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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第五章 爓巫
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強敵



「〈アイスフロア〉!」


 ボクは手を床に一瞬だけ触れる。するとそこを中心として一気に氷が広がり、部屋の床すべてが氷に包まれる。


「ハッ。滑る床にしてどうするんだ?」


 竜田は剣を大きく横に振りかぶると、ボクが接触するタイミングで振ってきた。ボクもツキで応戦。剣と刀の甲高い音が響く。


「せいっ!」


 ボクは床に足をつかせて、さらに刀を押し込んだ。すると竜田の剣をいとも簡単に押し込んだ。


「チッ。氷の所為か……って聖地様は凍りで滑らないので?」

「ボクが発動した魔法です。滑るはずが無いでしょう?」


 キィンッ。ボクは竜田を刀で弾き、飛ばす。


「つまりここは聖地様のフィールドって意味か」


 竜田は壁まで滑ると跳躍し、壁を足場にして跳んできた。

 剣の先を氷につけて近寄ってくる竜田を、ボクは弾き、そして追撃する。


「〈氷柱〉!」


 氷を床から突き出し、竜田に向かわすが、竜田はそれを真っ二つに斬る。


「悪いが俺の剣からは逃れられねぇぜ? 〈浸透し――」

「〈レイボウ・アルファ〉」


 竜田が魔法を放つ前に、ルナが魔法を放つ。

 光の矢が竜田の胸元めがけて飛ぶ。


「おわっ」


 なんとか体をひねらせてかわすと、その場に着地する。

 そこでボクはもう一度近づき、刀を水平に振る。

 竜田がそれに合わせて剣を斜めに振り上げてボクの刀を止める。

 もう一回押し込もうとするが今回は全く押せず、その代わり竜田が剣をワザと引いてボクの横に回り込む。


「〈二の太刀 雪麗〉!」


 溜めていた魔力を発動させ、横に回った竜田に連撃を放つが、それを魔法も使わずにすべて防がれてしまった。


「どうして……ッ」


 いつもより〈雪麗〉の威力と連撃数。何より速さが上がらず、疑問を浮かばせる。

 これも竜田の魔法かとも思ったが竜田がそのような魔法を発動しているのであればルナが消してくれている。 一体、何が……。


「聖地様よぉ。どうしてこのフィールドで氷の魔法を使うかね?」

「え?」


 このフィールドで?


「別に気づいていないならいいけどな!! 〈浸透真〉」


 竜田がその場で剣を大きく振りかぶり、振るってくる。

 白夜の、竜田は距離が関係ないという言葉をとっさに思い出し、ボクはその剣が来るであろう場所を刀を置く。すると剣がボクの方に向いた時に刀がキィンッと音をならせた。


「ハッ。勉強してきてるじゃなないか」

「くッ。〈アイスソード〉!」


 ボクは氷の剣を複数作り、にやけた竜田に向かって同時に放つ。だが、竜田にまで到達する前に……〈アイスソード〉が自然と消えた。


「え!?」

「リク! この黒炎の中で氷魔法は意味が無いぞ!?」


 ルナの声を聞きハッと辺りを見る。そこはところどころの壁が黒炎で焼かれていて、この部屋の気温が真夏以上になっていた。

 あの男が気づいていないって言ったのは……氷がこの中では使えないと言う事。

 すっかり黒炎の事を忘れていた。床に発動した氷の床もいつの間にか水になっており、ある所はすでに水が蒸発して乾いていたりもしていた。


「フィールド状況を見るのは基本中の基本だぜ聖地様よぉ!」

「!?」


 竜田が剣を振り、ボクがそれを防ぐが少し気づくのが遅かったせいで完全に威力を相殺出来ずに吹き飛ぶ。


「リク! 〈テレボート・陽〉!」


 ボクの飛ぶ先にルナが突如現れ、受け止める。


「安心してる余裕ないぜ?」


 竜田がいつの間にか近づいていて、剣で突きを放ってくる。


「〈ムーンカトプロトン〉」


 それをルナがツキの魔法で防ぐ。するとその魔法は反射の魔法だったのか、威力を防いだ分だけの威力が竜田に返った。


「くッ。これも神特有の魔法か」


 竜田はもろにくらうとそこから少し後ろに飛ぶ。

 ボクはそこでルナにおろしてもらう。


「どうしよう。ルナは竜田に攻撃できてるけど……」

「仕方ないのじゃ。リクはまだ実戦経験が浅いからのぅ」


 やはり実戦経験の差か……。でも、まだいける!


