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ヒスティマ Ⅱ  作者: 長谷川 レン
第三章 RA・魔法研究会
35/64

……ほら、できた



「それじゃあみなさん、早く行きましょう」

「そうしたいのは山々だが……これは一体……」


 カレンがそう言って前を見る。そこには二つの扉があり、それぞれ違う部屋へと続いているようだ。

 つまり、どちらか一つを選べということなのだろうか。


「えっと、どっちに行きます?」


 後ろを向いてそう言うと、キリ、レナ、カレンが右を、白夜、マナ、ソウナが左を指した。


「えっと……どうしましょう……」


 ここでボクが右を指せば右になるし、左を指せば左になるとは……。どうしてボク達は奇数なんだろうか……。

 ボクがどっちに行くか迷っていると、キリは「さっさと行くか」とか言いながら右の扉に入っていこうとする。


「って待ってください! 勝手に行くんですか!?」

「別に二手に分かれればいいじゃねぇか。リクはどっちに行くんだ?」

「え? ふ、二手ですか?」


 それではいざという時に危なくなってしまうのではないだろうか?

 いや、三、四人いれば十分だと思われるが……。


「で? どっちにするんだ? 早く決めろ」

「そんなこと言われても……」


 右はキリ、レナ、カレン。キリもカレンもかなり強いからこちらは十分だろう。

 それに比べて左はマナ、ソウナ、白夜。……白夜はまだ実力がはっきりとは分からないし、本当に戦ってくれるかどうかわからない。さっきみたいにくつろぎそうだし……。マナは魔力が初めからないので少し危険かなと思う。ソウナは防御魔法を最近練習して攻撃魔法が疎かだ。


 ……どっちに行くかなんて明白……なのかな?


「じゃあボクは左に行きます」

「まぁそれが妥当だな。んじゃまたあとでな」

「それでは、後で会いましょう」

「ボスを倒したリクがそっちにいれば確実だな。頑張れよ」


 キリとレナとカレンは右の扉を開けて入っていった。扉が自然と閉じると、魔法でなのか、鉄の閂が勝手に動き、扉が開かないように固定された。

 これでもうボクは左に行かなくてはいけなくなった。


「それじゃあ、私たちも行きましょう。こっちは四人だし、向こうよりは早く抜けたいわね」

「でも、キリと元幹部長が向こうには居るんだよね~」


 だからボクはこっちに来たのだが……。


「……大丈夫。……リクちゃんが頑張ってくれる」

「白夜さんは頑張る気ないんですね……」

「……(コクコク」


 そこは頷いてはいけないというボクのツッコミはおそらくスルーされるだろうから、心の内でとどめた。

 それからボク達は扉を開けた。

 扉を抜けるが、中は暗く、周りを全く見渡せない為、まずは照明のスイッチを探す。幸い、扉のすぐ近くにあったので、ボクはそのスイッチを押した。


 バンッ、バンッ。という音がして照明がついていくと、やっとこの部屋の全体が見渡せた。


「えっと。結構、広いというか……」

「……桜花魔法学校の校舎ぐらいある」

「いや、それは大きすぎじゃないかな~」


 一番奥がとても遠いのが嫌でもわかる。一キロはあるのではないだろうか? とも思え、そして両壁には何かしらの(トラップ)があるものだろう。


「それじゃあ行きましょう。どうせここを抜けなければ上にたどり着けないのだから」


 ソウナの提案にみんなは賛成し、足を踏み出していった。

 しばらく歩いていると、突如右の壁が爆破した。


「なんでしょう?」

「わからないけど、少なくとも簡単には通してくれそうもないわね」


 爆発した壁から出てきたのは犬の形をした機械。

 ボク達の進む通路を一列に並んで封鎖した。


「ケオズさんは一体何をさせたいんでしょうか……」

「少なくとも、私たちの戦闘データを取りたいんじゃないかしら?」

「え? どうしてです?」


 戦闘データなんて取ってどうしようというのだろうか?

 ボクはソウナの言葉に疑問を持って顔を向ける。

 だがソウナが答えるよりも先に、マナが答えた。


「多分、アンドロイドに必ずあるAIとかに戦闘経験として搭載するってことなんじゃないかな~?」

「え? だったら何もボク達のじゃなくても……自分達のを入れれば……」


 研究者だが、レッキとした戦士なはずである。少なくとも、ボク達よりは格段に強いはずなのだ。

 そうでなければ、他の……例えば、警察会とかの人のデータを取ればいい話である。


「ううん。戦闘経験はあるに越したことはないと思う~。だって、戦闘経験が深ければ深いほど、その人は強いってことなんだから~。機械の場合だったらデータを取って頭にどんどん入れていけばそれになるでしょ~?」


 なるほどと納得する。戦闘経験があればある程、厄介な物はない。

 戦闘経験が多くあるということはたくさんの戦闘に勝ってきたということなのだから。

 それをアンドロイドのような機械ならばデータとして頭に入れておけば対策やら何やらが万全だということか。

 ボクは、いまだに攻撃してこない犬型アンドロイドを警戒しながら、マナの言葉をじっくりと聞いた。


「そうなると、あまりスキは見せることができませんね……」

「……(コク」

「人間ならばほんの少しのスキを見逃す事もあるわ。だけど、機械はデータを忘れることが無い。スキなどいくらでも見つけられるということね」


 白夜とソウナがボクの言葉に賛同する。

 ともすれば、一体このアンドロイド相手に、どうやって戦えばいいのか、厳選されてきた。


「……あれ。……多分学習機能が付いてる……」

「学習機能?」


 ボクの言葉に白夜が頷く。


「……簡単にゲームで表すと、戦闘中に経験値が溜まってレベルアップしてくこと」

「ホントに簡単ですね……」


 まさかゲームに例えられるとは……。

 しかし、そうすると厄介だ。時間がたてば経つほどボク等の方が不利になるということ。一撃で仕留めて破壊しなくてはいけない。

 それにしても……先ほどからあの犬型アンドロイドは攻撃してきていない。

 ボク等が近づかないかぎりあそこから動こうとしないのだろうかと思う。


「どうする~? 真正面からぶつかる~?」


 マナがそう提案するか、それしかないだろう。こちらの手の内が少しばれてしまうが、母さんの組織だ。少しぐらいは信用してもいいかなと、そこまで考えた後で……。


「……真後ろからぶつかる」

「無理ですよね!? 今真正面に居てしかも向こうは一列に綺麗に並んでいるのだから無理ですよね!?」


 白夜が絶対に無理なことを言い出したのでツッコム。

 だが、白夜は「……できる」とか言いながら、魔法を唱えた。


「……〈シャドー〉。……その機械全部、後ろから同時に壊して」


 魔法はいつもの〈シャドー〉。音も立てずに、全部の犬型アンドロイドの影から出てきて、拳を振り上げ……下ろした。

 ガシャァァァアアアアン!! という音がして、すべての犬型アンドロイドは全滅した。


「……ほら、できた」

「…………」


 白夜の魔法の便利さに、ボクはあっけにとられるだけだった。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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