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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第一章 進軍する者
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元ジーダスの人達は今……


「ささささ、寒い……ですわ……ッ」

「おお俺だって……なぁ……ッ」



 震える二つの声がそれぞれのベットの上から聞こえる。

 午前の三時限目の途中、ベクサリア平原にある森で、吹雪が吹き荒れる。という事件があり、保健室に二人が緊急搬送(?)された。


『リク、やりすぎじゃ』『いくらなんでも、〈フローズン・クリスタル〉をつかわなくても……』

「と、とっさに思いついたのがそれしか……」


 ボクが使った〈フローズン・クリスタル〉によって一瞬にして湖は凍り、木々すらも凍り、土すらも凍った。

 ……確か、マイナス100℃だったような……。


 そんな中、震える二人が大丈夫だったのは、リクの純粋な想い、止めたいと言う意思が働いたためでもある。


「あの、キリさん、レナさん。本当にすみません……」


 ペコリと頭を下げてベットの上で布団を被り、温かいタオルを額に乗せ、窓を閉め、エアコンがついている部屋にいる二人に謝る。

 ちなみに今は夏だ。先月まではまだ春だったため、まだそこまで暑くはないが……。 


「あやまるひつようはないです。『ルール』をやぶろうとしたふたりをただそうとしただけですから」

「いや、あのね? シラ。やり過ぎてしまったことは全面的にボクが悪いんだから……」

「そこはそこ、ですね。とっさでも『魔法』のこんとろーるができるようになるといいですね」


 とっさだからこそできなかったのだが……。

 ボクの隣にいるルナが「できたらすごいのぅ」と呟いていた。

 ふと、時計を見ると、次の授業が始まる五分前だ。


「あの……。ボク、もう行かなきゃ……」

「ああ……」

「いいいってらっしゃい……ですわ……」


 震える声を聞いてボクは保健室を出ようとする。

 すると外に白夜、アキ、ハナが丁度扉を開けるところだったらしい。

 漆黒の髪を揺らすのが白夜で、首にカメラを下げている栗色の眼鏡をかけているのがアキ。いつも元気でいるのがアキの従姉妹であるハナだ。


「おっと。リクちゃん、今帰るの?」

「私達、今来たとこなのね!」

「……(コクコク)」


 三人とも、コーンポタージュを持っていて、合計で六個ある。


「はい。次の授業の準備がまだですので……」

「そっか~。残念。じゃあリクちゃんにはまたあとでいいや」

「でもやっぱ、一杯だけ付き合ってくれると嬉しいのね!」

「……バカを言わない。……リク、これ」


 そう言って渡されるコーンポタージュ。熱いかと思ったけどそこまで熱くは無かった。


『わたしにとってはじゅうぶん『熱い』のですが……』

(いつの間に戻ってたの?)

『リクが扉を開ける瞬間からじゃ』


 なるほど。あの時か。


「白夜さん、ありがとうございます」

「……大丈夫。……礼なら私たちがここに来るのを見越してこれを渡してきた茄波先生に」


 そっか。茄波先生が。


「わかりました。あとでお礼に行きますね」

「……(コクコク)」

「じゃあボクはもう行きますね」


 そう言って彼女たちの横を抜けて行く。

 階段を上がり、三階に着く。自分の教室は五階にあるのでもう二階上がらなければいけないのが大変だ。


「リクちゃん、ちょっと待って」

「グレンさん? どうかしたんですか?」


 ボクの一つ上の先輩で元ジーダスの一人で灼髪でイケメンに部類される人で、実力も保障されているのが彰楼グレンだ。

 保障されている理由は、胸元に付けられているバッチだ。

 そしてそのバッチはボクの右肩にもつけられている事に涙を流したい気分だ。


 ちなみにバッチは決闘に負ければ勝った物に渡る。涙を流したい気分ならばワザと負ければいいと思うだろう。



 ――やりました。実際に。



 一年で実力がキリの一個下の人が決闘を仕掛けてきて、ボクは負けてバッチが継承された。

 その数時間後。キリがリベンジと称して決闘を仕掛けてきた。リベンジならば、ボクも真剣にやらなければいけないと思い、本気でキリを相手にした。ベクサリア平原のかなり見晴らしがいい所での戦いだったおかげで全生徒が注目した。


 その中でボクはキリに勝ったと同時に……まさかのバッチが戻ってきた、というありさまです……。

 まさかこの数時間で実力がキリの一個下の人と決闘して勝ってきて続けざまにボクと決闘しただなんて誰が想像するだろうか……?


