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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第四章 お泊まり会と襲来者
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一人暮らしの白夜



「白夜さんはいつも家で何をしているの?」

「……特に何もしてない。……やること無いから大体寝てる」

「そうすると、いつも帰ってくるのが遅いんじゃないの~?」

「……(コクコク」


 白夜が頷く。

 なぜそんなことが分かるのかと言いたくなる。


「いつも夜まで何をしているんですの?」

「……遊んでる」


 一瞬、夜遊びが脳裏に浮かんだ。

 だけど白夜がそんなことをする筈ないかと首を振る。

 その様子に白夜は少しだけ不思議な顔をした。


「そう言えば白夜さん。一人暮らしをしているって聞いたけど両親はどんな人なんですか?」

「あ、それウチも気になる」

「マナさんだけではないわ。私だって気になるもの」


 どうやら全員気になるようだ。レナも少しだけ楽しそうに聞く態勢になっている。


「……父は本好きであまり喋らない人。……あと、コレクター。……母は元気が有り余ってる変な人」

「変な人って……お母さんはそんなにも?」

「……大丈夫。……カナさんよりはマシ」

「でしょうね!」


 あんなのが何人もいると世の中きっと成り立たないだろう。主に仕事面で。


「ということは白夜さんは父親似ですの?」

「……一部の性格は。……でも、外見は完全に母親似」


 それはさぞ綺麗な人なんだろうと思う。物静かな白夜は美人の部類に入るだろうと思っているからだ。


「コレクターってあの絵みたいな?」


 マナが壁にかけてある絵を指差す。それに白夜は頷くが。


「……でも、絵だけじゃない。……そこの本棚に本がぎっしり詰まっているように、地下倉庫も同じようになってる。……父は絵だけでなく本も集めてる」


 と言うように、地下にも父親のコレクトした本がぎっしり詰まっているようだ。


「あれ? でもどうして両親の物が置いてあるの? 白夜さんは一人暮らしじゃ……」


 ソウナが思いだしたように言ったので、ボクも「あ」とつい声を出す。

 そうだ。白夜は一人暮らしをしていると言ったんだ。なのに両親の物があるとすると……。


「……父も母も行方不明。……昔仕事に出たきり、帰ってこない」


 それはなんとも寂しい事なんじゃ……。

 そう思ったボクを感じてだろう、白夜はボクに向かって言ってきた。


「……別に寂しくないから安心して。……時々、伯父が家に来る」

「伯父?」

「……(コクコク」


 伯父がどうして? と思う。伯父がいるなら両親が行方不明になっても一人になる必要は無いではないか。

 時々来るだけの伯父がなぜ?


