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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第四章 お泊まり会と襲来者
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謎の男



「まだ時間まで十分あるから寝てようと思ったのによ……。見つかったなら仕方がねぇ。あいつもいないみたいだし。二時間以上早いけど……まぁいいか。よろしく頼むぜぇ? 聖地様?」


 どうして……どうしてこの男が聖地のことを知っているんだ!?

 ボクは目を大きく開けたまま考えた。頭いっぱいに考えた。


 なぜなら、ボクの聖地を知っている人はおそらくごくわずか。それこそ、母さん、ユウ。それ以外の人にはまだ何も話していないはずだ。

 ツキと戦った時にはツキ自身がそう言っていたがボクは聖地のことを説明はしていない。

 ボクだってまだわからないことばかりなのだ。聖地については。

 今のところ神と契約が最大で二つの所をいくらでも契約できるようになることは知っているが、それ以外は聖地についてまったくと言っていいほど無知だ。

 だから、この男がボクの事を聖地だと言ったのは明らかにおかしいのだ。


「ハッ。なるほど。聖地様はお前か」

「!」


 鼻で笑った男の目がボクをとらえる。

 その際に、冷や汗をどっとかく。そして蛇に睨まれた蛙のように体が硬直する。

 本能でボクは直感した。




 ――この男はマズイ、と……。




「まぁ安心しろよ。俺様はまだ聖地様には手を出さないからよ。挨拶程度ってやつだ」


 ククッと笑いながらボクの心を見つかしたように言う男。


「誰ですの? 聖地とは、またよくわからないことを言っておりますが……」

「そうね。全くよくわからないわ」


 レナがウィンディーネを傍らに引き寄せ、ソウナがディスを構える。


「あれ? 天使様は自分の価値に気づいていないようだ」

「天使? 確かに、私の二つ名は【治癒天使】だけど……。あなたに様付けをされる筋合いわないわ」


 ソウナが睨み返すと「おぉ。おっかねぇ」とか言いながらレナ、白夜と目を移して行って、最後で止めた。


「お前か」

「え?」


 マナがわからないと言った風にする。

 すると――ザッ。


「「「「!?」」」」


 ボク達の立っている間に突如現れる男。

 落ち着いて対処した白夜だが――。


「あ? お前には今のところ用は無いんだよ」


 ドゴンッ! というまるで銃弾でも撃ち出したかのような拳が白夜の腹をとらえ、鈍い音を鳴らした。


「……たッ」


 顔にほんの少しの苦痛を浮かべた白夜が物凄い速さで飛んで行き、木に頭を強く打ちつけた。


「白夜さん!?」

「あ~。お前らも少し邪魔」


 今度はパァンッ! という音が鳴って痛みを感じる前に景色が変わった。

 気がつくと、ボクはその空間の端にある木に体を強く打ちつけていた。


「がは……ッ」


 口から血を吐き出す。

 その時初めて痛みが体の全体をとらえた。


『リク!? 大丈夫か!?』『しっかりしてください!』


 ルナとシラの声が頭で響くが、頭を強く打ったため、思うように体が動かないし返答も出来ない。


『え? 何? なんなのあいつ?』


 その中でツキがあの男の事を訊く。ボクが知るはずもない。いや、ボクに向けての言葉では無かったのかもしれない。


 揺れる景色を無理やりにでも元に戻すと、ボクは男を睨む。

 するとそこでは口に両手をやって後ろ脚を引くマナを見た。

 マナはまだファイアーバードを喚ぶことはおろか、魔力解放もしていない。今、あの一撃を喰らえば死んでしまうかもしれない。


 そう思ったボクは手にルナとツキの感触を確かめ、ふらつく脚を叱咤して魔力で強化し、走り出した。


「マナちゃんから……マナちゃんから離れろぉぉおおお!!」


 両手の刀を男の体を動かすための筋を狙って斬りつける。


「生命力が強いな聖地様。だが……」


 ギィンッと派手な音を鳴らして刀が停止する。

 どうして……そう思うよりも先にボクは何が起きたのかわかった。

 男はボクの刀をどこから取り出したのかもわからない大きな剣で防いでいたのだ。


「くっ。〈二の太刀 雪麗〉!」


 ボクは瞬時に魔力を溜めて魔法を放つ。

 爆発的に強化された体に物を言わせて力の限り両手の刀を振るった。


「遅い遅い」


 だが決して遅いとはいえない。むしろかなり速いと言えるほどの二刀を笑いながら防ぐ男。ほんの少しも魔力を使っている形跡が無い。

 二刀と剣が交わるごとに甲高い音が鳴る。


 もっと……もっと魔力を!