 ――閑話休題。


 グレンに途中で呼び止められたボクは、階段を下りてグレンの隣に移動した。


「あ、そういえばグレンさんはもう釈放されたんですね」

「うん。僕達元ジーダス組は元々そういう依頼をしないようにしてきたからね。本部に関わる依頼を」


 つまりボク達に協力してくれた元ジーダス組は形式だけの逮捕だったようだ。

 ボクはそうやって納得していると、なぜか髪が引っ張られるような感覚がしたが、ボクはそのままグレンに質問した。


「釈放されたってことはもう雑賀さんも家に居るんですか?」

「……さらさらしてそうだな……」

「グレンさん?」

「え? あ、う、うん。って違う。雑賀先輩たちの事で話したかったんだ。形だけの逮捕だったけど、一ヶ月あったからね。その間にいろいろと手続きとかしてたんだよ」


 手続き? どういうことだろう?

 髪が縛られる感触がする。


「僕以外はみんな大人だからね。仕事を探し始めようとしてたんだけど、カナさんがスカウトしたんだよ。一ヶ月の間に実力検査を受けてね。僕も受けたんだけど。将来にって。そして全員ロピアルズに入れたんで初の仕事って事でみんな今日は家に帰らないみたいだよ。飲むらしいからね」

「そう……ですか」

「それで、カナさんとユウちゃんもロピアルズの一員として付き合うみたいだから今日は帰らないって伝えてって言われてたんだ」


 と言うことは……。


「今日はソウナさんと二人か……」

「あら、残念そうね」

「そりゃぁ、みんなと一緒にいた方が楽しいですけど……ソウナさん?」

「今気づいたの?」

「どうしてさっきからボクの髪をいじっているのでしょうか?」

「あら、そっち? でもリク君ならこう言う髪型も似合うかなって」


 一体ボクはどんな髪型を……?


「はい、出来上がり」


 キュッと縛られるボクの髪。縛られる感触は頭の左上ぐらいからする。


「あの……。ボク、今どんな髪型をしているんですか? 髪が引っ張られるんですけど……」

「ふふ。自分で触って確かめてみたらどうかしら?」

「……とってはダメなんですか……?」


 ボクが少し様子をうかがう様な目で聞いてみると。


「そしたら一緒にお風呂に入ってくれる?」


 とんでもないことを言いだした。


「どうしてそうなるんですか!?」

「一人じゃ寂しいもの。ユウちゃんが今日はいないし」

「少しくらいは恥じらいを持って――」

「女の子同士なのに恥じらいなんて必要なのかしら?」

「だ、だからボクは~~~~ッ!!」

「ふふ。冗談よ。相変わらずからかいがいがあるのね」


 楽しがる彼女にボクは肩を落とす。


「はぁ……」

「大変だね……リクちゃんも……」


 引きつった笑みを浮かべながらグレンはボクに同情をする。

 グレンはいつも先輩である雑賀やデルタなどに振りまわされているからだろうが……。


「にしてもリク君が悪いのよ?」

「へ? どうしてですか?」


 何か悪いことしただろうか……?


「朝」

「朝?」

「まだわからないの?」


 朝……朝……。確か、起きて……。


「まさかとは思うけど家に居ることを思い出してない?」

「え? 朝って言ったら寝て起きてから……」

「はぁ。そこまで前じゃないわ。三時間ほど前の事よ」


 三時間前? 確かその時間はSHR…………あ。


「思いだしたって顔ね」

「あ、はははは……」


 冷や汗がたらりと流れる。そしたらソウナが顔を近づけて来た。ジト目で。


「朝、私を見捨ててそのまま次の授業の教室に行ったでしょ?」

「い、いやぁ……あれは……」


 ボクが助けようとしても絶対に巻き込まれそうだと思って……。


「レナさんが助けてくれなかったら絶対に私最初の授業遅刻だったわ」

「うぅ……いい返す言葉もありません……」

「と言う事でリク君。今日は一緒にお風呂に入りましょう」

「それは何かおかしいです! どうやったらそうなるんですか!?」

「私の一つのお願いくらい聞いてくれたっていいじゃない」

「だ、だからぁ」


 ボクはなんとか言い訳を続けるものの、最終的にはソウナに言いくるめられてしまって、今日の夜。一緒にお風呂に入る事となってしまった。


 しかし、さすがに裸はマズイと思ったので、水着は必ず着て欲しいと懇願した所、何とか聞き入れてくれた。

 このやり取りの後、次の授業をやる教室まで走っていかなくてはいけなくなったことは言うまでもない。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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