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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第五章 爓巫
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「……リクのネグリジェ可愛い……いつもそれで寝てるんだ」

「白夜さんが着せたんでしょう!?」

「……私は着せてない。……あくまでリクちゃんが自主的に」

「そうですけど! 確かにそうですけど! 用意したの白夜さんでしょう!?」


 部屋に着いた途端のやり取りだった。

 顔が赤くなる。他の服は無かったのかと言うが、残念ながらボクの制服は今洗ってるから貸すような服が無いと言う。

 絶対に嘘だ……そう思う。


「白夜さん。いつまでもリク君でからかわないの」

「……ごめん。……次はソウナも誘う」

「そう言う問題じゃありませんよ!?」

「リク君。そのネグリジェ、とってもセクシーだわ」

「セクシー!? 何言ってるんですか!?」

「でもリク君にはどっちかと言うと、マニア向けかしら」

「マニア向け!? それどういう意味ですか!?」

「何言ってるんですの。リクさんはわたくしの家でメイドをするのですからそんなのに差し出しませんわ」

「レナさんまで入ってくるんですか!? ボクはしないって何度言ったらわかるんですか!? それより! いつまでこんなことするんですか!」

「「「夜が明けるまで」」」

「時間かけすぎです!!」


 はぁ……はぁ……と肩で息をしながらボクは一度冷静になる。

 今からあの男と、マナの話をするのはずだ。

 いや、するからこそ……少し深刻な話になるからこそ、こういうバカ話を先にするのかもしれない。


「そうですわね。そろそろ……」


 レナの言葉で、全員がソファや床に座った。

 そしてソウナが話をきり出した。


「それじゃあ、単刀直入だけどあの男の事を誰か知らないかしら?」

「たしか……漆原竜田って言ってた……」


 マナがソウナの質問に答える。

 そうか、最後にあの男、竜田がマナに近づいたときに名乗ったのか。

 そのとき以外には話す機会なんてなかっただろう。


「漆原竜田……。誰か聞いたことは?」


 ソウナが全員の顔を見ていくけど全員が首を振った。


「私も無いわね……。これまでずっと隠れてたか……それとも」

「……この国の者ではない可能性も」


 ソウナの言葉に割って入った白夜の言葉に一同が頷く。

 この国で暴れるならばロピアルズを警戒しなくてはいけない。

 ロピアルズはこの国を指揮しているといっても過言ではないほどの大企業だ。この国の者ならば喧嘩を売れるほどの自信を持った力の持ち主か、ロピアルズを知らないのか……あるいは、敵国の人……ってあれ?


「あの……。ボク、他の国の事とか全く知らないのですが……」


 他の国など訊いたことが無いボクは、そのことを質問してみた。


「知らないんですの? まぁ無理ないですわ。この国のことはどれくらい?」

「えっとロピアルズが一番の企業で、この国は基本自由だと」

「それくらい知っていれば八割正解ですわ。ですが、一番重要な部分がありませんから五割ぐらいでしょうか……?」


 一番重要な部分? それはつまり、この国の一番の強み……と言うことなのだろうか?

 ボクは疑問に思って、レナの言葉をしばし待つ。するとレナは白夜に紙と書く物が無いか訊いて持ってこさせた。


「いいですか? まず、この国の名前は『ライコウ』。いつからこの呼び方をしたのか、どうしてこの国だけ(、、)ある程度自由なのかは謎に包まれていますわ。ですから追及はしないでもらいたいですわ」


 レナが紙に『Raikou』と書き、そこに呼び方と自由を隣に書いてハテナを矢印で引っ張った。


「だけ?」

「ええ、そうですわ。いい所に気がつきましたのね」


 すると今度は『Raikou』と書いた場所の下に敵国と書く。


「まだあの男が敵国の者かどうか……その敵国の国はどこかわからないからこう書かせて貰いますわ」

「それはつまり、この国以外が含まれるってこと?」

「ある数国を抜かしてすべてですわね」


 数国って……この国は同盟か何か組んでいるのだろうか?

