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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第五章 爓巫
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最強の剣



「これ、名前はともかく、名字ってライコウ?」

「……違う。……それはデンコウと読むらしい」


 しかし……ライコウだったら最近聞いたような事がある気がしたが……。


「って違います! マナちゃんの悪魔の事を知りたいんですけど……」


 物語としては泣ける話だったが、マナの悪魔の事を知りたいのだ。

 どこにも載っていなかったような気がするが……。


「……古書の物語の後にその『英雄姫』が使っていた神具や魔具が載ってる」


 神具や魔具?

 そう思ってページをめくる。するといろいろな単語が並べられ、そこに説明が載っていた。


 『英雄姫』が良く好んで使っていたと書いてある『エンジェルスソード』と『ホーリーソード』。防具は魔法鎧の『バトルドレス』だと書いてある。

 その中で、一つ、『シャドウデビル』と言う明らかに悪魔だろう名前が書いてあった。


「あの……これは?」

「……影の悪魔。……もしくはドッペルゲンガー。……聞いたことは?」


 ドッペルゲンガー。確かそれは、その人とまったく同じ外見になって、本物を殺すと言われている悪魔? 幽霊? 妖怪? 確か、そのような物だと思った。


「……正確にはドッペルゲンガーに近い物。……この古書にだけ記されてる特殊な悪魔」


 この古書にだけ……。白夜の言葉を繰り返して、ボクはそのシャドウデビルの説明を読んだ。



 シャドウデビル:『英雄姫』が最も使わなかった最強の剣。この武器は産まれたころから一人一つずつ持っている影の悪魔であり、人それぞれ能力、形が違う。悪魔として憑かれたら克服しなければ呑まれてしまう。



「悪魔として憑かれたら?」


 初めは悪魔では無かったという事なのだろうか?


「……リクは陰陽って知ってる?」


 白夜が聞いてきたので、ボクは戸惑いながらも頷いた。


「……この悪魔の事を簡単にいえば、陰陽の陰が陽を取り込もうとしてる状態。……そして陽が陰を克服。……つまり従えれば陰という部分を使う事が出来るという事」


 この悪魔は簡単にいえば自分自身の半分だという事か……。

 しかしそれがなぜ最強になるのだろうか?


「この『英雄姫』が使ったシャドウデビルは最強って書いてありますが……どうして最強になんですか?」


 まだよくわからない所もあるが、とりあえずどうして最強なのかを聞いてみた。


「……それは能力を読めばわかる。……一緒に書いてあるのに……よく読んだ?」


 そう白夜に言われたのでボクはもう一度読むと、最強の剣の後に書いてあった事を注意して読んだ。



 この武器は万物を斬り裂く能力を持ち、最強の矛と比喩される。この武器の前には万物をも盾にすることができない。



 ……これって強すぎないかな?


「あの……これ本当なんですか?」

「……おそらく。……私は見たこと無いからわからない」


 しかし……これが人を殺す事を快感とする人が持ったら最悪の事になっていたと思う。

 そういえば、この悪魔が憑く条件が書かれていないような気がする。克服すればその悪魔を使えるような事は書いてあるのに憑く条件が書いていない。ボクはそれも知りたかったというのに……。


「……そろそろ寝る。……明日は学校がある」

「そうですね……」


 外を見ると、もう何処も明りが無く、完全な夜に包まれている。だから白夜の言葉に条件反射で返したのだが……。これでいいのか? と心で自問する。

 そして、自分はこのままではよくない事だと自分で言い聞かせた。


「あの……」

「……言わなくてもわかる」

「え?」


 白夜の反応がかなり早く返ってきたのでボクは目を丸くする。

 そして白夜は一枚の紙を渡してきた。


「……リクにはこれを渡しておく」

「なんですか? これ……」


 紙を見てみると、そこには地図が書いてあり、矢印で引っ張って『ココ』と記された所がある。

 大きな範囲で書かれており、ここから少し遠い場所だった。


「……マナの家の場所。……知らないでしょ?」


 心なしか、微笑んでいるようにも見える白夜の無表情に、ボクは胸が熱くなる。


「白夜さん……。……ありがとうございます」


 ボクは紙を受け取り、そっと白夜に笑顔を返した。





 ――パシャ。





 …………ん?


