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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第三章 RA・魔法研究会
40/64

黒2



「ったく。部屋は二つじゃねぇのか?」

「いえ、これが外に出る扉かもしれないわよ?」


 ソウナの憶測だが、ボクもそう思う。これ以上何かあるとは考えたくない。二つ目の部屋でも研究者が多種多様な魔法を使ってきたからとても戦いづらかったのだ。特にすり抜ける魔法。ボクはルナがいるから当てることができたが、白夜は武器で攻撃を当てることができなかった。

 おかげで白夜はやる気を無くし、遠くの方でソウナ(、、、)とお茶をしていた。

 そう、ソウナと。


 おかげで戦っていたのはボクとマナぐらいだった。


「それでは、先に進むか」

「これ以上は何といいね~」


 カレンの言葉にマナがのんびりとしながら答える。

 ボクもこれ以上は何もないことを祈りたい。

 だけど、そういう祈りは、いつも当たることが無くて。ボク達が扉を開けると、中に居たのは……。


「チョウセンシャガヘヤニハイリマシタ。シロキシヨンタイヲトウニュウシマス」


 機械じみた声が聞こえたかと思うと、壁から出てくる白い鎧を着た人。

 ……人? いや、違う。魔力の流れとか、雰囲気からして人と言う感じがしない。もしかしてあれは……。


 そう思うと、それぞれの白騎士が白くて丸い盾と、綺麗なフォルムをした追突槍(ランス)を構えた。

 そして、機械アナウンサーから聞き覚えのある声が聞こえた。


『ジジー……あー。あー。聞こえていますかね? お客様方』

「「「「ケオズ……」」」」


 みんなして嫌そうな顔をした。


『そう嫌そうな顔をしないで貰いたいですねぇ』


 どこの誰がこんな嫌そうな顔をさせたんですかとツッコみたい。


『そこに居る白騎士はですねぇ。我々が作った今のところ最高傑作のアンドロイドなんですよ。まぁ頑張ってくださいねぇ』


 それだけ言って、ブツッ。とTVの切れる音を鳴らしてケオズの声はそれっきり聞こえなくなった。


「あいつ、後で絶対にぶん殴ってやる」

「あら。私と同じことを考えていた人がいるなんて思わなかったわ」

「仙ちゃん。わたくしの分も頼みますわ」


 約三名。完全にキレ気味だ。

 ボクはあはは……とから笑いをするしかない。ケオズを助ける義理はボクもないのだから。

 そこでやっとボク達は戦闘態勢に移行する。

 それを見てからか、白騎士が背中にいきなり白い翼を出現させると、突進してきた。


「クハハッ。邪魔だぁ!!」


 突進してきた四体の内、一体をキリがランスを避けて顔面に拳を入れる。

 それで白騎士は吹き飛び、元の場所に戻された。そしてキリは更に追い討ちをかけるように低く跳躍した。

 その他三体はそれぞれボク、白夜、そしてソウナとカレンが防いだ。


「はっ!」


 刀を縦に振り、白騎士のランスを叩き斬ろうとしたが、叶わず、白騎士のタックルが肩から入る。


「くっ。てりゃぁ!」


 タックルをくらっても白騎士から離れず、ボクは氷を作ってその腹部に攻撃。その際に白騎士が離れようとバックステップをしたのでボクは刀を持って斬り込んだ。今度は白騎士の腕を狙ったのだが、もう少しのところで盾で防がれた。

 ガキンッ。と音を鳴らしながら盾でボクをとばした。


「〈火弾〉」


 すると横から火の弾丸が飛んできて、白騎士を攻撃する。盾を振り抜いた後だったからか、火の弾丸はボクが氷で攻撃した場所を直撃する。

 体がくの字に曲がって態勢が崩れたので、ボクは見逃さずに近づいた。


「〈二の太刀 雪麗〉」


 きらめく魔力が放たれると、ボクは瞬時に白騎士の懐に潜り込んで数十回斬りつけた。だがまだ壊れず、最後だと思った一撃は盾で防がれてしまった。その後にランスで突く白騎士からボクはランスが当たらない場所まで下がった。