「その、伯父さんは何しに来るんですか?」


 ためしにそう聞いてみると、白夜は少し考えてから答えた。


「……たぶん。……私を養子にしたいんだと思う。……毎回断っているけど」

「え? 断っているんですか? でも、一人じゃいくらなんでも寂しい……」


 ボクがそこまで言ってからソウナに止められた。


「両親は行方不明なんでしょう? 心のどこかでは帰ってくるって信じている証拠なんじゃないかしら?」


 ソウナが耳元でそう囁くと、やっとボクがどれだけ酷い事を言っていたのかわかった。


「えっと、すみません、白夜さん」

「……いい。……別に気にしていない」


 ボクがあやまると、白夜は首を振ってくれた。しかし、そうなると白夜の両親が心配だが……。


 そこで、ボクは一度空気を明るくしないとと思って話題を変えた。


「そう言えば白夜さんって全部〈シャドー〉に家事をやらせているんですか?」


 ボクがそう聞くと、白夜は外を向いて一間置き、黄昏の日をあびながら答えた。


「……あれはパシリ。……問題ない」

「ありますよ!? ほんの少しでも問題はありますのよ!?」

「……大丈夫。……あれはパシリ」

「パシリ二回目!? かわいそうですよね!?」

「……魔法魔法」

「でも意思持ってますよね? あれ」


 そう言ってキッチンの方を向くと、黒い影が必死に料理している姿が目に入る。

 他の人も見てから、白夜も見ると……。


「……実は人形」

「糸でも使っているんですか?」

「……そう。……いつかリクちゃんを操ろうと思う」

「どうしてですか!?」


 ボクを操ってどうするつもりなんですかと心で叫ぶと……。


「……リクちゃんを操ったらまずいろんな服を着せる」

「なぜ!?」

「それ、わたくしも手伝いますわ!」

「レナさんまで!?」

「私もいいかしら?」

「ソウナさんも!? マナちゃんはボクの味方だよね!?」

「…………。えっと、頑張ってね……?」

「どうして疑問形なの!? いや、それ以前に味方をしてはくれないの!? 何もしてはくれないの!?」

「だって……。あれをウチが止めれるとは思えないもん……」


 ボクの周りにはあまり味方はいないらしい。

 そしてその三人はなぜが立ち上がり……。


「それだったら今から着せないかしら?」

「いいですわね。白夜さん。服を貸してもらっても?」

「……案内する」


 白夜がそう言うと、ソウナはボクの方に体を向けてきた。


「それじゃあ私はリクちゃんが逃げないようにしっかりと見張っておくわ」

「頼みますわ」

「……三十秒で戻る」


 それから白夜とレナが部屋を出て言って、ソウナだけボクに近づいて腕をからませるように取ってきた。


「ま、待ってください? えっと、全く話の意図が読めないんですが……?」

「大丈夫よリクちゃん。今は指輪をしてるし。何より、女物の服なんて着慣れちゃったでしょう?」


 ソウナがニコニコしながら顔を近寄らせてくる。


「き、着慣れる訳ないでしょう!? 離してくださいソウナさん!」


 ボクは何かがさらに壊れそうな音が聞こえたので、腕を離してソウナから距離を置こうとする。

 しかし、ソウナのどこからこんな力が出るのか、全く腕が離れる気配がしない。

 ボクは焦って何とか手を振りほどこうとすると――。


「お待たせですわ!」

「早い!?」


 レナと白夜が意気揚々とした顔でお出ましした。両手で抱え込んでいる服を持って。

 ボクは全身から血の気が引くと、身体強化魔法を使ってソウナの腕を解いた。


「あ。リク君、魔法を使うなんてずるいわよ?」

「あなた達は三人がかりでしょう!?」


 ボクはとっさに近くの窓に近寄って、脱出を試みようとするが……なんとそこにはすでに白夜の〈シャドー〉で埋め尽くされていた。


「……逃がさない」


 これは完全な積みなんだろうか? いや、まだどこか逃げれるところが……。

 だが、時すでに遅し――ガシッ。


「!?」


 ボクの影から伸びている手がボクの足を掴んで固定する。これでは逃げることはおろか、動くこともできない!

 一体どうしたら……そう思ったところで、なぜか自分の手が勝手に制服のボタンを外し始めた。


「えぇ!? な、なんですかこれ!?」


 力を入れて何とか止めようとするも、一向に止まる気配のしない自分の両手。まさかと思い、白夜に目をやると……。


「……実は〈シャドー〉を使えば人を操ることなんて簡単」

「そ、そんな!?」


 完全に積みだ。


「じゃあ初めはどれにしましょう? やっぱりまずはキャミソールとかでしょうか?」

「最初だし、なるべく露出の少ない物にしましょう。カットソーとか……。そう言えば振り袖もあるのね」

「……ゴスロリ服もあるし水着もある」

「えっと、いくらなんでも種類が多くない? 主にマニア向け方面で~」


 手が止まらない。三人も止まらない。マナも助けてはくれない。

 つまり、防ぐ手段が無い。


 そう思った瞬間……。



 ――ボクは何もかもを諦めた。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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