「あの……その携帯なんですか?」


 白夜はいつの間にかスマホをボクに向けて写真を撮っていた。

 だから訊いてみたのだが……白夜から返ってきた言葉はボクにとって聞き逃せないものであった。


「……リクちゃん専用携帯式カメラ」

「はい!? どうしてボク専用!?」

「……ファンクラブの、ファンクラブのためによるファンクラブ的なカメラ」

「そんな意味不明なカメラなんてありません! 大体それ、スマホじゃないですか!」

「……携帯式カメラ。……スマホに似せてあるだけ」

「似せてあるだけ!? 嘘ですよね……ってそんなのはどうでもいいんです! ボクの写真を撮ってどうするんですか!?」


 すぐに消してもらいたいが、ボクの写真を撮ってどうするのかだけは訊いておきたかった。

 そして、白夜は一言だけで返してきた。


「……売れる」

「誰に!? どこに!?」

「……あまり知らない方がいい」

「ボクが知ると何かマズイ事でもあるんですか!?」

「……マズイ。……主に、買った人の命が」

「ボクがそんな攻撃的とでも!?」


 ボクがそう言うと、白夜は「はぁ」とため息をついて話した。


「……じゃあ教える。……まず必ずデルタが――」

「よし。今度会ったら吐かせて何時間も説教してあげますよ……」


 ボクはどうやってあの変態を懲らしめてやろうと思いながら拳を握りしめる。

 白夜はやっぱりとでも言いたそうな顔でボクを見ていた。


「……やるなら死なない程度に」


 違った。白夜も賛成してくれたようだ。だったら遠慮はいらないだろう。今度会ったら雑巾にでもしてあげよう。

 ボクの決断は早かった。


「じゃあ、他は誰なんですか?」


 ボクは笑顔でそう言ってあげた。

 すると白夜は少し後ずさりをした。


「……リク……怖い……」

「はい? 何か言いました? 他の人は誰ですか♪」


 白夜の言葉が聞こえなかったので、今度は最後の言葉を弾ませて言ってみた。


「……雑賀――」


 次会ったらあの変態もデルタと一緒にお仕置きする必要があるようだ。


「……カナさん――」


 母さんもかと思いながらボクはいっそう手を握る力を込めた。


「……ユウ――」


 来るとは思っていたけど、本当に来るとは思わなかった。そういえばユウは元の世界でも重罪を犯していた事を忘れていた。それ含めかなりのお話が必要だろう。


「……ロピアルズのみなさん――」


 今後、ロピアルズとの付き合い方を考えよう。


「……後は……商売に関わるから言えない」

「白夜さん? それは今からボクのお話を聞きたいという事ですよね?」

「……(フルフルフル」


 白夜は全力で首を振った。その顔は無表情だがおびえている様子がよくわかる。そう考えるとボクも白夜の表情が読めてきた。それは白夜との絆が深まったということなのだが……今はそれは関係が無くなった。


「それじゃあ白夜さん♪ この服も着せた事も含めて、ボクとお話しましょうか♪」


 ボクは着ているネグリジェをつまみながら言った。


「……な、何時間ぐらい?」


 白夜が恐る恐る訊いてきた。


 だからボクはどこに居てもわかりやすい時間を教えてあげた。


「もちろん♪ 朝日が昇るまでですよ♪」






 次の日、桜花魔法学校の食堂で白夜は語る。


 初めて受けたリクのO・HA・NA・SI☆は、初心者にはとても過酷なものだったと……。


白夜「……足の痺れが取れない……」

レナ「その割には平気そうな顔をしておりますが……」

白夜「……平気じゃない。……レナも受けてみればわかる」

レナ「受けてみたくはありませんわね……さすがに……」



誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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