 ボクは注ぎきれるだけの魔力を注いで、攻撃する。


「やっぱり、まだ未熟な子供か。その魔力と、それに耐えきれる体は認めるが、まだまだだな」


 男がそう言いきると――ドス。

 体が硬直し腕が動かなかった。それはなぜか? そんなのは考える必要はなかった。


「リクちゃぁぁぁあああん!!」


 ボクの腹を剣が貫いて赤い液体が剣を通って流れている事に、マナが悲鳴を上げた。


「ここで死にはしないだろ。天使もいるし。向こう行ってろ」


 またも景色が変わり、背中にぶつかる木を感じて意識が飛びかかる。


『リク! ええぃ!』


 刀が光り、それが人型になり、光がはじける。


「リク! 大丈夫か!? 〈ルナ・キュアー〉」

『あぁ! それあたしの魔法!』

「そんなこと言っている場合か!」


 ルナの手が光ると、ルナはその手で貫かれていた場所にあてる。

 少し痛むが、何とか我慢する。


「ほぅ。〝ヘカテ〟か。後は何の神様を持っているんですか? 聖地様?」


 わざと敬語にして聞いてくる男。神や聖地を知っているようだ。どう考えても普通の一般人とは捉えられない。

 この男も何かしらの神を持っているものだと思われるが、こんな攻撃的な人が神を持っているだなんて考えたくない。

 何とか男からマナを離す事に成功したが、こちらの傷が深すぎるため、すぐには戦闘に参加できない。

 目を白夜達に向けると、それぞれ意識が戻ったようで呻きながらも体を起こしていた。


「おいおい。こんなもんかよ。弱いなぁ。どうする? お前以外誰も戦えないぜ?」


 男がマナを見る。

 マナは未だに魔力を解放していない。それでは抵抗も出来ない。一体どうしてと思うが、体がこんな状態じゃそう簡単に大声を出す事も出来ない。


「これは……ッ。まさかあやつ!」


 そして何かに気づいたルナ。そして今度は回復魔法をするのではなく、不思議な魔力を込めて傷にあててきた。


「どう……したの?」

「リク。落ち着いて聞いてくれ。あやつ、あの男は……」



 そうルナが答えた時、ボクはありえるのかと思ってしまった。


 ガァンッ!



「おぉっと。危な」

「……後ろに目でもついてる?」


 白夜が男にガンランスの矛先を向けて銃撃をしたが、男は白夜が言った通り、後ろに目でもついているかのように横に身を逸らして避けた。


「後ろに目なんかついてるのなんて百目とかだろ? 妖怪だ妖怪」


 白夜に笑いながら答える男。


「んじゃあ、まだ使わないみたいだし。今度はお前で遊ぼうかね。一番強そうだ」

「……褒めても何も出ない」


 白夜が立て続けに銃撃をするがすべて避けた男。そして歩きながら白夜に向かっていく。


「ハハッ! 無駄だよ! そんなのじゃ俺にはあたらねぇぜ?」

「……なら」


 白夜は一度再装填するかのように矛先でない方を地面に打ち付け、リボルバーを外に出して空の薬莢を落とす。


「……くらえ」



 無音がガンランスから発射された。



「は!? レーザー!?」



 それを男は避けるが白夜は避けた方向にガンランスの矛を向けた。


「ちょ、おい! これいつまで続くってんだ?」


 慌てたようにする男に白夜は一言。





「……貴方を焼き殺すまで」





「怖っ!」


 そう言いながらも、男はにやけさせた顔を崩す事は無かった。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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