表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第四章 お泊まり会と襲来者
48/64

謎の男2

視点はマナにうつります。



 ――ウチは、何をしているんだろう。


 今も目の前で戦いが起きているのに自分はまた何もしていない。いや、何もできない。


『何もできないこと無いでしょ? 私の力を完全開放すればあんな奴、倒せはしないだろうけど追い返すことぐらいは出来るよ?』


 確かにそうかもしれない。だけどそれをすれば、また黒の進行が早まる。

 それに、リクちゃん達を全員飛ばした瞬間、あいつはウチの耳元で言ったのだ。


『お前が悪魔の力を存分に使えばこいつらの命は助けてやる』


 その時、ウチは両手を口元に押さえて膝から折れて座るしかなかった。

 どうして知って? そう思っても答えが返ってくるはずもなく。

 自分はただ恐怖し涙を溜めるしかなかった。


 リクが助けてくれようとしてだろう、あいつに攻撃したが腹に剣を突き付けられた時にただ悲鳴を上げるしかなかった。

 自分はまた何も――。


『だからさぁ。私を使えばいいじゃん。どうして使わないの? そしたら追い払えるんだよ?』


 悪魔がウチにささやく。だがウチは迷ってしまう。

 本当に悪魔の力を使えば命を助けてくれるのだろうかと思ってしまう。

 だけど、悪魔の力に頼ってしまっていいのかとも思ってしまう。


 白夜のレーザーに男が慌てながら避けるが、その表情を見る限り余裕そうだ。何より、白夜との距離がどんどん縮まっていく。

 レーザーが全く当たらないと思うや、白夜はまた地面に打ち付け、リボルバーを出して空の薬莢を落とした。


「……なら、接近戦も使う」

「お? いいのか? さっきは簡単に腹にぶち込めたけど?」

「……戦うのは私じゃない。……〈シャドー〉、半殺しにして」

「ゥォォォゥゥ」


 〈シャドー〉はどこからともなく出てきた。空が日が暮れているからだろう。昼の時の比にならないくらいの〈シャドー〉が現れると、男に襲いかかった。


「へぇ。面白いけど……弱いな」


 男が一振り。すると〈シャドー〉の数十体が同時に斬れた。

 斬られた〈シャドー〉は消えていったが、次々と湧きでてくる。


「お。これはいい練習になりそうだが……遊んでいる暇はねぇ」

「それはごめんなさい。〈武乱〉!」


 ソウナの四撃が男の後ろから襲いかかる。

 それに男が反応して防ぐがその後ろから〈シャドー〉が覆いかぶさってくる。


「あ? 邪魔だ」


 剣を振って覆いかぶさった〈シャドー〉を振り払う。


「喰らいなさい! 〈武連〉!」


 ディスを連続で振って繰り出される連撃。しかしそれも防がれる。だがそこに――。


「敵はそこにいる数人だけじゃないですわ! 〈ウォーターランス〉!」


 水の槍が襲いかかる。

 しかし、男は片腕で受けた。


「な! 効いてないんですの!?」

「水浴びは好きじゃないんだけどなぁ」


 不敵な笑みを浮かべせたと思った瞬間、レナが顎を打たれて飛びはねた。


「また……ですの……」


 レナは縦に回ると、地面にうつ伏せに倒された。


「えッ!? どうして!? ここに居たのに!?」


 ソウナが動揺したおかげで剣筋が少し緩む。


「簡単だ。距離なんて関係ないからな」

「……ッ!」


 男の剣がソウナを斜め斬り。大量の血が吹き出た。


「くッ。〈治癒の――」

「回復は後でやんな」

「きゃぁ!」


 無情にソウナを吹き飛ばす男。木にぶつかりはしなかったが地べたを転げまわる。


「……当たらない。……やっぱり後ろについてる」

「あぁ。さっきっからずっと銃弾ウザいって。この影も」


 すると男は剣を白夜に向かって水平斬り。

 白夜は何かを感じたからだろうガンランスで自分の体を守るようにした。すると男の剣が白夜の居る場所を通ると、ガンランスが甲高い音を出した。


「え!? 剣が当たるはず無いのに!?」


 だが確かに剣が当たっていた。絶対に当たるはずもない所から。


「……マナ。……あいつは言っていた。……『距離は関係ない』と」


 それはつまり、距離を無くすような魔法があるということ!? そんな魔法なんてあるはずが無い!

