Intermission 忍び寄る影
まだ、マナの悪魔が暴走していない。
いや、あの悪魔は知らない。自分たちが放った悪魔ではない。でもどんな悪魔なのかはわかった。だから自分は何もしない。
あの嫌な奴に嘘の報告をした。
自分が放った悪魔を殺してマナにとり憑いた悪魔。
だからこそ興味が出た。そして、あの悪魔は『アレ』なのではないのかと憶測までした。
悪魔の中の特殊な悪魔。理性があり、強さと情を兼ねている悪魔。
初級、中級、上級。どれにも属さない特殊な悪魔。
――面白そう。
マナがどの道をたどるのかとても興味が出た。
悪魔に食われるならば、それでよし。
悪魔がどこかに行くならば、それでよし。
悪魔を倒すならば、それでよし。
悪魔を従わせるならば、それでもよし。
どの道、特殊な悪魔が暴走をしなければどちらになることもない。
このまま、悪魔の力を使い続けてくれればいいのに。
そうすれば計画が進む。自分の計画ではない。嫌な奴の計画だ。いや、その嫌な奴の上に居る奴だったような気がした。
まぁでも、キリの言葉で言わせて貰えば、『関係ない』だ。その計画が自分にとっても都合がいい事以外。
プル――ピッ。
『あいかわらずワンコールで出るんだね。こんちゃ~』
「うるさい。バカ。アホ。死ね」
『うわぁお。いきなりきつい言葉来たねぇ。もしかして俺のこと嫌い?』
「嫌い。死ね。この世から消えろ」
『かなりゾクゾクするね。まぁ挨拶はこの辺にしとこうぜぇ』
別に挨拶でも何でもない本心なのだが、嫌な奴は冗談として受け取っているようだ。いや、間違えた。冗談というかむしろ喜んでいるような気がする。
それにしても、どうせまた報告だろう。こちらが今何をやっているのかも知らないでよくもまぁのんきに電話出来るものだ。
「変わりなし。以上」
『短っ! そんなに俺と話すの嫌いなの? そう言えば名前も呼んでくれたこと無いな~』
呼ぶ気も起きない。
『まぁいいや。そんなに変わらないとすると、マナって娘。神様でも持ってんの?』
「たぶん」
そうやって言っておけば、特殊な悪魔が憑いている事なんて気づかないだろう。
『ふ~ん。……それじゃあ俺が直々に行って悪魔の汚染を早ませるかね』
何? とつい声をあげてしまった。
『別にいいでしょ? 殺すわけじゃないんだ。そろそろ俺も挨拶をしてないとって思ってね』
電話の向こうで楽しさをあらわにする嫌な奴が目に浮かぶ。
しかし……困った。
来られると自分が嘘を吐いていた事がバレてしまう。どうしよう……と考えるが、別にいいかとも思ってしまった。
「なら、日時を教えて。私は貴方を攻撃していいかどうかも」
『あ~。そうだな。日時は今日の午後9時。その時には外に出しておけ。そして俺に攻撃だけどな……しないとバレるだろ?』
「なら全力で攻撃する」
『手加減はしてくれませんかね!? 絶対に吹き飛ぶからさ!』
手加減をしないと怒られそうだ。仕方ないので肯定した。
それから電話を切った。
場所とかを報告していなかったがわかるだろう。なぜなら自分の居場所は手に取るようにわかるのが嫌な奴――追跡者の特技みたいだからだ。
いろんな物を追跡するのが嫌な奴の趣味らしいが、そんなことはどうでもいい。
自分は、ただの一つだけの目的のためにしか生きる必要が無いからだ。
誤字、脱字、修正点があれば指摘を。
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