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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第四章 お泊まり会と襲来者
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なんでみんな戦ってるの?



「うぅ……酷いですよ……みんな……」


 涙目にしながら四つん這いになって落ち込むボク。着ているのはお腹と脇が出ている制服だった。しかもスカートはかなり短いので太ももまで丸出しだ。どこかの学校の制服らしい。


 あれからというもの、初めは露出の少ない私服から着せられていって、肌の露出が多くなり、コスプレをさせられた。

 さすがに恥ずかしいので水着は何とか回避出来たものの、これで終わるのはつまらないと、白夜がいろんな学校の制服を持ってきたのだ。


「ふぅ。やっぱり、リクさんのような銀髪メイドって欲しいですわね。かなり可愛らしいですし……。リクさん。バイトでいいからしません?」

「しません! それよりもボクの制服返してください! どこに隠したんですか!?」


 着替えされられているうちに、自分の制服が消えてしまい、着替えようにも着替えられない状況だ。いや、白夜の服ならあるのだがそれに着替える訳にはいかないだろう。この服よりはマシだと思われるが……。


「それにしても、これらの服全部リク君にピッタリサイズなのだけど……」


 そんなもっともなソウナの質問に、白夜は……。


「……いつかリクちゃんに着せるため」


 グットを作って答えていた。


「……こんないい素材を野放しにはしておけない」

「白夜さん。相変わらず言っている意味がわかんないんだけど~」


 しかし、こんないろんな服を着せられた場面を、雑賀やデルタに見られていたらと思うとぞっとする。


「ぅ……。早くボクの服を返してください……」


 この服では恥ずかしすぎて死ねる。どうしてこんな服が制服なのだろうか?

 絶対に嘘だと思いたいが、実際に制服だと四人から証言が来ているのでどうかと思う。


「……リクちゃん顔真っ赤」

「こんな服を着せるからでしょう!?」

「……そんなリクちゃんも可愛い」

「か、可愛くなんてありません! 男が言われて喜ぶ物じゃないんです!」

「……そんなことよりリクちゃん」


 ボクの魂の叫びをそんなことよりで片付けられてしまった。

 白夜がキッチンの方を向くと、そこから料理を運んでくる〈シャドー〉達。ボクが着せ替え人形にされている間ずっと料理していたとは思えず、待っていたんだろうと考える。

 だが料理が覚めてしまった訳ではないようで、湯気が出ている物もある。


「……お腹空いたから食べる」

「そうですわね」

「そうね。白夜さんに賛成するわ」

「あの……その前にリクちゃんの制服を返してあげたら~?」


 白夜に賛成した二人と、ボクの制服を取り戻そうとしている一人。だが残念ながらボクの制服が返ってくることは無かった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 食事が終わり、食器を〈シャドー〉が洗っている内にもう日が落ちていて、空は完全に暗くなろうとしている時だった。


「あぁ! 日が落ちてる! ボク達そろそろ帰らないと!」


 あまり夜遅くになるのはよくない。悪魔が出るとガルムとデルタに聞いた以上、あまり迷惑はかけられない。

 なのに三人の反応は……。


「日が落ちてる? 何をいまさらですの?」

「リクちゃん帰るの~?」

「リク君。今日は白夜さんの家で泊まり(、、、)だって聞かなかった?」


「…………はい?」


 ソウナの一言が、ボクには理解が出来なかった。

 泊まり? 泊まりって言うのは、自分の家じゃない所で一晩明かすと言うことで……。


「…………。白夜さん。まさかとは思うけど~。リクちゃんに何も言わなかった?」

「……そう言えばリクちゃんには古書を見せるとしか言わなかったような気がする」


 ということは他の人は全員初めから泊まるつもりで来ていたと言うことだ。


「えっと、忘れていたって事ですの?」

「……(フルフル」


 首を振る白夜。

 忘れていた訳ではないらしい。ならばどうして……。


「それじゃあ、どういうこと?」

「……リクちゃんには……」


 そう言って影から新たな服を取りだす白夜。

 そしてその服は……いや、そのパジャマは……。




「……お風呂から出てきたらこのパジャマを着てもらう」




 ――もう少しで透けてしまいそうな透明感のあるシンプルな蒼いネグリジェだった……。




 そう判断した瞬間。先ほどよりも足に魔力を注いで窓を開け放って外に逃げた。


「……逃がさない。……〈シャドー〉」


 前からたくさんの影の敵が出てくるのをボクは魔力を込めた素手で突き破っていった。


「ディス! 半径300メートルの空間を切り離すわ! 〈ルーム・ザ・スペース〉」


 ソウナの魔力がボクを通り過ぎると、そこから先の道が無くなった。

 これが空間を切り離すと言うことなのだろう。


「ソウナさん! どうして!」

「ごめんねリク君。私、どうしても見たくなって……。だから大人しくつかまりなさいリク君!」


 そんなのが理由にされる訳が無い!! いや、されたくない!!