「〈火渦〉〈火球〉」


 マナの炎魔法が白騎士を蹂躙する。〈火渦〉のおかげで動けず、そこを〈火球〉の玉が直撃。大きな音を立てて爆発したが、炎の中から白騎士は外殻が外れながら出てきた。


「リクちゃん! あそこから!」

「ありがと!」


 ボクはマナの言いたいことが分かると、すぐさま接近。白騎士はランスで突いてくると。ボクはそれを回避。 その後に盾でボクを押し返そうとするが――。


「凍れぇ!!」


 氷の魔力を全開にして盾を凍らせて刀を一閃。盾は脆く崩れた。


「はぁっ!」


 そしてボクは外殻の壊れた場所に刀で突いた。

 それはあっさりと内部にまでいたり、そして白騎士はガクンッと膝から崩れた。

 簡単に片付けられた白騎士だが、他の人はまだ戦っているみたいだ。


「マナちゃん。これは終わったし、助けに……」

「え、えっと……。ウチ、もう魔力が無くて……」


 マナが遠慮気味にそう言うが、なるほどと思う。これまで結構の量の魔法を使ったのだ。魔力があるはずないか……。


「わかった。じゃあマナちゃん。ここで待ってて。すぐに片付けてくるから!」


 マナに言ってからボクは足に身体強化魔法を使い、他の人の助けに行った。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「…………」


 ウチは残骸となってしまった白騎士を見る。

 盾はウチが〈火渦〉や〈火球〉で急激に温め、リクが凍らせて急激に冷ましたから簡単に壊れただろう。



 ――では外殻は?



 これはウチが壊したとしか言いようがない。


『これが君の求めた力? 違うだろ? もっと火力をあげなよ。どうして使わないの?』

「う……」


 心の内から聞こえてくる声。ウチはまた右手で胸を押さえる。

 悪魔がささやく。ウチの中を少しずつ、少しずつ黒くしていくのがわかる。


「あんたの魔力なんて……使わ……ない……」

『どうして? 簡単じゃん。最初にあの白騎士四体横に並んでたでしょ? そこを私の力を使った最大級の〈火渦〉で十分壊せてたよ?』


 違う……。ウチはなんとなくケオズが何をしたいのかわかったからそんなことをしないし、何よりも悪魔の力を使えば……ウチの中を黒くしている何かの進行速度が上がる。

 そんな気がする。そしてそれがウチの中に居る悪魔の狙いだと……。


『だけど、さっきリクちゃんと連繋していた時、普通に使ったじゃん。あれでしょ? カッコつけたいからだよね?』


 違う……。白騎士には、ウチの魔力だけじゃ何の意味もなさそうだと思ったから……。

 だけど、これは言い訳にしかならないことぐらい。自分でもわかっていた。


『ねぇ。待ちくたびれちゃったよぉ。全く、寝ているとはいえ、あんたの中の神様(、、)強すぎ。さっさと汚染されてくれないかなぁ?』


 ……え? 神……様?


『あれ? もしかして気づいていなかったの? バカじゃん。まさか自分の事も知らずに力を求めてたとか』


 笑い声がウチの中で響く。

 ウチは反射的に耳をふさぐ。

 そんなことをしても無駄だと言うのはわかっているが、こうでもしていないと黒いのがドンドン侵略していく気がしたからだ。

 今でも、黒いのは侵略している。


 こんなの、望んでない……。


 誰か……誰か……助けて……。


 自分では何もできない。なのに人に助けも呼べない。心では叫んでる。

 でも口に出す事が出来ない。だって、それは……。


「マナちゃん? どうかしたの?」


 白騎士を倒してきたからだろうリクがウチの元に戻ってきた。

 不思議がって顔を覗いてくる。

 気づかれまい(、、、、、、)として、ウチは笑顔を作った。


「何でもないよ~」

「そう? ちょっと気持ち悪くしているように見えたから……」


 違う……それはウチの言いたいことじゃない!


 心で叫ぶが聞こえるはずもなく、リクは微笑み返して先を進んだ。


『無理だよ。安心してよ。あんたの意識が無くなっても、あの子だけは生かしておいてあげる。聖地ってのは汚染させると悪魔にもメリットがあるからね』


 口元をにやつかせる悪魔。

 だけど、今のウチには、なすすべなく、黙っていることしかいられないことに心の中で何度も、何度も、自分を非難していた……。



誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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