 すると、レナはまた敵国と書いたその隣に自由と書いた。


「この国、『ライコウ』は民主政……と言えば分りやすいですわね。自由国なんですの。この敵国は王政で、民の自由が限られますの」


 レナは自由と書いた上からバツ印を書く。

 しかし、自由を制限されると言うのは、かなり酷なのではないだろうか?


「ですが、民主政なら他の国もありますわ」

「え? じゃあだけじゃないってことですか?」


 それだとさっきの話とまるで変わってくるのだが……。

 するとレナは得意そうな顔をした。


「簡単ですわ。この国だけの強み。それは、この国が殺しを良しとしない国だからですわ」

「それって普通なんじゃ……」

「普通ではないわ」


 ソウナが口を挟んできた。それも、真剣な瞳になって。


「リク君はまだ向こうの世界から来て一カ月しかたってないけど……この国ではね? 殺して当たり前の世界なのよ」

「そんな……」


 どうして……。人を殺したって何も得しないし、嫌な思いしかしないじゃないか……。

 そんなボクの心情を察してか、マナが教えてくれた。


「ウチも初めは信じられなかったよ? でもね。過ごして行くうちに、あぁ。この世界はこれが普通なんだなって嫌でも思っちゃった」


 目を落としながらいうマナの言葉には確かな説得力があった。

 ボクがいたこの国がこの世界で言うおかしいと言うものなのだろうかと思ってしまう。殺戮の世界だなんて……。


「……でも、こんな世界を平和にしたと言う神話がある」

「神話?」

「そんな話があるの?」

「え? みなさん知らないんですか?」


 今度は白夜以外の人が知らないみたいだ。

 白夜はコクリと頷くと、先ほどから手に持っていた古い本をみんなに見せるようにテーブルの上に置いた。


「……私が前に言ってた古書」


 これが? そう思って古書を開こうと手を伸ばしたが、白夜に止められた。


「……先に男の話をする。……話が脱線した」

「あ、えっと。すみません」


 確かに話が脱線し過ぎた。ボクは近くのソファに座り、ソウナの言葉を待った。

 そのソウナは人差し指を顎にあて、どこまで話したかを思い出していた。


「あ、そうそう。確か、あの男が敵国かって所までだったわね。そこでもっと情報が欲しいのだけど……。私の事を天使様って呼んだり、リク君のことを聖地様って呼んでいた。あれはどういうこと?」

「……一人はソウナ自身」

「ええ。でも私にはあんな男と会ったことなんて無いのよ。第一、私の事を【治癒天使】と呼ぶ人はいるけど天使様なんて呼ぶ人はいないわ」


 ボクも、聖地様なんて呼ぶ人はいないはずだ。それにあいつが聖地の事を知っているのもどうかと思う。

 聖地を知っているのはなぜかという疑問は、ルナが教えてくれたのでなぜかはわかったが。


「リク君は何かわかった?」


 ソウナがボクに訊いてきた。

 ボクは小さく頷くと、ルナに教えられたとおりに話した。


「あの男、竜田ですが……ルナが教えてくれました。悪魔を持っていて、その力を使っていたみたいです」


 そのボクの言葉に、ソウナやレナは生唾を飲み込んだ。ある程度予想をしていたらしい。じゃなければあの強さの説明がつかないのか……。


「まぁあの男のことはなんとなくわかったわ。これはカナさんに少し相談しておいた方がいいのかもしれないわね……」

「……悪魔が関わっているとすると、ガルム達が言っていたあの事件も関係があるかもしれない」


 あの男が引き起こしていた可能性がある。それは誰だって予想が出来た。

 でも一番わからないのはあの男がなぜか正気でいることだ。

 悪魔に支配されていると言う感じがしない。これがわからないのだ。


 そこでボクはマナを見る。

 それは、マナが……。

 

 それ以上先は、ボクからは言いだす事が出来なかった。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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