 魔法は距離などを変えるようなことは出来ないと証明されているはず!?


『だけど今実際に変えられちゃってるじゃん。いい加減そんな考え捨てちゃってさぁ? 私を使えば? このままじゃ……死ぬよ?』


 そんなことさせたくない。だけど、悪魔の力も使いたくなんて無い。

 どうしたらいいの……ねぇ!

 心で叫ぶが返事が来ない。悪魔から来ては意味が無い。あの声が欲しい。夢で出てきたあの声が――。


 ……ダメだ。今完全にあの声を頼ってしまった。

 頼ることしか……出来ないの?


「……く」

「あ~らら。結局無駄だったか」


 え? と思い前を見る。

 そこでは地に伏せている白夜。先ほどまで立て膝だったと言うのに……。


「ふん。まったく、いつになったら使ってくれんだか……。ああ、そうか。殺せばいいのか」

「え……?」


 そう言った男は剣を高く振り上げた。

 足で押さえているのは白夜。何とか抜け出そうともがいているが動けない。


「しかし……お前どうなの? この状況になってもその表情が崩れないってのはさ」

「……私に感情なんて皆無」

「へぇ。ここから抜け出せる魔法でも持ってるんじゃないかって思っちまったぜ。中で一番評価高いぜ? お前」


 あの状態から抜け出せる魔法なんて……。そう思った時、一つの魔法が思い浮かんだ。

 だけど、それにはウチが意識を逸らさないと――。


「我が名はマナ。我に声に気づいたならば、その姿、具現化し、我が前にいでよ! 〝ファイアーバード〟!」


 悪魔の力は使わない! 注意を逸らすぐらい悪魔の力を使わなくても――。


「お願いファイアーバード! 〈火渦〉!」


 魔法を発動。炎が男を囲み、迫っていく。


「あぁ? こんな炎じゃ俺は殺せねぇよ」


 男はその炎を無視したまま、高く上げていた剣を振り下した。

 ザクッと言う音が鳴って剣が地面に突き立った。


「……? 逃げた?」


 男が初めて笑みが消えたと思ったら、すぐに剣を横に振って迫っていた炎を消した。すると、その炎から白夜が姿を現した。

 振り終わった後だからか、白夜がガンランスを男の腹につけるようにした。






「……〈零距離・超電磁加速砲〉」






「ハ!? それレールガ――」


 男が言い切る前に、白夜はそれを遠慮なく撃ち込んだ。







 ――――――――――――――――――――!!!!







 音にならないほどの絶音が響き渡り、男の腹を撃ち抜いた。


「……これなら……喰らう?」

「ア……ガガ……ガグ……」


 普通なら即死の攻撃を男は即死なんて知らないように立っていた。だがダメージが無かったわけではなく、男の様子からみて相当のダメージを負ったと思われる。

 白夜はその様子を見て今度はガンランスを刺そうと腕を引いて突きだした――ガシッ。


「…………?」

「お……俺が……俺がこの程度で死ぬかぁぁぁあああああっっっ!!!!」


 掴んだガンランスを男は振りまわして木に向かって投げた。が、そこに白夜はついていなかった。


「!?」


 男が歯を食いしばった。

 なぜなら、白夜の両手が男の腹を押していたからだ。




「……〈無銃(ムガン)・黒龍砲〉」




 白夜の両手から放たれた、恐ろしいほどの魔力が込められた黒い魔法が男をまた貫く。


「が、ぐぅ! らぁ!!」


 男は魔法に耐え抜き、ぎりぎり動く左腕で無防備な白夜の頬を殴る。

 白夜は軽く吹き飛んでいき、距離が離れてしまった。


「はぁ……はぁ……。クソが。テメェ何もんだ! ただのガキじゃねぇだろ!」


 腹を押さえながら男が叫ぶ。


「……けほっ、けほっ……」


 だけど白夜は一つ咳き込むと、焦点が合っていない目で何とか立ち上がろうとする。

 だけど、膝から崩れる。


「チッ。こんな脅威残しといたら厄介だな。ここで殺さねぇと」


 男が剣を構える。


 ダメだ。今の白夜は魔法が使える状態じゃない!

 助けなきゃ!!

 自分しか今動ける人がいない!!



「死ねや」





 男が剣を振りはじめ――、





「〈黒炎弾(、、、)〉!」





 ウチが黒炎(、、)を放ってしまった。

誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