…………ッ!?
「はぁ。やっといましたわ」
途端、レナが声を上げた。
「え? どこです?」
ボクはそれに答えて、周りを見渡すがどこに居るか分からず、見つけることは出来なかった。
その様子にレナが指を指して説明してくれた。
「ほら、あの木の根に上着の制服を置いてそれを枕代わりにして寝ていますわ」
細かく説明するんだね……レナは。
そう考えながらレナを見ていると、突然魔力を解放した。と思いきや。
「〈水球〉」
「あのっ。魔法の意味って――」
そこまで言うと、レナは大きく振りかぶって――、
投げた――バ、シャァァンッ。
「えぇぇぇっ!? ちょ、レナさん!?」
「……やりましたわ」
「やりましたわって何勝ち誇った笑みをしているんですか!? キリさん! 大丈夫ですか!?」
捕の前で衝撃的光景を見せられたボクは声が届かないであろう距離にいるキリに急いで近づいていった。
ずぶ濡れでピクリとも寝ていた状態から動いていないキリを助け起こそうとして触った瞬間――ガシッ。
「わ――」
いきなり腕を掴まれたと思ったら景色が一転。
空を見上げる形……と言うか、顔がドアップで見る形となった。
少しの間、何があったのか全く分からなかったボクは、気付き始めると、馬乗りになった犯人、キリを見ながら一瞬で顔が熱くなり、今度は混乱し始めた。
「え……ちょ、キリさ……」
なんとか抜け出そうとしても、思いのほかキリの力は強く、まったく抜け出せる様子がない。
耳に水が入ったのだろうか? なんとか絞り出した消えるような声はキリには聞こえていないようだ。
「ったく。テメェどうしてくれんだよ。ずぶ濡れ……?」
おそらくレナに話すつもりだったろう言葉の途中でに目を開けるキリ。
「……………………リク!?」
ボクに気づくなり、なんだか機能が停止したみたいになった。
なぜか見つめ合うこと数秒間。とりあえず、この状態は何かとマズイと思い、何とかどいてくれるよう頼んでみる。
「で……できれば……どいてくれると……」
ただし、やっぱり声は消えるような音量だった。
「!! す、すまん!」
なんとか聞こえたのだろう、バッとすぐに立つキリ。顔を逸らしている。
何やら気まずい雰囲気が流れ始めると、レナが無言でキリに近づき――ゲシッ。
「なっ、おまっ! 蹴んなよ!」
「ふん! 知りませんわ!」
「はぁ? 意味わかんねぇぞ!?」
どうしてか、怒るレナに、意味がわからないと言うキリ。
ボクはそれどころではなく、制服に付いた土や草を取る仕草をしながら赤くなった顔や止まらない鼓動を無理やりにでも納める。
(って言うかどうして熱くなるの!? ボクは男だ!)
心で自分に叱咤していると、
『とはいっても体は女じゃしのぅ』
『『魂』が『体』にひきよせられるのはとうぜんです』
(ルナ!? シラ!?)
心の中でそう叫ぶと、ボクの体から光が二つ出てくる。
「暇で暇で仕方がなかったぞリク」
「がまんなさい」
「主も言っておったではないか」
「き、きのせいです……」
図星なんだろうか? シラは顔を赤くしている。
相変わらずシラは自分のわがままを隠すようだ。契約をした時みたいに素直でいていいのに……。
でも、二人には悪いけど、授業中は静かにしてもらは無いと集中できないし……。
「時にキリ」
「んぁ?」
「リクを押し倒すとはどういうつもりじゃ」
「な――ッ」
掘り返したルナの言葉に顔を赤くするキリとボク。
「『不潔』です。きり」
そこでどうして不潔と言う言葉が出てきたのか分からないがキリは弁解を図る。
「あれはレナを押さえつけるために――」
「間違えてリクを『押し倒した』、のじゃな?」
「『不潔』です。きり」
やけに押し倒したを強調したルナ。シラはまたも同じ言葉を繰り返す。
「く……。あぁ、うるせぇ! 間違えただけでそれ以上でもそれ以下でもねぇ!!」
「「ほんとうに? 他に何か考えたじゃろ(んですよね)」」
逆切れするキリにさらに詰め寄る二人。
それ以上やそれ以下って何の事だかよくわからないのだが……。
「考えなくていいですわリクさん」
「あの、ボク何も言っていないのですが……」
「何か考えていた様子でしたので」
ボクってそんなに分かりやすいのかな……?