「〈一の太刀 鏡花水月〉」


 ボクは幻影を使うと、魔力をさらに練る。


「〈二の太刀 雪麗〉!」


 ボクは魔力を爆発させて黒炎の道を走り抜けた。


「ふん。妙な魔法だ!」


 竜田がボクの幻影を軽く斬ると、その後に……。


「姿が見えねぇなら全部斬ればいい!! 〈浸透真〉!」


 竜田がめちゃくちゃに剣を振ると、そこらじゅうの物という物を斬り始めた。

 そこにはボクやルナも混ざっていたのでボクはそれを防ぐしかなかった。


「フハハハハハハハハハハ!!!! 見つけたぞ!!」


 笑いながら振るっていた剣を止め、ボクに向かって剣を振る竜田。ボクは刀で防ぐしかなかったが防いだところを足を使われ腹に竜田の蹴りがもろに入る。


「ぐぅ」


 今度こそ壁に激突し、黒炎の燃える感覚が背中を伝う。


「リク! おのれ! 〈レイボウ・アルファ〉!」


 光の矢が竜田に向かう。


「さすがにヘカテの魔法はくらいたくないね」


 竜田はそれを回避してルナに向かって走る。


「ツキ、シラ。まだいける……?」


 ボクは炎を雪で消すと、二人に聞く。


『あたし達は大丈夫だけど……』

『しばらく『ヘカテ』にまかせたほうが……』


 それでは、ボクがいる意味が無い。

 足に力を入れ、丁度遠くの方の横を通って行く竜田を見据える。


「はぁ……はぁ……。〈二の太刀 雪麗〉」


 ボクはさらに刀にも莫大な魔力を溜める。そしてツキを鞘に納める。


「ここからなら……一瞬で詰めて攻撃できるよね?」


 自分にそう言い聞かせ、爆発的な魔力をすべて脚に溜めた。


「あ?」


 莫大な魔力を感じてか、こちらをチラ見する竜田。その時をねらって――。

 ボクは竜田との距離を完全にゼロに持ちこんだ。


「ハッ。テレポートでも使えたか?」


 余裕そうに剣を上段から振り下す竜田。

 だけど、その笑みはすぐには持たなかった。


「夢幻の幻想……。〈三の太刀……」

「!」


 ボクは鞘からの振り抜き、居合切りを焦っている竜田に放った。

 刀は簡単に竜田の横腹を斬り、竜田が振り斬る前には後ろにボクの姿があった。


「……月華氷刃〉」

「なんだ、この魔力――!?」


 ガ、キィィンッという激しい音が鳴り、氷がこの部屋のすべてを包んだ。一番大きな華が竜田を中心に空に咲き、この部屋のすべてを氷で包むころはこの部屋すべてが氷の花と空に満月が現れていた。



「〈氷華の月夜セレーネ・アントス・ニクタ〉」



 この部屋の時が止まったように、燃えていた黒い炎もすべてが凍りついた。

 一際大きな華の中に、竜田が完全に閉じ込められ、動く気配が無い。





「まさかあの状態から当てられるとは思ってもみなかったぞ! さすがじゃリク!」


 ルナが喜びながら走り寄ってくる。ボクは少しだけ微笑みかけると、体が動かず、その場に倒れそうになる。


「リク!」


 ルナが手を伸ばすが、その前に……。


「まったく。あたしが契約した主はこんなにも無茶する人だったんだ。知らなかったなぁ」


 ツキがボクの体を抱いて床に倒れるのを防いだ。


「あはは……。ごめんね」


 体中が痛い。なるべく攻撃を回避していたはずだが、それでも一撃一撃が重くて、どうもすぐに治る気配が無い。


「でも……とりあえずは安心じゃのぅ。さすがの竜田もあれを受ければひとたまりも……」


 そうルナが呟いた時――ピシッ……。


「え……?」




 パリィィィンッ!!




「あぁ。クソッ。油断した。いってぇし寒いなぁ。聖地様? まさか氷に閉じ込められるなんて思ってもみなかったぜ」


 大きな華が崩れ、その根元に氷で閉じ込められていた竜田が、ヒビの入った黒いマントのような物を消し、首を回しながらこちらを睨みつけてくる。


「うそ……。なんで……」


 ありえないと言う風にボクは乾いた声を少しだけ出せる事が出来た。


「聖地様の本領は居合切りでありましたか。なぁんてな」


 足をゆっくりと前に出し、一歩ずつ、一歩ずつボクに近づいてくる竜田。ボクは体が完全に動かず、それを見ることしかできなかった。


「まさか魔力切れか? 聖地様にも魔力切れがあるんだなぁ。まぁ知ってたが。しかしあれだ。この魔法。フィールド魔法・天性型が発動されることはわかってたが……これほど強力だとは思わなかったぜ。とっさに〈悪魔の衣〉を発動していなかったらやられてたな」

「まだお主動けたか! 〈レイボウ・アル――」

「引っ込んでな」



 ガァンッ!



