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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第三章 RA・魔法研究会
39/64

梯子



「それじゃあ早く上りましょうか」


 梯子を上がらないといけないので、ボクはみんなに声をかける。


「……じゃあリクちゃんが最初に行って。……次にキリが行くといい」

「? どうしてだ?」


 キリと同じく、ボクのハテナを浮かばせる。

 まぁでも、先に行けと言われたし、ボクが梯子に足をかけた時だった。


「!」


 梯子にかけていた足を元に戻した。


「どうした? リク」


 その様子が不思議に思い、キリが声をかけてくる。

 キリはまだ気づいていないようだった。

 なぜボクが梯子にかけた足を元に戻したのか。それがわかったとたん。ボクは先に上りたくはなかった。

 なぜか?


 今日はRP・魔法研究会に来るので、ボク達は制服で来たのだ。この意味がわかるだろうか?

 つまり……。


「白夜さん……。ボク、最後じゃダメですか?」

「……私たちのを見たいの?」

「違いますよ! だってボクが最初に行ったら絶対に白夜さんとか見ますよね!?」

「……たぶん見ない」

「嘘です! 絶対に見ます!」


 そう。ボクはヒスティマに来ているので女でなければと思い、桜花魔法学校の女生徒の制服を着ているのだ。下は当然スカート。嫌でも下からだと見えてしまう訳で……。


「絶対に行きませんから!」

「……残念」


 白夜が落ち込む。無表情だが明らかに落ち込んでいる。

 しかし、ボクが気づいてしまえばみんなも当然気づく訳で……。


「ウチはスパッツだしいいかな~」

「私は制服ではないし、下はズボンだから大丈夫だぞ?」


 マナとカレンは大丈夫らしいので先に上ることとなった。


「俺は関係ねぇし。先に行――」


 キリが行こうとしたのでボクはその裾を掴む。


「なんだ?」

「えっとですね……。キリさんならしなさそうだし……白夜さんは絶対に見そうだから……その……。ボクの後に上ってくれませんか?」

「はぁ!?」


 残るのがソウナとレナと白夜。ソウナは男性陣が行ってくれたらいいと言うし、レナは最後がいいと言う。白夜はボクが上らないと絶対に上らないと言った。

 だからここでキリを先に行かせてしまうと白夜は当然覗いてくる訳だ。


「別にいいじゃねぇか。白夜は女だし」

「その……見られるのはホントに恥ずかしいんですよ……」

「…………」


 顔を真っ赤にしながらそう言うと、キリは気まずそうに頬をかく。

 ボクの場合はここでキリが行ってしまえば完全にアウト。キリは信用置けるし、大丈夫だとボクの中ではわかっている。

 その中で、キリはいろんな考えを巡らせ、一つの提案が出された。


「そんやぁ〈鏡花水月〉って完全に消えれるんじゃねぇか?」

「え? そう言えば……」

「……まさか」


 〈鏡花水月〉は確かに消えることができる。だがそれは幻影を消して後だが……そうか。

 ボクは思いついた直後にルナを抜き、魔法を発動する。


「〈一の太刀 鏡花水月〉。……よし、キリさん。この幻影を消してください!」

「俺かよ……。まぁいい。〈雷剛拳〉」


 キリが幻影を殴ると幻影は瞬く間に消え、ボクの姿がどこに居るのかわからなくなる。


「……不覚。……まさかそんな魔法を使うだなんて思っていなかった」


 ボクは白夜とは少し距離を置こうかなと考えさせられる場面だった……。


「それじゃあ先に上がりますね」


 そう言って梯子に足をかけ、カンッカンッとリズミカルに梯子を上っていく。その後をキリが上ってきて次の白夜、最後にレナが上ってきた。


「……つまらない。……せめて突如魔法が解けてキリが狼狽する姿が見たい」

「バカかお前は。そんな急に魔法が解ける訳ねぇだろ」


 解かせる気もない。ボクは魔法の維持に気を使いながら梯子を上っていく。

 そして……梯子の終盤らへんに事件は起きた。


『リク、待て!』

「へ?」


 ボクが足をかけて上に上る直後にルナの止まれ宣言が来たがもちろん無理で、上ると――。


「なッ!?」


 キリが短い声を突如上げて、下を見てみる。

 ボクからはキリしか見えないのだが、そのキリが顔を下に向けていた。


「えっと、どうかしたんですか?」

「いや……その……。お前、魔法は……」

「へ?」


 魔法は完全に維持していたはずだ。だから魔法は大丈夫なはずなのだが……。

 そう思って〈鏡花水月〉に魔力を送るが……。


「あれ!? 魔法が解けてる!?」


 その声に反応してか、白夜が覗いてこようとしたがキリに阻まれた。


「ど、どうして……魔法は解いていないはず……」

『魔法無効化空間じゃ。まさかこんな所に設置されておるとはのぅ』

「え? それってつまり……」


 魔法が使えないってことで……。

 そしてキリはずっと上を見ていただろう。梯子を上るために。ということは……。


 ボクは完全に上りきると、上ってきたキリに顔を赤くさせ、涙目で言った。


「見ました……?」

「み、見てねぇ!」


 すぐに顔を逸らすキリ。その顔は赤くなっている。


「嘘です……見ましたよね? 絶対……」

「う……。いや、あれは不可抗力だろ! それにすぐに顔を下に向けたからあんまり見てねぇ!」

「ホント……ですか?」

「あ、ああ。ホントだ!」

「…………」


 しばらくキリを見上げる。

 するとマナが口を開いた。


「リクちゃんの魔法が解けてから、十秒間ぐらいは見てたよね~」

「私にもそう見えたな。何色だったのだ?」

「ち、ちがッ! あれは理解していなかっただけで、白とか見てな――ハッ!」


 キリがボクを見る。

 ボクの目尻に涙は溜まり、顔は真っ赤に染め上げて……。







「キリさんのバカぁぁぁぁあああああああああ!!!!」







「ごはぁッ!」


 綺麗なアッパーをキリの顎に直撃させた……。

 キリは何も悪くないはずなのだが、十秒というのは意外と長いもので、その間は完全に見ていたと言うことだ。


「……どうして私はキリの後ろに居たの?」

「リクさんが言ったからでしょう? でも、仙ちゃんは悪いと思いますわね。色とかまで完全にわかっていたのですし、なにより十秒は長いですわ」


 白夜にツッコム、レナ。完全に呆れている。


「それにしても、ホントに白夜さんは別の意味で危険ね。リク君にとっては」


 ソウナは白夜を呆れた目で見ていた。

 そして殴った後のボク自身は慌てていた。

 元々はボクがキリなら安心だとか言っていたために見てしまったのだ。

 不可抗力と言えば不可抗力なのだ。


「き、キリさんごめんなさい! ボクったら、何も考えず……」

「い、いや……。十秒間見ていた俺も完全に悪いし……気にすんな……」


 キリの声はちいさく、聞き取りずらかったが何とか許してもらえたようだ。

 それでも、ボクのあの一撃は相当の魔力が込められていたはずで……。

 そう思ってソウナに治癒魔法をお願いする。


「はぁ。〈治癒の光〉」


 ソウナは光を放ってキリの癒す。

 魔法無効化空間の事をすっかり忘れていたが、ここは魔法が使えるようだ。使えないのは梯子の途中だけのようだった。


まさか梯子の事だけで約三千字いけるなんて……(==;


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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