変態再来
ボク達はRA・魔法研究会の出口から出ると、そこで解散となった。
「それじゃあ、気をつけて帰るんだよ?」
「はい。シーヘルさん。貴重なお時間をありがとうございます」
ボクは丁寧に頭を下げる。
「いや、そんなことなんて考えなくていいよ。何かあったら、すぐに連絡するんだよ? 特に母がらみで。それじゃあね」
シーヘルは笑顔で言うと、棺を連れて道の先へと消えていった。
しかし、母さんがらみのことなんて今さらだと思うのでたぶんシーヘルを呼ぶことはないだろうと思われる。
いや、呼ぶ場面があってもシーヘルは忙しいと思うから呼ばないだろう。
「それじゃあ俺は弦と一緒に帰る。ほら、行くぞ」
「ああ。それではまた」
弦は会釈をすると、キリの後を追って帰っていった。
「えっとお兄ちゃん。ユウ、今日の夜仕事があるから……もう行くね?」
「うん。頑張ってね」
ユウの頭に手を乗せて撫でる。ユウは顔を少し赤くして、「行ってきます」を言ってから、カレンと共に姿を消した。
これで残るは白夜とボク以外にマナ、レナ、ソウナなのだが……。
もう空もそこまで明るくないし、帰るのは当たり前なハズだ。
「えっと、どうしてみんなはまだ帰らないんでしょうか?」
ボクが遠慮しながら言うと、レナもマナも「だって……」と続けた。
「これから白夜さんの家に行くのですわ」
「リクちゃんも呼ばれてるよね?」
え? と思って白夜に目をやる。すると白夜は当然の様に返してきた。
「……人は多くいた方が楽しい」
確かに楽しいだろうが……。でも確かに、古書を見るだけで部屋に上がるのはどうかと思うと自分でも思った。
なら少しは遊んで行くかな。――そう思った時だった。
「つ~かま~えた!」
突如近くで大声が聞こえたと思ったら――ガバッ。
「!?」
ボクは誰かの腕の中に居た。
「へ!? だ、誰ですか!?」
後ろから抱きつかれているので誰だかわからない為訊くが返事が帰ってこなかった。
その代わり……。
「このすべすべの肌触り! このふわふわとした柔らかさ! ほんのり香る一輪の花のような匂い! そしてなんといっても丁度よい抱き心地! どれをとっても完璧だ!」
「ひゃわっ! ど、どこ触っているんですかぁぁぁぁあああああ!!!!」
「ごぶぇッ!!」
身体を魔法で一気に強化して背中に抱きついたままいろんなところをまさぐってきた変態を頭から前に倒した。
そして……ボクは名前を呼んだ。
「デルタさん! あなた街中でなんてことするんですか!!」
「つまり街中じゃなかったらいいんだね?」
「そう言う意味じゃありません!!」
パリィィンッ!! と音を散らして消えていった凍りのハリセン。
「ぐをぉぉぉぉおおおおお!!」
デルタは頭を押さえて転がりまわった。
デルタはジーダス攻略戦に協力してくれた一人だ。オペレーターとして仕事をまっとうしてくれたところは評価できるが、こういう変態な性格は完全にマイナスだ。仕事帰りなのか、R,Aの文字が左胸に入っていて、着ている服はスーツだ。これが諜報会専用の制服なのだろうかと思う。
そしてボクは手に持っているカメラを奪い取る。今さっきスカートの中を転げまわりながら撮っていたからだ。メモリーカードを抜いて、破壊した後デルタに返した。せっかく撮った写真がとか嘆いていたが無視した。
しかし……。
「久しぶりだなリクちゃん! 一ヶ月ぶりか?」
まるで真一のような生命力だった……。いや、それ以上かな。とりあえずデルタは変態な性格のうえ、こんな生命力だったら一番の危険人物だと思われる。
「ええ、そうですね。っていうか、いきなり抱きついてくるのやめてもらえませんか?」
「ん? ただの挨拶じゃないか」
体をまさぐる時点でセクハラです。胸は揉まれなかったのでまだましだが……お尻を触ってきた。背筋がゾクッとしたのは言うまでも無い。
「はぁ。ところで、デルタさん一人なんですか?」
「いや、さっきまでガルムと一緒だったんだが……はぐれちまってな。その先でリクちゃんの匂いを感じたんで飛んできたんだ」
匂いってなんですか匂いって……。そんなにボクって匂うのかな……?