母さんやユウにはどんな内容かまでわかってしまうそうだけど……。
レナにまで分かるようになるはずがないよね……。
「さて、仙ちゃん? そろそろ授業に戻ってほしいですわ」
「あぁ? 授業なんか出なくてもいいだろうが」
キリはあっさりと断る。
授業の始まる鐘の音は五分ほど前になったのでボク達も早く戻らなければいけないのだが……。
そうすると、何やらレナは「フフフ……」と不気味に笑う。
「そんなこと言って、よろしいですの?」
「ンだよ。なんか作戦があんのか?」
キリは手の具合を確かめる。
好戦的な性格のため、このままいけば戦うことになってしまうかもしれない。
レナはそれに臆することなく、懐から一枚の……写真?
「これ、学校にばらまいたらさぞ、有名になりますわね。仙ちゃん?」
「ンたよ。それ」
「少々、カメラでとう……カメラの扱いが上手な方と知り合いましたの」
「今盗撮って言おうとしませんでした!? レナさん!」
「そんなことありませんわ。ちなみにアキではありませんわ」
しらをきるレナ。どう考えても盗撮だ。しかも盗撮から考えられる人は……。
「まさか……お前、それ……」
キリも気づいたのだろう。
「ええ、そうですわ! これは……仙ちゃんの女性の時の写真ですわ!!」
とても嬉しそうに、黄色い声で見せびらかすレナ。
写真には黒髪に紫の瞳ので、メイド服を着ていて、豊満なバストが目立つ女の人が映っていた。
そして、その女の人こそが、母さんに性転換なる邪悪な(※リク視点です)魔法を受けてしまったキリの姿である。
「な、なんでお前が持ってんだよ! すぐさま捨てろ!!」
「ほぅ。よく撮れておるではないか。デルタもやりよるのぅ」
デルタ・インフォルダ。二つ名【情報の城】だが、ボクにとってはただの変態で十分だ。
ジーダス攻略中ではできるオペレーターだったのに、普段は残念な……とても残念な人だ。
「ちなみに幹部のコートを着ているのもありますわ!」
左手を赤くなった頬に添えて言うレナは少し危険な気がする……。
時節、暴走する彼女は健在のようだ。
キリは黙って近づいて……バッ ビリ。
「あぁ!! わたくしの写真が!」
「当たり前だ! 勝手に人を撮るんじゃねぇと盗撮したデルタ・インフォルダに言っとけ!」
ボクもそう思う。
「まぁ良いですわ。まだ家に98枚はありますもの」
「100枚も買ったのかよ!?」
お金……どうしたんだろう?
「さて、行きますわよ? 仙ちゃん。わたくしは仙ちゃんを学校のアイドルにはしたくは無いのですわ」
「き、脅迫かよ……だが」
なぜか、魔力を解放するキリ。
「納得いかねぇなぁ。今すぐお前の家に言って全部焼くからな。我が名はキリ――」
「なんですって? そんなこと、させませんわ! 我が名はレナ――」
「え!? 午前中の決闘は禁じられてますよ!?」
レナも魔力を解放したので決闘だと判断する。
だけど、決闘が許されているのは午後だけであって……。
「写真のため! 行きますわよ! 〈ウォーター――」
「ぜってぇ燃やす! 〈雷剛拳〉ユニオン〈雷迅〉――」
午前中にそんなことをしたら想像したくない処罰をくらうと聞いた。
そう思ったボクの行動は素早かった。
「――ランス〉!!」
「――〈轟崩拳〉!」
「だめぇぇぇええええええええっっっ!!!!」
今日は大いに季節の外れた雪、と言うか、吹雪が吹き荒れるでしょう。くれぐれも、薄着なんかで出歩かないようにする事をお勧めします。
byロピアルズ天気士会。
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