 ソウナは手に持った両手剣『グラディス』を構える。その瞳には確かな光が宿っている。

 だが、それはソウナだけでは無い。レナもウィンディーネを喚んでいるし、白夜もガンランスを顕現している。


「くっ。ルナ! シラ! ツキ!」


 同時に神三人を武具として展開。

 これ以上着せ替え人形になってたまるかというボクの男としてのプライドがボクを動かす。

 いや、もうズタボロかもしれないがそれでもこれ以上壊されるのは絶対に嫌だ。


『これは……妾達はどうしたらよいのか……』

『こんかいはわたしたちにできることはありませんね』

『まぁ頑張ってリク』


 誰かが補助として人型になってくれることは無いらしい。


 ツキを戻そうかと思ったが、ここでふとあることを思いついた。

 〈シャドー〉本人には悪いが、彼らは魔法なのだ。斬られても死なない。それならばと思い、ボクは左手にルナを、右手にツキを持った。つまりこれは……。


「……二刀流?」

「リクさん。使えるんですの?」


 まだ試したことは無いが……。

 そしてルナを初めて振った時同様、ボクは二刀を一番しっくりくるような構えをする。

 右手を引いて、左手を前に出す。


「……なら……まずはじめに〈シャドー〉。……実体化してリクちゃんを取り押さえて」


 白夜が手をやると、〈シャドー〉がいっせいに襲い掛かってきた。

 ボクはそれを落ち着きながら両手でさばく。

 〈シャドー〉はツキで攻撃すればやはりそれなりの手応えが帰ってくるが、ルナで攻撃すれば簡単に斬れていく。

 やはりルナの魔力無効化は恐ろしい物だと痛感する。

 刀が一振りだった時と比べて、二刀と言うのは斬り返しがとても速く、連撃を主とするボクのスタイルにとてもよく合っていた。

 おかげで、大群で迫りくる〈シャドー〉を落ち着いて対処することができていた。


「よし! これなら!」


 まだ少しぎこちない二刀流だが、練習していけば何とかなりそうだと思う。


「……なかなかやる」

「いや、そろそろツッコんじゃ駄目? なんでみんな戦ってるの?」


 蚊帳の外にいるマナが、完全に呆れている。隣に居る白夜にツッコムと、その隣に居るソウナやレナも少々苦笑い。

 いや、仕方のないことだと思われるが。


「…………? ……待って〈シャドー〉」


 白夜は〈シャドー〉を止めると、顕現してあったガンランスを持つ。

 急に〈シャドー〉がロボットが停止したように止まったのでボクは不思議に思った。


「あれ? どうかしたんですか? 白夜さん」

「…………」


 白夜は何もない空間。いや、家を囲うようにしてある木の一つを見つめた。

 それから、白夜はその木にガンランスを向けて――ガァンッ!


「え!? 白夜さん?」


 その行動に、ボク達は全員疑問を持つ。だけど、その理由がすぐにわかった。


「いってーなぁおい! 危うく直撃するところだったじゃん? よっと」


 木から飛び降りてきた謎の人物。

 まだ日は完全に落ちていないからその人物がTシャツにジャケット、ジーンズと言うラフな格好をした男の人だと言うことが分かった。その男の人の頬には血が線を描いているのでおそらく弾丸は頬を掠って飛んで行ったのだろう。

 そして、ボクはその男の人の顔を見ても誰かわからなかった。白夜の関係者かと思って視線を向けるが、白夜は首を振った。


 じゃあ……そう思った時、その人物は口を開いた。



「まだ時間までたくさんあるから寝てようと思ったのによ……。見つかったなら仕方がねぇ。あいつもいないみたいだし。二時間以上早いけど……まぁいいか。よろしく頼むぜぇ? 聖地(、、)様?」



 その男の最後の言葉に、ボクは目を大きく開けたのだった。

誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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