そう思ってさりげなく匂いを嗅ぐが別に臭いとは感じない。
「リク君、安心して。臭くはないわ。普通にいい匂いしかしないから。どれだけ汗かいても」
「それはおかしいと思うんですけど……」
ボクはソウナに不安半分の顔を向ける。
確かに、今さっきまで戦闘していた身としては少し汗をかいているような気がする。
だけど汗がいい匂いってどういう意味だろうか……。
「デルタさんはパトロールか何かしているの~?」
「いや、とりあえず寝る前の仕事が終わったからな。偶然出会ったガルムと話しながら帰っているところだったんだ」
デルタも帰宅するところだったらしい。空はまだ夕方だから仕事をしていてもいい時間帯なのに……。
そう思っていると、デルタの声が聞こえた方向から一人の大男が近寄ってきた。
「む。リク達か。久しいな」
「ガルムさん。お久しぶりです」
坊主頭にサングラス。顔にはいくつか傷が入っていて、歴戦の戦士のような感じを持たせるのがガルムの特徴だった。着ている服はR,Aが左胸に入った軍服を思わせる服だ。これは前にも見た警察会専用制服だ。シーヘルもこの格好だった。
「それにしても、ガルムさんその格好似合いますね」
ボクの言葉に「そうか?」と返すガルム。
「確かに。ガルムさんのような大柄の人だと特にね~」
そこにマナがフォローを入れて素直に礼を言った。
そのガルムの足元から、大きな犬が顔をのぞかせてきた。
「あれ? この子は?」
「前にも会っただろう? ケルベロスだ」
「えぇ!? もっと大きくなかったですか!?」
確か、ボク達なんて一飲みできそうなほど大きかったはずだ。
今では他の大型犬と大差ないではないか。
「召喚する時の魔力を制限すれば、これくらいの大きさのケルベロスを呼ぶことだってできる」
ガルムの説明にボクは「へぇ」と声を出して納得した。
ボクはケルベロスの頭を撫でると、ケルベロスは気持ちよさそうに舌を出した。
何だかこうしていると和んでくる。
ボクはどちらかというと猫派だが……。
「ちょうどいい。少しいいか?」
ガルムがそう言うとボク達は少し首を傾げる。だが、ガルムの真剣な目つきに、ボクは真剣に聞こうと耳を傾けた。
「お前らだから言えるが……最近、悪魔の事件がここらで多々起きている」
ガルムの言葉にこの場に居る誰しもが反応した。
「悪魔……ですか?」
「例えば……どんな?」
マナが言うと、ガルムは少し唸る。
「実際にはロピアルズが秘密裏に解決しているからな。あまり公開されていないが……」
ガルムが言うにはここ最近で悪魔が関与している事件は全部で十件以上もあったのだ。その中にはソウナの事件も含まれていた。
いくらなんでも多すぎることに、ロピアルズは夜通しパトロールを続けているらしい。ガルムはこれから家に帰って寝てからまたパトロールを開始するつもりらしい。
デルタは諜報会として、町に張り巡らせているカメラで怪しい人物がいないか要チェックするようだ。
「ロピアルズに関わるまで……。いや、リクちゃんと関わるまで悪魔というものを知らなかった俺達には、先月にこんなにも事件が起きていた事が信じられない」
「だが、俺達は悪魔と言うものを知った。その強さと怨念らしい物もな。だからこそそれが無くなるように俺達は全力を尽くす。それをさせてくれるためにも、あまりライコウの夜の道を歩かないようにな」
「はい。お二人も、お気をつけて」
デルタとガルムが心配して言ってくれたのでボクは二人を応援した。
「それでは、俺達は帰るか」
「そうだな。リクちゃん、またな。今度何かエロティックな衣装を持ってくるからな!」
「はい。ガルムさん。デルタさん。また。あとそんな衣装持ってこなくていいです。絶対に着ませんから」
ボク達は二人に手を振ってその場で別れた。
最後の最後までデルタはどんな衣装を着させようか迷っていたように見えたが……気のせいではないだろう。
ヒスティマⅡではきっと変態は今回一回だけかなぁ。出てくるの……。
デルタ「嘘だろ!? まだリクちゃんに一つも服を着せて無いじゃないか!!」
……………………。
デルタ「そういえば昨日はバレンタインだったか……。リクちゃんに生チョコをかけて――」(ガシュッ ドサッ
リク「ふぅ。これで危機は去りました」
えっと、変な音なったけど大丈夫?
リク「大丈夫です♪ ただの手刀です♪」←身体強化魔法五割強化
………………そ、そう(==;(その笑顔が怖いだなんて言えない……)
誤字、脱字、修正点があれば指摘を。
感想や質問も待ってます。