 頭を思いっきり殴られ、転がって行くルナ。あまりにもその一撃が重かったためにルナの意識が飛んでしまったようだ。


「ルナ!! こいつッ!」

「ほぉ。〝セレネ〟もいたか。そうか。この魔法は月属性が混ざってたか。どおりで〈悪魔の衣〉がここまでのヒビが入る訳だ」


 月属性……? それは……一体……。

 ボクが知らない属性だ。神特有の属性なのかと思うが、今はそれどころではなかった。

 ツキがボクと竜田の間に立ちはだかる。


「シラ! 今すぐリクを連れて離れて! 満月が出てるこのフィールドならあたしの圧倒的有利だから!」


 ツキの命令に、シラが腕輪から人型となり、ボクの体を抱きかかえる。


「いわれなくてもそのつもりです!」


 ボクの体を持ち、竜田から一刻も離れようとして足を進めるシラ。


「まだいたか。だが、それで最後らしいな。最後が冬の女神、〝白姫〟だとはな。一番の雑魚か」

「「「!!」」」


 竜田がいつの間にかツキの目の前ではなく、ボクとシラの目の前に立っていた。

 しかも、その剣を上段に構えて。


「さすがに頭来たわ。今ここで聖地の器ぐらい壊しても文句言われねぇだろ」


 竜田の目が本気だ!

 ボクはその姿に体が動かないとは別に硬直する。


「さ、させません! 〈アイスランス〉!」

「〈レーザー〉!」


 氷と光が竜田に向かう。


「邪魔だ。〈悪魔の刃〉」


 ブゥン。という音が鳴ったかと思うと、氷と光が真っ二つになっており、その剣を振った直線状に居たシラの右脚がザックリと斬られた。


「くぅ……。『脚』を……」

「さぁ。死にさらせや」

「だからさせないって言ってるでしょ!」


 ツキが刀を作り、竜田に猛突進。それを竜田は冷めた目で見て、剣を数回振るった。


「こんなので!」

「〈浸透真・黒〉」


 キィンッと言う音が鳴ってツキの刀と竜田の剣が止まる。だが……ツキのその肌にいくつもの斬れ傷が現れた。


「な……ッ!?」

「振れればこれはお前を勝手に切り刻む。どいていろ」


 ガァンッ!


「きゃぁ!」


 ツキも蹴り飛ばされ、もうボクとシラを守る人がいなくなってしまった。


「まだ……わたしが……」

「どうせ動けない。その翼で飛ぶか? 別にいいぞ? どうせ撃ち落とすからな」


 竜田の失神してしまいそうな殺気に、シラはおびえたのか脚が持たなかったのか、その場に膝をついてボクを隠すように背中に回した。

 上段に構えた剣がしだいに漆黒に染まって行く。

 魔力が見えているボクは、その剣がもう黒い禍々しい物の何かとしか認識出来なくなってしまった。


「じゃあ、そろそろ死ぬか」


 竜田が剣を振りかぶる。



「……ごめんなさい。りく……」

「ううん。シラの所為じゃないよ……。ありがとね」



 シラがボクに振り向いて目を瞑って抱きつく。

 ボクも、すぐに来るだろう痛みに、目を瞑ってその時を待った――。







 ガ、キィンッ。






「「え……?」」








 突如、何かの金属が音を鳴らした事により、ボクとシラは顔をあげた。

 するとそこに……剣を持っていない竜田が苛立たしそうにボクの後ろを睨みつけた。


「誰だ……テメェ……」


 ボクはその時に、助けられたのだと言う事がわかり、その助けてくれた人へと視線を向けた。

 そこに居たのは……。









「すまないな。義妹である愛しのリクちゃんが剣で一生物の傷つけられそうなのを、俺が黙って見てるわけがないだろう?」



 枯れ葉色のコートを着た男の人が、右手に持っている拳銃をこちらに向けていた。






「雑賀……さん……」

さてはて……やっと三人が到着! どうなる事やらってところでぇ……。



ヒスティマ人気投票の結果発表!!


 第10位! 投票1票!


赤砂 ユウ

篠桜 真陽

ルナ『ヘカテ』

天童 雑賀




第6位! 投票2票!


赤砂 リク

赤砂 カナ

キリ(女性ver)

実寝 寝虚



さぁ次からはベスト3ですよ!(かぶりアリw)


第3位!! 投票3票!



仙道 キリ

レナ・ルクセル

デルタ・インフォルダ



第2位! 投票4票!



長城 妃鈴



妃鈴「私ですか? ありがとうございます」



さて、妃鈴さんから一言もらえたところで第一位は!!



投票数5票!



口無 白夜さんです!!



……あれ? 白夜さん? 白夜さん?

おっかしいな……さっきまでここで待機しててって言ったのに……。


白夜「……何?」


おわっ! っていったいどこから現われてるんですか!


白夜「……何処って……影から」


いや、わかってますけど! そう言う事を聞いているんじゃなくて! どうしてそこから出てきてるのって言っているんですが!?


白夜「……リクちゃんの絶好のシャッターチャンスだった」


何の話!? それよりも、白夜さん。人気投票で一位になったコメントをどうぞ。ほら。



白夜「………………………………………………ない」


無いのかよ!!(ビシッ!



投票してくれた皆様、ありがとうございましたぁ。

出来れば、今回投票してくれなかった皆様の投票も頂けたらなと思います。

それでは、本編を最後まで楽しんでくださいね!



誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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