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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第五章 爓巫
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黒く燃える室内で



「しっかし、まさか本当に悪魔を従える事が出来るだなんて思ってもみなかったな……。そいつ、やっぱり才能あるわ」


 竜田が顎に手をやりながら言うのをボクは無視して、竜田と戦うための作戦を練る。

 一体一では昨夜の二の舞になってしまから、どうしても神の何人かを外に出して援護してもらわなければいけないのだが……。

 ルナやツキは援護してもらった事が無いので少し心配だ。

 それに比べてシラは一度援護してもらったから信用がある。

 どうするべきか……。


「おいおいダンマリ? 俺、そう言うのあまり許せないんだよなぁ。なぁ、ちょっとは反応してくれないか聖地様?」


 竜田が少しいらつき気味に言うので、ボクは素直に思った事を口にした。


「じゃあ……ここから黙って立ち去ってもらえませんか?」

「あ、それは無理」


 即答されたが、想定内だったので別に驚きはしない。

 やはり、ここはシラを援護に……。


(シラ、外に出て援護頼めるかな?)

『わたしがですか?』


 シラが驚いたように声を出したのでボクは不思議に思った。


『リク。ここは妾が外に出た方がいいと思うのじゃが……』

(え? ルナが?)


 今度はボクが驚いた。

 ルナは外に出る時に余計な魔力を使うと言ったのだ。シラやツキはそんなことは無いのだが……。


『うむ。妾以外のシラやツキはまだあ奴に姿を見られておらん。ここで逃がせば、次に来たときにさらに対策を練られてしまうと思うのじゃ』


 そっか……。でも、そう言われるとすでにルナの対策がされていると思うのだが……。

 竜田を見るけど、昨夜とあまり変わっていそうにない。

 そう言えば竜田はまだ昨夜から帰っていないという。ということは対策が出来るだけの物を用意できていないのかもしれない。


「わかった。ルナ、援護お願い」

『うむ』


 ルナが答えると、光が出てボクの隣に並んだ。


「えぇ。またその神かよ……。〝ヘカテ〟はこれまで一度も目撃情報が無いほどレアな神様だからいつ見ても嬉しいんだけどよ。今は他の神様出そうぜ?」

「嫌です。貴方に見せる神様なんていません。ルナは貴方の前に出てしまったから、こうして援護させるだけです」


 厳しく言っておく。


 みんなには言っていなかったが、この人は……マナ同様、悪魔を持っている。ルナに教えてもらった。今ならわかる。この男の魔力がどうしてこうも黒いのかが……。


「ちぇ。まぁいい。用があるのはその娘だけなんだ。聖地様はどいてくれませんかね?」

「嫌です」


 ボクは先ほどの竜田のように即答し返す。それに竜田が舌打ちをする。


「ったく……そこをどいてくれなきゃ……聖地様と言えど、殺すぞ?」


 竜田のねっとりとした殺気が放たれると、ボクは少し冷や汗をかく。渇いた喉を、生唾を飲み込んで潤す。

 ルナはボクから一歩前に踏み出し、竜田を見据える。


「それではマズイのではないか? お主、聖地を知っている所から察すると、最終目的はリクではないのか?」


 そうだ。どうして竜田が初めからボクの事を聖地様と呼ぶのかが疑問に思っていた。

 じゃあ……ボクを殺すというのはハッタリ?


「……チッ。まぁそうだよ。聖地は最終目的だ。だが今はその時じゃねぇ。まだ集まっていないんでな」

「集まる?」


 竜田はボクの質問を鼻で笑って誤魔化した。

 言うつもりが無い事にボクは頭の隅で別にいいかと思い、追求をしなかった。


 すると、やっとのことで、ガードマンがこの部屋に入ってきた。

 マナを抱きかかえているボクとルナ、そして対峙している竜田を見てすぐに戦闘態勢へと入っている。


「侵入者が二人? そのことは連絡が来ていないはずだが……」


 ボクは、竜田から目を離さず、抱きかかえているマナをガードマンの傍まで運んだ。


「お願いです。今すぐマナちゃんをここからなるべく遠くへ運んでください。ボクはあいつを食い止めている間に」

「は? 君は何を言って……」

「早く! それと、他の人はあの人に手を出さないでください! マナちゃんを守るためにマナちゃんの護衛に回ってください!」


 ボクが少し焦ってそう言うと、ガードマン達は何が何だかわかっていないような顔で、マナを受け取る。

 だが、そのすぐ後にボクはガードマン達に武器を向けられる。


「悪いが、君みたいな侵入者の言うことをそう易々と聞くことは出来ないな」


 確かにこれは仕方のない事かも知れない。だが今は何もすること無く大人しく待っている竜田がいつ動き出すかもわからない状態だ。

 だからどうしても聞いてもらえないといけないのだが……。どうやったら……。


「君達。その子から武器を下げなさい」


 ガードマン達の後ろから聞こえてきた声。それはここにマナがいる事を教えてくれた料理長の声だった。


「料理長さん? どうして?」

「その子は真陽様の一番の御友人であるカナ様の子だ。あの人の子だから、安心してその子の言葉を聞いてやりなさい」


 料理長の言葉に、ガードマン達はハッと息をのんでボクの姿をマジマジと見る。


「そ、そう言われて見れば面影のある……」

「綺麗な白銀の髪はあの人の……」

「あの人の子ならば納得が出来る……」


 ボクは多くのガードマン達の視線にむず痒さを感じ、居心地が悪くなる。

 それと、最後の人。母さんの子だからって納得しないでください。母さんはここでも何かをしているのですか……。どうしても最後の人の言葉には心でツッコンでしまった。


「わかった。君の言うことを信用しよう。だが、君一人であの男と戦うつもりか?」


 話しかけたガードマンが心配そうに訊いてくる。ボクはガードマンに向かって首を縦に振る。


「はい。貴方達がいても、失礼かもしれませんが、邪魔にしかならないと思いますので……」


 ボクは申し訳なさそうに言う。ガードマン達もそれで納得したようにして、マナを抱えてすぐにここから立ち去ってくれた。


「料理長さん……。ありがとうございます」

「気にしなさんな。……死ぬんじゃないぞ?」

「はい」


 料理長が背を向けて走って行った。


「やっと終わったか?」


 竜田が寝そべって、あくびをしながら言ってくる。


「待っていてくれた事には、ありがとうございます」


 ボクは素直に頭を下げる。

 その反応に竜田は寝そべっている状態から飛び起きる。そして腰から抜いた昨夜の剣が手に握られる。昨夜の戦いで剣に距離が関係無い事がわかった。そしてたぶんその能力が……。


「貴方のシャドウデビルの能力が、距離を無くすんですね?」

「ほぅ。シャドウデビルそれぞれ能力が違う事も知ったか。いいねぇ。他に何を知ってきたんだ?」


 感心したような竜田がボクにさらに訊いてくる。

 ボクはそれ以上はあまり知らない。知っているとすれば、それは『英雄姫』のみ。だから、ボクは無言でいた。


「ハッ。まぁいい。それじゃあ……そろそろ殺し合いましょうか聖地様? 昨夜、聖地様を剣で傷つけてからこいつが聖地様の血をせがんでよぉ。大変なんだぜ?」


 そう言いながら剣を肩に乗せる。

 ボクはツキを右手に持ち、全身に魔力を巡らせ、身体強化を限界まで引き上げる。


「…………。ルナ、援護お願いね」

「うむ。任せておけ」


 ボクはルナの返事を聞くと、その場を跳んで一気に竜田との距離を詰めた。



誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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