勘違いをしている事がわかった。



「…………これは聞いてる方が恥ずかしい」

「えっと、つまりリクさんはマナさんと……」

「まさか説得する方法が……だなんて……」

「これはスクープだよハナ!! 今日家に帰ったら早速これを!!」

「そうなのね!! 百合好きにはたまらない情報なハズなのね!!」


 みんなが話している事がわからない……。何か自分は変な事を言ったのだろうか?


「そ、そういう訳だから。ウチは……その……」


 マナが頬を染めながら居心地悪そうにしているが、ボクはさっぱり分からない。


「えっと、ちょっと待ってください。あの、全く理解していないのですが……」

「「「「「「え?」」」」」」


 みんなして固まりボクを見てくる。

 誰かこの状況を説明してほしい……。そう思ったボクにキリが訊いてきた。


「つまりあれだろ? リクはマナと付き合い始めたんだろ?」

「付き合い始めた?」

「だから。彼、彼女になったんだろ?」


 キリがそこまで言ってから。ボクはようやく周りの反応がわかった。


「ま、待ってください!?」


 どうやらみんなしてあらぬ誤解を生んでいるようだ。


「ボクは別にマナちゃんと彼、彼女の関係じゃ……」

「「「「「「「は?」」」」」」」


 うぅ……。みんなのこの視線がちょっと痛い……。


「だって今言ったじゃねぇか。自分の傍に居てほしい。大切な人だからって」


 キリがさも当然と言うように言ってくる。だからボクもそのキリの言葉に同意した。





「え? そうですよ。ボクは大切な幼馴染(、、、)だから傍に居てほしいのどこが告白になるんですか?」





 時が止まった。

 そう感じれるほどの沈黙が続き、風と揺れる雑草の音だけが鳴り続けた。

 先ほどから赤くなっていたマナも、だれしもがカチンッという音が鳴りそうな擬音と共に固まったのだ。


 それから、たっぷりと一分後、六人が全員してマナの肩を叩いて……。




「「「「「「まぁ。ドンマイ…………」」」」」」



 みんなして同情の瞳を未だに固まっているマナに向けていた。




 それから一週間ほど、マナはまた家に引きこもった。

 ボクは家に向かおうとしたが、それは六人に全力で止められた。

 止められた理由は何年経ってもわかる事はなかった……。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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